《◎200話記念SS◎ ~気になるあの人! コーテナ&ルノアの突撃インタビュー②~ 》


 インタビュー娘、コーテナ&ルノア。

 次に二人がやってきたのは学園だ。今日も沢山の生徒が将来の夢や自身の能力の向上のために奮闘している。和気藹々と溢れるエネルギッシュな校内で、とある場所へと向かっていく。


「まぁ、ここってことハ」

 ついてきたラチェットも、次のインタビュー相手が誰なのかを悟っていた。


 実技演習場。ここにはラチェットやコーテナ達も良く来る場所。ここへ一緒にやってくる回数が多いお仲間と言えば。




「あれ? どうしたんだよ、面白い格好して」

「 可愛らしいの間違いでしょうがッ!」

 問答無用でアクセルは殴られる。

「今日も絶不調ですね、アクセル」

 コヨイも呆れた溜息だった。


 学園でのインタビューの最初は、この三馬鹿以外ありえないだろう。

 アクセル、ロアド、コヨイ。ラチェットが所属するクラスの中でも特に群を抜いた馬鹿三人組であり、ラチェット達がこの学園に訪れて最初に友達になった三人である。なんだかんだ言って長い付き合いになり、困った時には手を取り合う間柄になったものである。


「えっと、実はね」


 かくかくじかじか。

 面倒な質問を手っ取り早くコーテナとルノアが終わらせる。


「ほー、インタビューか。面白そうだな!」


 咳払い、アクセルは向けられるマイクへと口を向ける。



『俺の名はアクセル! 学園一のスーパー暴風、アクセルだぜ!』


「そうですね、バカさ加減では堂々の一番でしょうね」


『うるせぇな!……まぁ、学園一とまでは行かないのが現実だけどな。見ての通り、たくさん勉強して強くなって、学園一のバカヤロウって馬鹿にされないよう毎日勉強詰めの男さ。俺、勉強すっごい苦手だけど』


 ちょっと恥ずかし気に頭を擦る。


『年齢は18。好きな事は努力することだな。嫌いなのは努力しないことだ。何がどうであれ、まずは頑張らないと始まらないからな……趣味って言えるかどうか分からないが、トレーニングのランニングが好きだぜ。あと……妹がいる。凄く頭がよくて、最年少でエージェントになっちまうくらいさ。ただ、いつも馬鹿にしてくるのが気に入らねーけどなっ、と。これくらいでいいか?』


 お笑いトリオもビックリな連携ぶり。結構な撮れ高に恵まれた、仲良し三人組だからこそ為せる自己紹介となった。



『次は私だね。私はロアド・リバー。17歳。実家は今のご時世では結構珍しいドラゴンライダーかつドラゴン牧場でねぇ。私自身も現役のドラゴンライダーなのさ。特技は生き物と会話できることだけど、苦手なものとなったらそりゃあ勉強だね。私もあんまり頭良くないから、成績も散々。魔導書も肉体強化なんて簡単なことくらいしか出来ないけどね』


「そうはいってますが、この人の殴り合いのテクニックとフットワークは見事なものです。目を見張るものがあります」


『ありがとう、コヨイ……あと、私の相棒のドラゴンもいるんだけどね。これがすっごく可愛いんだ! 今度良かったら、ドラゴンの紹介もしたいんだけどいいかな? あと、それから』


「はいはい、長くなるとお二人が困ります」


 ドラゴンの話になると止まらないタイプ。類は友を呼ぶというが、アクセルに似通った部分が多い女の子である。とはいえ、猪突猛進ばかりのアクセルと違って、こっちは理知的な部分もしっかりあるため、こっちがマシだと口にするものも多いが。


 コヨイがそういったのと同じように。

 ”自分は馬鹿にしたのに、なんでコイツは褒める”みたいな顔をアクセルが浮かべているのがよい映像である。




『では、わたくしですね。コホン……』


 喋る前に軽く息を整える。


『私はコヨイと申します。年齢は16です。見ての通り、私もこのお二方と同じで成績はよろしくありません。魔法は得意ではありませんし、魔導書も読めません。ですが、幼い頃より鍛え上げてきた、この剣術だけは負ける気はしません』


「魔法の実力は皆無だが、剣術となれば学園一に一歩足を踏み入れられるレベルだからな。勉学さえうまくいけば、騎士団に余裕で志願出来る程だぜ」


『身長は、少し気にしているのでお伝えするのはちょっと。スリーサイズは最もです。趣味は修行する事、特技は体を鍛える事、日課は体を動かす事、ですね』


「オールで運動ばっかりだねぇ……」



 二人の誉め言葉が入りつつも、軽く咳ばらいを続けコヨイは自己紹介を終えた。

 見ての通り、コヨイが一番物騒な人間ではあるのだが、この三人組の中では一番のまとめ役である。常識人かどうかと言われれば、ナンパしてきた男を相手に即座に殴り掛かるなど、そういった面を見てしまえば話が変わってしまうと思うが。



 三人の自己紹介インタビューを終える。



「さて、次は」


 何所に向かおうかとコーテナが背を向けたその瞬間だった。



「おい、ラチェット!」

 インタビューを眺めていたラチェットに電撃走る。

「またか、クソガキッ!」

「うるせぇ! 今日も付き合ってもらうぞ!」

 ……問題児、クロ。

 12歳とこの学園でもかなりの年少。アクロケミスの魔導書を片手に、アクロケミスの魔導書の使い手であるラチェットの背中に張り付き、顔を引っ掻き回している。それに対し、ラチェットは反撃としてロデオのように暴れ回る。


 なんというか見慣れた景色。一種の兄妹喧嘩のようなものである。


「突撃インタビューです! クロ、どうぞ!」

「は?」


 突然向けられたマイクにクロは戸惑い始める。


「じ、自己紹介をどうぞ!」

 ルノアも緊張しながら彼女に追い打ちをかける。



『えっと……クロ、クロ・シャトーコンティ。12歳。身長は135で、体重は33。趣味とか特技はそれといってねーよ。好きな食べ物は……シュークリーム。嫌いな食べ物はパセリとかだ……おい、これ何なんだよ』


「おお……」

「真面目ですね」


 コーテナとルノア。二人そろってまたも驚愕。


「何だよ! これ、何なんだよ!?」

「つーか、この展開に俺、既視感あるんだケド」


 当然である。ついさっき、ラチェット本人がそれを経験したのだから。真面目にインタビューしたら、なぜか変なリアクションされた理不尽を。

 見ての通り、クロは人付き合いが下手で不器用。それでもって、手あたり次第毒を吐いて距離を取るクセ。何より、変なところで真面目な一面がある……そう、この少女、ラチェットと性格があまりにも似通っているのである。兄妹と間違われるのも無理はないくらいに。



 かくかくじかじか。

 コーテナとルノアが事情を伝えた。



「何か知らないけど、変なの」


 クロはラチェットから離れると、興が冷めたのか離れていく。


「付き合いきれるか」


 不機嫌。いつも通りの素っ気なさである。





「怒らせちゃった、のかな?」

 ルノアはそんなクロの後ろ姿に戸惑っている。




 ……その背中を見て、その理由を悟っているのはラチェットだけだ。

 そう、クロはただの女の子ではない。この街でも有名であったエージェント・レイヴンの実の娘である。


 彼女が幼い頃、レイヴンは小隊を引き連れ大きな任務を対処していたが、その最中行方不明。現場には全滅した部隊の一員の遺体だけが発見され、レイヴン本人の行方だけが分からなかった。


 そのこともあって、取り残されたクロは”逃げ出した臆病者の娘”と後ろ指を指されるようになった。それといった身寄りもない少女、孤児院に預けられた彼女はそんな風評被害を受け続け、こうして荒んでいった。



 だけど、彼女がこう荒れたのは、自身への悪口ではなく、自身をいつも可愛がってくれた父親を馬鹿にされることに腹を立てていたからだ。

 こうして学園にやってきたのも、レイヴンのような魔法使いになり、皆に認められる魔法使いになり、そしていつかレイヴンと再会する事。父親を馬鹿にした皆を見返すために努力をする、実は頑張り屋な女の子なのだ。



 インタビュー。それと似たようなことを幼い頃にされたのだろう。それを思い出したのか、不機嫌になってしまったのかもしれない。



「あとで、謝りに言った方がいいかな……?」

「いや、放っておケ」


 不安になっていたコーテナとルノア。不愉快な事をしてしまったのかと罪悪感にかられていたが、それ以上の追跡はやめるようラチェットが告げる。


「アイツが不機嫌なのはいつもの事、そうダロ」


 ……触れられて欲しくない。

 この件に関してはそっとしておくのが、彼女のためだ。


 謝るのなら、せめて日をおいてから。

 今のままでは焼け石に水であることを呟いたのだ。



「次に行こうゼ。まだ、沢山いるんダロウ?」



「あ、う、うん!」

「わかりました!」


 コーテナとルノアは、本来この企画インタビューに付き合う必要もない彼の背中を追いかけ、次の現場へと向かって行った。

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