※≪200話突破記念企画≫

《◎200話記念SS◎ ~気になるあの人! コーテナ&ルノアの突撃インタビュー①~ 》


※この物語は、とある日の出来事であり、本編上の出来事であるが時系列は不明である。いつものような番外編ノリではあるが、キャラ崩壊は一切なし(たぶん)。

 その”キャラクター”達を再確認するお話。王都編になって幅広く増えたキャラクター。悪く言えば増えすぎたキャラクター……。その全員を二人娘が突撃インタビューするお話です。


 次のお話が読みたい人はスルーして、次へお進みください。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「コーテナと!」

「ル、ルノアの!」

「「突撃インタビュー!!」」


 コーテナとルノア、ノースリーブにミニスカート、ちょっぴりお茶目な制服を身に纏う少女二人がマイクらしき何かを手に持って、大はしゃぎしている。


「コ、コーテナちゃん。やっぱり恥ずかしいよぉ……」

 

 しかし、こういったテンションには慣れていないのか、ルノアは顔を真っ赤にして両手で覆っている。今すぐにでも逃げ出したい気分をさらけ出している。


「大丈夫だよ! ボクも一緒だから!」

「うーん……」


 背中を摩ってくれるコーテナ。頼もしいのではあるが、そのテンションに置いて行かれそうで不安な空気が漂っていた。



「うるせェナ、何やってんだよ、こんなところで」


 少女二人が訪れているのは何でも屋スカルのガレージである。

 リビングで一人静かに読書をしていたラチェットは騒ぎを聞きつけて降りてきたようだ。ちょっぴり良い具合に睡魔も来ていたのか、降りて来るなりアクビをかましていた。


「おっ! 早速一人目だ!」


 コーテナがマイクらしき何かを片手にラチェットに接近する。


「おっ、おうッ!?」


 突然の行動。彼は元いた世界で突撃インタビューらしきものをお昼の情報番組で何度も見たことがある。それらしき経験をまさか異世界でするとは思いもしなかったのだろう。変にかしこまって、気を付けの姿勢をしてしまう。


「今日は、皆の自己紹介を聞いて回るっていう企画なんだ!」

「企画って……誰に頼まれたんダ?」

「さぁ?」

 コーテナは”こちら”を見つめている。

「お前、どこを見てるんダ?」

「うーん、その人がなんとなくコッチを見てる気がして」

 何のことやら。


 ラチェットはあまりの話についていけないようで頭を悩ませていた。



「と、いうわけで早速、自己紹介ヨロシク!」


 コーテナ、そして覚悟を決めたルノアの二人がマイク(もう面倒くさいのでマイクと表記する)をこちらに向けてきた。


『え、えっと……名前は、ラチェット。年齢は18。身長は165で体重は67。好きな食べ物……気に入って好きなのはクッキーとかバニラアイスなどの甘いモノ。嫌いな食べ物はナスだ。趣味はそれといったものはない……が、強いて言うなら、最近は本を読むことが好きだナ。あと、デザートを食べに行くコト。特技はそれといったものはない、ダ……こんな感じでいいカ?』


「おお……」

「何と真面目で、御堅い」


 思った以上に真面目で答えてくれるラチェットにちょっと驚いたコーテナに、思わず本音を漏らしてしまうルノア。


「真面目で悪いのかヨ」


 折角答えたのにどういうことだと呆れた表情を浮かべた。実際、こうして妙にギクシャクした自己紹介になってしまったのも、こうした行事に慣れていないのが原因である。特技を即答できないのを見てわかるあたり、彼は短所は早く言えるが、長所を即座に伝えられない典型的な少年なのである。



「おっ、なんか面白そうな事やってんじゃないの?」

 ガレージへと足を踏み入れるのは買い物から帰ってきたスカル。

「ふむ、小僧。今日も面白い顔をしているな」

「どっちの意味でだヨ」

 同じく散歩から帰ってきたアタリス。帰ってきて早々の悪口にラチェットは顔を歪めていた。


「んで、何をしてんのさ? 二人とも可愛らしい格好なんかして」

「ああ、実はかくかくじかじか」


 企画の趣旨を二人に伝える。


 じっくり聞いてみれば、朝起きたら”キャンペーンガール”の制服を着せられて、何処からともなく”突撃インタビュー”をしなさいと頼まれ、今に至るという。


 うん、事を理解しようとしたはずなのに、余計混乱しそうになった。


「なるほどね、いいぜ? 聞きたいことをいっぱい聞いちゃいなよ」

「それじゃ! どうぞ!」


 コーテナとルノアのマイクがスカルに向けられる。


『スカルだ。年齢は23。ラチェットにコーテナ、そしてアタリスの四人で旅をして、今はここ王都で何でも屋スカルを営業している。出身はサンプライスタウンっていうダウンタウンだよ。好きなものは、そうだな』


「酒と金と女ダロ?」


『うっさいな!……まぁ、ブチまけた話、好きではあるけどよ。それと、大事なものはお前達仕事仲間と愛車。嫌いなものは根性のねぇ奴だ。将来的には仕事の出来る男になって、大金を稼いで大富豪になることだ』


 ラチェットの茶々に困りつつも、スカルは自己紹介を終えた。

 実際、彼の好きなモノを的確に表現しているが、あまりにストレートではないかと愚痴も吐きたくなるのは当然だろう。


 ……最初は刺客で送られてきた人物だった。しかし、気が付けば仲間として雇われる。人生とは分からないものである。


「おお、なんと夢の大きい……!」

「次はアタリスだよ!」


 コーテナのマイクがアタリスへと向けられる。


「ふむ、これもまた一興か」


 ちょっとしたお遊びに付き合う程度で、アタリスは髪を靡かせる。





『我が名はアタリス。高貴なる半魔族ヴラ……ごほん』


 何かを思い出したかのようにアタリスは咳込んだ。

 自身が魔法世界クロヌス全域に悪名を馳せた伝説の半魔族・ヴラッドの娘であることは内緒である。アタリスはそれを思い出したのだ。今、この現場にはその事実を知らないルノアがいるので、慌てて口ごもる。


『まぁ、ワケあって流浪の身だ。好きなものは紅茶。嫌いなものは退屈と堕落だ。多少だがトランプとチェスを嗜んでいる。紅茶も自身でいれられるくらいにはな。それ以上は特に語ることはない』


 嘘だ。彼女は一番語りたいことがあるのだろう。

 それは彼女がラチェット達と旅する理由。”ヴラッドと同じような、否、ヴラッドを越えた人生”を歩むため、父との約束を果たすために旅をしているのだ。


 それが彼女の一番の夢、だ。


「何というか、大人、ですね」

 

 あまりアタリスとは関わった事がないルノアだ。見た目の割にそのあまりにも大人びた雰囲気に固唾を飲み込む。


「ふっ、ありがとう。最高の賛辞だ」


 アタリスはそっと、戸惑うルノアの頬に手を伸ばし、幼気でありながらも整えられた凛々しい瞳と唇を近づけてくる。


「あひゃぁ!?」


 突然の奇襲にルノアは変な声を上げて、慌てて距離を取った。


「愛い奴」


 アタリスはその面白いリアクションに満足したのか、ルノアの元へと擦り寄ってくる。その表情はいつの日か見せた”あの日の表情”を思い出させる。


「きゃぁ~!? コーテナちゃぁ~ん!?」


 そのまま、ルノアは擦り寄られたアタリスに追い詰められてしまった。




「おやおや、何事だい?」


 現在、もれなく騎士団達から逃走中のオボロがリビングより、ひょっこりと姿を現す。相変わらず昼間から堕落し切った生活を送っていたのか、酒で顔が真っ赤だ。


「よし、次はオボロさんに突撃インタビュー!」

「えぇ!? 私から何を聞き出す気だい!? まさか、『世界を股に掛けた大悪党の今!』的な強制自白インタビューなのかい~!?」


 ……パニックになっているオボロにも趣旨を伝えた。

 その間結構な時間をかけたのは言うまでもない。



「なるほど、そういうことかい……じゃあ、遠慮なく」


 話せることは多少話してあげようと、オボロは咳払いした。現在、事情を知らないルノアはアタリスによって確保されている。インタビューするなら今がチャンスだ。


『私はオボロ。まあ、冷酷な爆弾魔って疑いがかけられて……ああ、いや、疑いってわけじゃないんだけどね。とにかく、ちょっくら面倒な目に合っている悲劇のヒロインなんだよ~』


「ヒロイン?」


『おい、坊や。なんで疑問形なんだい』


 見事なツッコミのチョップがラチェットの胸に炸裂。


『年齢は21。身長は一応170は越えてるねぇ。スリーサイズは……まぁ、そこは皆方のご想像にお任せするさね?』


 口で言わなくてもわかるナイスバディである。

 ちょっとした挑発ポーズ。それを取るオボロの姿にスカルはまたも鼻を伸ばしているが、そこはスルーする。


『好きなものは、そうさね、金だね。お金があれば何でも出来る。嫌いなものは骨折り損のくたびれ儲け。まぁ、ちょっくらお金にうるさい乙女って事でよろしく』


「乙女?」


『なんだい! 二十代越えたら乙女じゃないって言いたいのかい!?』


 実際美人ではあるが、自称されると質が落ちるような気がしてならないラチェットであった。



「三人とも、ありがとうございましたー!」

 コーテナは元気いっぱいに頭を下げる。


「よーし! ルノア、次に行こうー!」

「ま、待って……」


 元気いっぱいに次の目的地へと向かうコーテナ。そして、アタリスに好き放題遊ばれたルノアはフラフラになりながら、それを追いかける。






「……なんか不安だナ。ちょっくら行ってくるワ」


 嫌な予感がしたラチェットは二人の後を追う事にした。

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