《SS⑬ ~絶望の最後とまだ見ぬ先の絶望~ 》

 学園は何事もなかったのように静かになる。

 嵐が去った跡。何もかもを壊し、崩れ去った跡地に二人の少女が経つ。


「惨い、あまりに惨い」


 一部始終を最後まで観察していたフェイトとコーネリウス。

 その結末、そしてあまりにも残酷な一末に言葉を失っている。


「まさか、人形のうちの一人が……」

 コーネリウスは驚愕せざるを得ない。

 人殺しを行っていたのは、行方不明であったはずのエージェントの一人であったこと。かつてこの王都のヒーローであった男が黒幕の手駒として洗脳されていた事。


 意識も自由も何もかもを奪われた、人形と化してしまっていたことに。


「私たちは、壊れ果てた悪魔の所業を見ているのか」

 あまりにも凶悪な真実を前に、霧が晴れてゆく空をコーネリウスが見上げる。

「人間という生き物。その片鱗は、こんなにも愚かだというのか」

 この感情は悔しさなのか、それとも恐れなのか。彼女には分からない。




「……急いだほうがよさそうだ」

 フェイトはその場を立ち去る。

 そうだ、この胸に込み上げる感情の正体はあまりに不気味で無機質だ。だが、その感情の行方とこの淀みへの怒りを吐露するよりも先に、やらなければならないことを彼女は即座に決断する。


「組織が動かしている人形の一人が行方不明者だった。他の人形も同様だとしたら」

「!!」


 フェイトの嫌な予感。

 この街には大量の行方不明者が続出している。学園の生徒が数名に、王都の住民も含め……結構な数が姿を消してしまっている。


 そして、今回の一件。

 考えるだけでも……背筋が凍り付きそうだ。



「見つけ出すぞ、黒幕を」

 

 二人も動き出す。

 事件の犯人は既にこの目で見ている。何処の組織が絡んでいるのかも明白。一通りの準備を終えた後に潜入する。



 王都を蝕む悪夢、“アルカドア”へと……!!

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