《SS⑫ ~精霊騎士団のアウトローコンビ~ 》

 突然の尋問から数分後。王都の小さなレストラン。


 ……運動前の腹ごしらえだそうだ。

 腹が減っては戦は出来ぬと昔から言われている。二人は空腹だったお腹を腹九分目にまで収めようとする。そのためにとお店の大盛メニューのお代わりを幾度となく繰り返した。


「さーてと、どうやって探りを入れるか」


「表からドーンと行けばいいだろう」

 

 飯を食べながら、二人は今後の事について会話をしている。ホウセンは相変わらずの向こう見ず正面突破作戦を提示した。


「そうだけどよ。いきなり飛び込んだところで隠蔽されるのがオチだろ。やっぱ何かしら情報いるって」


「情報って、これ以上どうやって?」


 ホウセンは人差し指を頭に抑え脳を軽くつつく。爆弾魔との会話だけでも結構な情報を手に入れたというのに、これ以上何か有意義な情報があるのだろうかと。


「……とりあえず、フリジオの奴を絞める」

 

 サイネリアの言葉でホウセンは思い出す。


「ああ、そうか。アイツも何か知ってるかもなのか」

「ワイスの奴らの目が気になるが……上手くかいくぐって聞き出してやるか!」

 まるで正義の騎士とは思えない下品な笑いで料理を頬張っている。

「何でも屋連中の事は別で調べときゃいいさ。聞き出した情報をまとめておくぞ」

「おうよ!」

 この二人のやり取りは本当に賊のそれとは変わらないし、下手すればチンピラと言われてもおかしくはない。


 とっとと事件の解決に回るとしよう。


「そうと決まれば」

「腹ごしらえ、続行だ!」


 一刻を争うかのように食事を続行した。






『ぎゃぁあああッ!?』


 悲鳴が聞こえる。


「「!?」」

 二人は食事の手を止める。

 

 慌てて立ち上がったサイネリアとホウセンはそれぞれ食べた分の料金をテーブルに叩きつけ、そのまま流れるように店の外へと飛び出す。


「今の声」

「あっちだ!」

 今の悲鳴は確か路地裏の方から聞こえた。

 二人は何の迷いも躊躇いも見せることなく悲鳴の正体を暴きに行くために路地裏の奥へと進んでいく。


 いつも通り変わらないちょっと薄暗いだけの路地裏。

 ネズミと意味不明な蟲が地面を這いまわり、生ごみの酸っぱい匂いが香る通路。そんな不潔な路地裏を二人は意気揚々と走っていく。



「おっと」

 サイネリアはピタリと足を止める。

「……おでましだねぇ」

 ホウセンも即座に足を止めた。





 二人は剣の柄へと手を伸ばす。





 視線の先に待ち構えているは___。

 学園の大量殺人事件と同様、無残な死体の山の上で何の抑揚もなく立ちすさんでいる、二体の“人形”であった。

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