第1部 { はじまりの日〖White Wishes〗}
開幕『逆夢』
不思議な夢を見た。
空を飛ぶ夢だった。
鳥籠らしき場所から外へと飛び出す。そんな内容だった
しかし、彼に待っていたのは綺麗な大空なんかじゃなかった。
渋く濁った鈍血の赤、
見る者すべての心を閉ざす薄墨の黒き曇天。
負が混ざり合った空は見るも無残な地獄の
街が焼けている。
熱く身が溶けそうなその世界にそっと足を踏み下ろす。
人間が焼けている。動物たちが焼けている。
世界の事情に干渉はしない自由な空も鮮血のように色鮮やかに燃えている。
自身も体が燃えていく。
しかし痛みも苦しみも哀しさすらも湧いてこない。
ただ一つ。空っぽのはずの心に芽生える謎の想い。
『奴は討たねばならぬ。』
『奴は殺さなければならぬ。』
『奴だけはこの世に残してはならぬ。』
『この身を刺し違えてでも……この世界を変えなくてはならないのだ』
燃え尽きる体。鮮血と共に溶けた体。次第に世界全てが真っ赤に蕩けていく。
その瞬間目の前の世界は泡のように弾け、真っ黒に沈んでいく。
その夢は思い出すこともない、ほんの一瞬の世界。
本来、誰にも見せる必要のなかった……一人の孤独の像である。
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