閉幕『アシタノヒカリ』



「随分と面倒な夢なもんだ。ストレスで足が折れそうだナぁ……」

 宿屋でチェックインを済ませる。部屋の鍵を預かったラチェットは指定された部屋へと向かっていた。

「奇妙な経験をしたもんだ。仕事場で眠りについていた俺、そして目を覚ませば見たこともない広々とした大地。そのまま遺跡に迷い込んで、獣の耳が生えた色んな人たちにあって、リザードと戦って……何なんだ? 今日はマジで?」

 部屋の鍵を開けて部屋へと入る。そのまま仮面を外し、ベッドの上に寝転がる。

「人は眠っていると記憶を整理するという。その際、整理中の記憶を無意識に認識してしまうことがある。それが”夢”なんじゃないかと聞いたことがある。頭の中でいっぱいいっぱいになった情報がゴチャゴチャになってるから、夢もまた可笑しなものになるんだってな」

 疲れが一気にのしかかる。もう限界だ。早いところ眠ってしまいたい。

「とはいえ意識はしっかりとあるし、今まで見てきた光景は夢みたいにゴチャゴチャはしていない。ここまでハッキリとした感覚は……いやダメだダメだ! 妙な事を考えるんじゃないゾ、俺っ!」

 徐々に瞼が重くなっていく。ようやく夢の世界へ旅立つ時間だ。

「今日一日RPGゲームの主人公ってやつになった気分だった……まぁ辛くはあったが……面白くもあった、か、な----」

 ここで眠りにつけば、次に起きれば元の世界かもしれない。

 これでようやく冒険は終わるんだと安心して、彼は寝息を立てた。





 しかし何度も言わせるな、少年よ。

 お前のここまでの物語は……まだプロローグでしかないということを。

















 さぁ、皆さん。

 少年がこの世界に来てすぐの物語、如何でしたでしょうか?


 私の言う通り、ここまでの物語はラチェットと名乗る少年の物語が始まるまでの序章でしかないという事なのです。


 それで、どうぞ引き続き御賢覧および御拝聴を。

 少年少女の物語、その旅の”始まりの章”が幕を開けます。


 少年少女の出会いの物語の名は《はじまりの日》でございます。

 ではまた、物語を彩る旋律と共に、この場でお会いしましょう……。

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