第10話 ファミリー映画3

3.

驚きの余り、僕は一瞬身体が硬直するも、すぐに走って逃げられるように身構えた。が、既に男性達はこちらを捉えており、逃げる事は出来なさそうだった。何より拠点としていた場所がバレてしまっているので、ある意味袋小路の状態に陥っている事に気付き、僕はひたすらに考え、どうやってこの状況を打開しようかと思考を巡らせた。

結果として、眠った彼女を起こして助けて貰うのが一番安全かと結論付けて、僕は後方へと走って逃げる為に、一歩足を後ろに引くと

「怖がらないでほしい、私達は君と話がしたいんだ」

落ち着いた良く通る低い声で、男性の1人は自動ドアの扉越しにそう言った。

「……一応、けっ、警戒はしてるので、この扉越しの会話でいいなら……」

僕はいつの間にかカラカラに渇いた口で、上手く発音出来ずに詰まりながらも、そう答えた。

「あぁ、君が警戒するのも無理ない事をした。それについては許して貰えないだろうが、謝る……。この通りだ」

男性達は3人とも何の迷いもなく、その場に膝をついて土下座をした。大人の土下座を実際に見た経験がなかったので、僕は反射的に躊躇してしまった。

「そっ、そんな土下座なんてしなくて大丈夫ですから、どうか顔を上げてください……」

「……本当にすまなかった。いくら食料を盗ったからとはいえ、暴行に監禁……自分達があのまま君に酷い事をしてしまったらと考えると私達は……」

確かに頭にはまだ痛みが残っているものも、あの時監禁された状況下では、僕自身不思議と落ち着いていた為、怖かったといった記憶はなかった。むしろ彼女がこの男性達に与えたダメージの方が大きかったのではないかとさえ思って、若干の申し訳なさの方が優っていた。

「その……頭を上げて貰えませんか? 僕達も勝手に入って食料を無断で盗ったんですから、あそこで襲われても仕方なかったですよ」

少し間を空けてから、男性達は正座したまま頭を上げた。

「実は、ここに来たのは君に折り入って頼みがあって来たんだ」

「頼み……ですか?」

「もちろん、タダで頼みを聞いてくれとは言わない。食料には困らないようにするし、他にも出来ることがあれば何だってしよう」

男性達は苦しそうな表情を浮かべ、絞り出すようにそう言った。

「それで……頼みというのは?」

「実は……」

「……?」

男性は口を噤み、しばらくの間葛藤した様子を見せた。周りの2人も目を伏せ、僕と目を合わせようとせず、数十秒が経った。僕が何か声を掛けようかと口を開きかけた所で、男性が決心したかのように話し始めた。

「……実は、君の所のあのロボットに頼みを聞いて欲しいんだ。絶対に許せない奴らを、どうか殺してくれないかって」

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