第36話

「そろそろ先生が来るんじゃないかな?」

「ここに来るの?」

「そう、ゲームが終わったら来る」

2号の言葉が終わったと同時ぐらいに背後に人の気配がした。

「話は終わりましたかな?」

振り返ると全身黒一色の恰好の男が一人立っていた。

「初めまして、先程から話に上がっている先生とは私のことです。敗者の佐藤真司さんを迎えに参りました」

ごく普通の男性だか得体の知れないオーラを放っていて、俺は身動きできずに立ち尽くしていた。

「そんな怖がらなくていいですよ。私はあなた達に新たな人生を提供する為に現れたんですから。いわばあなた方の味方なんですよ」

「そう言われても…」

「まあ、今はそうかもですがじきに慣れるでしょう。じゃあ話を進めますか。まず勝者の佐藤さん。おめでとうございます。復帰です。このまま新たな人生を歩んで下さい。記憶はどうしますか?先程の話だと消去を希望とか」

「はい、消去でお願いします」

「一度消去すると戻せませんよ、いいですか?」

「大丈夫です」

「分かりました。今日で私とも最後です。短い間、ありがとうございました。では、消去致しますので、今後は敗者の佐藤さんとして新たな人生を歩んで下さい。続いて敗者の佐藤さん」

「はい」

「あなたはこれから約二週間、私と一緒に復活する為の訓練を受けて貰います。但し、復帰できるかはあなた次第です。復帰できなければ、本当にこの世から消えてしまいます。その覚悟で」

「はい」

「では、行きましょうか。この世にいても仕方ないですからね」

こうして俺は別世界へと連れて行かれ、2号は俺と入れ替わり新たな人生を歩むこととなった。

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