第30話
翌日、俺は仕方なく学校へ向かった。テストの結果も悪い、何が得体の知れないことが起きるかも知れない学校に行きたくなかった。だが、お婆さんの言うように可能性が0じゃない。もしかしたら昨日はクラスのドッキリだったのかもしれない。そんな僅かな希望を抱いて俺は教室のドアを開けた。
「おはよう」
いつものメンバーがいる。だが、俺の挨拶に対して返事がなく
「誰?」「転校生?」「クラス間違えた?」
みんな驚いた顔をして俺を見ている。
「えっ?何?冗談はやめてよ。俺、佐藤真司だよ」
「えっ、佐藤真司?ここにいるけど。君も同姓同名なの?」
「この学校に佐藤真司って2人もいたっけ?」
「でも君、この学校の制服着てるよね」
「そりゃ、俺はこのクラスの佐藤真司1号だから」
「1号?」
「このクラスに佐藤真司は1人しかいないよ、頭おかしいんじゃない?誰、君」
次々に非難の目が俺に向けられる。
「不審者、不審者。誰か先生呼んできたら」
「いや、俺は不審者じゃないって」
「そりゃ、自分で不審者って言う人がはいないよ」冷たく冷静に言い放ったのは副島だった。「君さ、この学校の制服着てるからこの学校の生徒なんだろうけどさ、だったら今はテスト週間って分かってるよね?貴重な時間を邪魔しないでくれる」
「えっ?副島、俺のこと分からないの?嘘だろ?同じ中学だったじゃないか」
「君、何で僕の名前を。まあ、僕は有名人だから…でも僕は君を知らないし、君と同じ中学だった記憶もない。これ以上邪魔しないでね。君もクラス帰って少しはテスト勉強したら」
俺の存在が消されたということだろうか?
「あっ、先生来た。早く来て下さい。不審者がいます」
呼ばれて来たのは竹田先生だった。
「不審者ってのはあの子のことですか?」
「佐藤真司だって言うんです。佐藤真司1号とか」
「君は、どこのクラスの子ですか?うちのクラスには佐藤真司君は一人しかいませんよ。制服はこの学校の制服ですが見かけない子ですね」
「えっ?竹田先生までそんなこと言うんですか?冗談はやめて下さいよ。俺は佐藤真司ですよ。2号が来る前からずっといる、佐藤真司ですよ」縋る思いで俺は訴えた。
「私は冗談は言ってませんよ。君こそ冗談ですよね?もし、これ以上冗談を言うのであれば本当に不審者として警察の方を呼ばないといけなくなります。本当のことを言って下さい。君は名前は何でどこのクラスの子ですか?」
竹田先生が演技をしているとは思えない。俺はどうしたらいいのか分からず下を向いた。
これが漫画の世界なら
「夢か」って汗だくになって目を覚ますんだよな。現実逃避をするかのように俺は目を閉じた。
すると急に辺りが静かになり俺の周りから人の気配が消えたような感じがした。
「目を開けたら?」
俺は恐る恐る目を開け、顔を上げた。
竹田先生や副島…クラスメイトがいない。
もう一人の佐藤真司だけが俺の前にいた。
「君の負け」
「負け?」
「そう、君は俺に負けた」
2号が俺に言い放った。
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