第25話

どれくらい寝たのだろうか。気付いたら朝だった。走り出してからの記憶が全くない。階段を下りていくと母の由美子が朝ご飯の支度をしていた。

俺の顔を見るなり

「真ちゃん大丈夫?昨日はお風呂も入らず寝ちゃうんだもん。びっくりした。顔色も真っ青だったし。あんな真ちゃん初めてみた。何かあったの?」

「全く覚えてない。俺そんな顔してたんだ。家まで走って帰って来たから。それでかな?」

さすがに母さんでも、人を尾行してその人が目の前で消えた。なんてテレビの中のような世界のことを話すのは…と躊躇った。

「大丈夫?昨日より顔色は戻ってるみたいだけど」

「多分大丈夫。」

既に俺の頭の中では次に直面する事実にどう対応するべきかで頭がいっぱいだった。

俺がこのまま学校に行けば、佐藤真司2号…昨日消えた奴と会うことにある。果たしてアイツは何て言ってくるのか。俺はどう答えるべきなのか。

「やっぱり真ちゃん変よ」由美子が心配そうに覗き込む。

「ちょっと考えごとしてたから。大丈夫だよ」

このままだと由美子が心配するので俺は急いで家を出て学校に向かった。

結局あれこれ考えても答えは出なかった。もし答えがあるとすれば今日の2号の言動の中しかない。そう自分に言い聞かせて俺は教室のドアを開けた。

「おはよう」いつもと変わらない挨拶、風景。その中には勿論、2号の姿もあった。

幽霊の仕業ではないんだ。2号は生身の人間。じゃあ何で消えた?

席に着いて眺める2号の姿は今までと一緒。

俺が昨日のあの一瞬だけ違う世界に行ってたのか。訳が分からない。そんなこと考え悩んでいるとホームルームの為に竹田先生が入ってきた。竹田先生はグルっと教室を見渡し、俺を見て驚いた。

「後ろの席の佐藤君、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ。このクラスになって初めてですかね?佐藤君の青ざめた顔を見たのは」

「えっ?俺そんな顔してます?」

「佐藤大丈夫か?お前、何か真っ青だぞ。熱でもあるんじゃないの?」

先生の言葉で振り向いたクラスメイトが口々に心配の声を掛けてくる。

「佐藤君、保健室行った方がいいですよ。明日は土曜で休みなので…月曜からテストも始まりますから今日は早退してテストに備えて貰っても大丈夫ですよ」

鏡を見て見ないと分からないが、俺は今、結構ヒドイ顔をしてるんだなってのは分かったし、このままいても心配をかけるだけなので仕方なく保健室に行くことをした。

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