第24話
俺は恐怖を感じ、すぐに曲がった角まで引き返し廣瀬に電話をした。
幸いにも廣瀬はすぐに出た。
「廣瀬、久しぶり、今大丈夫か?」
「どしたの急に?なんかあった?」
「ごめん急に。お前、昨日ラインくれたマンションの前の行き止まりの道って分かる?」
「ああ、分かるよ。それが何?」
「そこの家…太田さんと中野さんの家だよな?」
「?意味が分からない。」
俺は2号をつけたこと。そして目の前で消えたことを掻い摘んで話した。
「それで、その2軒は本当に太田、中野さんの家か?ってのを調べてってこと?」
「それもお願いしたい」
「それもって、他にもあるの?」
「いや、調べ物より、お前どう思う?それを聞きたい」
「その子が消えたってこと?その子、幽霊とかじゃないよね?じゃあ消えたりしないよ。
もしかして、つけられてるのに気付いて隠れただけかもよ。そのうち姿現すとか」
「そんな素振りなかったけどな。振り向きもしなかったし」
「そんなの足音とか止まってる車のミラーとか確認する方法はいくらでもあるよ」
「うーん、そうなんかな」
人が消えるなんて確かにありえない。廣瀬の言うことは一理ある。
「あと、その太田さんと中野さんの家って、そんな新しい感じじゃないよね?多分、昔からある家じゃないかな?って思うんだけど。まあ、親父に確認してみるけど」
「暗いしよく分からないけど、新しそうではない感じかな」
「ねえねえ、もしその子が家に入ったなら家の電気が付いたんじゃない?さすがにこの時間で電気なしはないでしょう」
「いや、どっちの家も真っ暗。街灯もないし、本当真っ暗だよ」
「じゃあ、やっぱり隠れてるんだよ。様子見たら」
「かな?」違う気がするが、廣瀬に反論しても仕方ない。
「また何か分かったらラインしてくれ。ありがとうな。また今度ゆっくり時間作って遊ぼうや」
「了解。またな。でも気をつけろよ」
廣瀬と話したことで恐怖も和らぎ少しだが冷静さが戻った。改めて2軒の家を見るが相変わらず真っ暗なままである。
もし隠れているなら、2号は角にいる俺が帰るのを待っているはず。少し俺は角から距離を取って曲がり角が見える位置まで動いてみた。後ろ歩きで。だが人が出てくる気配もなければ、誰か角を曲がって…という人もいない。しばらく待ってみたが状況は変わらない。俺は勇気を出して、再度2軒の方へ歩き出した。相変わらず真っ暗である。不審者と思われるのは嫌だが、俺は思い切って2軒の家を覗き込んだ。もちろん、誰もいない。しんと静まり返っている。そして2号は隠れていなかった。隠れていないということは消えたのだ。込み上げてくる恐怖と廣瀬との電話の後、そのまま帰れば良かったと思う後悔が俺を追い詰めた。もう逃げるしかない。俺は一心不乱に走り続けた。早く家に。家族に。
家までの道のりは走ればすぐである。でも俺の中ではとてつもなく長く感じた。家に着いた瞬間、安堵と疲労感に同時に襲われ俺はベッドに倒れこんだ。
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