第22話
翌日、俺は学校に行くなり佐藤真司2号を捕まえて話しかけた。
「おはよう、また大野から聞いたんだけど、家って3丁目なの?」
「おはよう、そだよ。確か佐藤君は4丁目だっけ?」
「そう、俺は4丁目。近いなって思ってさ。
ちなみに3丁目のどの辺?」
「どの辺って言われても…ごめん、まだ地理…近所のこと全く分かってないから」
少しだが清楚な2号の顔が歪んだように感じた。
「えっ?じゃあ、どうやって毎日帰ってるの?」
「学校の前の大通りを道沿いに真っ直ぐ歩いて…コンビニの横の脇道入って…」
2号の言ってるルートは3丁目に行く王道ルートである。だか、もっと近道は沢山ある。逆に言えば、誰も通らないルートなのだ。
「家の近所に目印とか…何かある?」
昨日、俺は3丁目を探索している。昔の記憶も復活しつつあった。もし、2号が変なことを言おうものなら…と意気揚々に答えを待っていた。
「マンション?10階建ぐらい?のが近くにあるよ。近いっても家から見えるんだけど…。それくらいかな?」
マンションじゃない…ということは一軒家か。再度詳しく調べれば廣瀬包囲網に引っ掛かる可能性も出てきた。
「えっ?一軒家?」
「うん、そんな大きくないけど…」
3丁目に佐藤という表札はなかったような…
「じゃあ、今度テスト近いから副島も呼んで勉強会しようよ」
「えっ?俺ん家?ごめん、無理。両親共働きで…まだ荷物山積みなんだ。実は…。まだ招待できる状態じゃないんだ」
珍しく2号が動揺している。
「分かった。じゃあ、せっかく近所なんだし片付いたら遊びに行かせてくれよ」
「分かった。その時は」
一定の収穫があったので俺は一旦引いた。
2号の言ってることは、3丁目を知らない人には満点の回答かもしれない。だか、3丁目を知っている俺にとっては10点の回答だ。
早速、俺は廣瀬に2号が言った内容をラインした。廣瀬も「えっ?それ嘘じゃない?」という回答をしてきたが、俺の調査依頼を快く受け入れてくれた。
2号が来て以来、俺は「イケテナイ真司」とか…どちらかというとダメな評価をされ続けてきた。それだけに2号の動揺したような顔を見た瞬間、俺は優越感を感じた。評価とか気にしない。って言ったら嘘になるが、平凡で…普通に生きて来て…評価なんてなかったような俺が…初めて浸った優越感に嬉しくて嬉しくて仕方なかった。そして俺は放課後、一つの計画を実行する。その時間が待ち遠しかった。
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