第19話

今日も授業中、俺は2号を見ていた。といっても、後ろの席だから自然と視界には入る。

佐藤真司2号は、授業中はずっと前を向いて真面目に授業を受けている。時折、後ろを向くが全く不自然にではない。アイツが前の席だから仕方のないことだった。

もし副島の言うように「観察」をしているならいつ?

そんな素振りはない…授業が終わればサッカーの部活に行く。俺は部活をしてないから真っ直ぐ帰宅。全く共通の時間というのが存在しない。じゃあ、俺の情報を集めてるとして…誰かから聞いた?ってことかな?

それも違うだろう。サッカー部には大野ぐらいしか親しい友達はいない。そして俺は有名人でもない。中学時代も今も何か目立った成績やクラスの話題になることはなかった。平凡=俺みたいな存在だからだ。

念の為、俺は部活前の大野を捕まえて話を聞いてみた。

「どした?佐藤?お前の良く出来る方?スゲーなやっぱり」

「何が?」

「何が?って?サッカーに決まってるじゃん。それ以外もすごいみたいだけどさ。

アイツ来たし本当に全国見えたよ」

「すごいのは前も聞いた。何かあったの?」

「何かって…前も話したけど全てだよ。あれでまだ環境に慣れてなかった。とか言ってたんだぜ。今はスーパースターよ。練習試合とかしてないのに、既に他校に情報入ってるの。毎日どっかの監督か関係者が偵察に来て、すごい顔して練習見てるよ。帰り際は一緒。みんな、ウーンって渋い顔して帰って行く(笑)サッカーって11人でするもんなのにさ」

「なのに無名だったんだよな?」

「そう。本人が真剣に打ち込む気がなかったからだって。俺も不思議だよ。あれだけ上手かったら周りが放っておかなかったんじゃないの?と思うんだけどね。芸能人のスカウトみたいにさ」

「だよな、普通はそうなるよな。なあ、話変わるけど、2号…俺のこと何か言ってたり聞いてたりしなかった?」

「別に。アイツ部活終わったらすぐ帰っちゃうし。最初はお前と同じ名前だし俺も違和感?親近感?色んな感情?あったけど、全くの別人だな、お前とは(笑)何も気にならない、最近は」

「じゃあ俺のこと聞かれたり話したりってないんだ…」

「ないね。あっ、何か俺達の家の近所らしいぞ、家。近所っても俺が6丁目、お前が4丁目、アイツが3丁目らしいから、近いっても距離は少しあるけどな。」

「えっ?俺ん家の割と近くじゃん。知らなかった」

「一緒にでも一回帰れば?まあ、部活あるから機会ないかもだけど。そろそろ部活行くわ。じゃあ」

「おう、頑張れよ」

えっ?俺ん家の近く?俺は奇妙な寒気に襲われた。始業式の日に感じた寒気に…

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