第18話
俺は昨晩考え思ったことがある。
双子、テニスのペアのように阿吽の呼吸に似た能力を佐藤真司2号が持っていて俺に使っているのなら…俺も佐藤真司1号も同じ能力を使うことができるんじゃないかと。
俺だって佐藤真司。アイツが普通の人間なら…。
そんなことを思いつつ2号を教室で眺めていると、副島が顔を出した。
「なんかよからぬことでも考えてるような顔だね?」
「なあ、副島、双子とかの阿吽の呼吸とか奇跡?みたいなことってどう思う?やっぱ偶然?奇跡?」
「難しい質問するね(笑)」
「いや、副島なら答え持ってそうだから」
「あるよ、真司が理解できないかもだけど。
俺は偶然がもたらした必然的事実と思う」
「?偶然じゃなくて必然ってこと?」
「そう。例えばさ、プロ野球で奇跡のサヨナラホームランとかってあるじゃん?あれも俺に言わせれば偶然がもたらした必然よ。」
「どういうこと?」
「みんなその場面、部分しか見てないから偶然、奇跡になるんだよ。よく考えてね。
まずさ、プロ野球選手。真司なれる?」
「無理」
「俺も無理と思う。貶してじゃないよ。まずさ、プロ野球選手って選ばれた中の選ばれた選手がなる職業だよね。野球が好き、上手い、なりたいです。ではなれない職業なんだから。ってことは、プロ野球選手として生きているってことがすごいことなんだよ、まずね。次にその世界で1軍で試合に出れる。もっとすごいことだよね。2軍で生活してクビになる選手も多数いるんだし。そして、1軍で試合に出れるってことは並々ならぬ努力をしてるってことよね。そんな選手がホームランを打った。シチュレーションは様々だし相手投手との相性とかもあるし、偶然的要素もいっぱいあるけど、そう考えると別に驚くことじゃないじゃない。でもみんな、その過程とか当たり前になりすぎて無関心になってるからね。プロ野球選手ってすごいんだ。って前提があれば偶然じゃなく必然とも取れるでしょ?」
「確かに…双子も?」
「そう、双子なんてもっと分かりやすい必然だよ。だって、産まれた時から同じ環境、同じ家、同じ食べ物を食べて育ってきてるんだよ。そりゃ、行動が一致したり思考が似てるのも当然だよ。その過程を俺達は忘れてるからさ。目の前で起きたことに驚き、偶然だよな。って…」
「なるほど…俺も2号と阿吽の呼吸ってできるのかな?」
「無理。名前が一緒だから何かしら関連性があるのかもしれないけど…名前が一緒って偶然の一致はあったけど君達には必然の部分が全くない。必然がない以上、偶然は偶然。奇跡でもなくタマタマ。まあ、双子みたいになりたいならお互いを理解しないとね。そこからでしょ。テニスのペアだって、何試合も一緒に経験して、その中でお互いの得意な動き、苦手な動きを理解して…この場面、前は…とか…それに自然と身体が反応する…頭で考えて動いてないから、それが周りには奇跡に見えるだけ。君達に何がある?」
「何もない。でもさこないだ、俺の弁当の玉子焼き…副島も知ってるだろ?それに真っ先に目がいったんだよ、アイツ」
「簡単だよ、言ってるじゃん。玉子焼きに対する事前情報があったからだろ。どこから仕入れたかは分からないよ。2号は情報を持っていた。お前は情報を持ってるって知らないから驚いた。それだけのことだよ。」
「なんで知ってる?」
「それは俺に聞かれても分からない。仕入れてないなら自分で見てた。お前を観察してた。ぐらいしかないだろね。玉子焼き食べる時だけ顔がにやけてた。とか」
「マジか?」
「俺は観察もしてないから」
「そっか、ありがとう」
「観察はいいけどストーカー扱いされるなよ」
「まさか(笑)ありがとう、助かった」
副島の話からすると、2号は俺を観察してたということになる。2号が俺をもし観察してたとして…無理が生じる。まず2号は俺より前の席。後ろを振り返らないと俺は見れない。そして授業中に振り返れば先生からの注意や周りの生徒の目に付く。そして、俺は後ろの席。授業中に俺の視界に2号は入っている。ずっと見てる訳ではないが少なくとも2号はマジメに授業を受けているし、受けるタイプだろう。どちらかと言えば、俺が2号を観察している。って方がしっくりくる状況だ。なのに…。これが副島の言うように必然なら…一体…。
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