第3話

始業式も終わりホームルーム。

担任の竹田先生が入ってきた。年齢は今年で50歳。少しお腹の出た小太りの体格。穏やかな性格で生徒を怒る姿は見た事がない。かといって生徒から舐められたりもせず誰からも慕われる人格者。ザ先生といった感じの先生だ。「みなさん、今日から新しい学期が始まります。夏休みは楽しみましたか?夏休みの楽しい思い出話は後日ゆっくり聞かせて下さいね。今日はまず、皆さんに新しい仲間の紹介からしたいと思います。大丈夫と思いますが仲良くしてあげて下さいね。」

「マジで?先生、男?女?どこから来た子?」一斉にクラス中が騒つきあちこちで声が上がる。

「皆さん落ち着いて。あっ、佐藤くん」

急に竹田先生が俺を呼んだ。

「はい、何ですか?」この流れで俺が呼ばれる理由が分からない。

「実は、今日から皆さんの仲間になる男の子は佐藤真司君なんです」

「えっ?俺?」どういうこと?竹田先生の言葉の意味が分からずクラス中が静まりかえってしまった。「先生、暑さボケですか?佐藤は転校生じゃないですよ、前からいますよ(笑)」

「そうです、佐藤くんは前からいますね。今日の転校生も同じ名前…同姓同名なんですよ。佐藤真司君。漢字も同じ字を書きます」えっ?マジ?佐藤が二人に?またもクラス中が騒つく。

「私も教師を長いことしてますが…双子を担任したことはありますが同姓同名…漢字も読みも一緒というのは初めての経験ですね。だから慣れるまでは皆さんも混乱されると思います。二人の呼び分けが大変ですよね。かと言って変なアダ名を付けたらダメですよ。まあ、背の高い方の佐藤君とか…その範囲なら大丈夫ですかね?佐藤君?」

そんな急に振られても…「まあみんなが分かるなら何でもいいですよ。1号、2号とかでも」

「そうですね、そこはもう一人の佐藤君も交えて考えましょうか?じゃあ、佐藤君に入って来て貰いましょう。佐藤真司君、入って来て下さい」

はい。と返事が聞こえドアが開いた。

この瞬間、俺は今日の寒気の原因がこれだったんだと気付くことになる。そして俺の平凡だった人生が大きく変わった瞬間でもあった。

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