第35話、人の理はなくても天と地の理があれば・・

両軍はついに決戦の火蓋を切って開戦したのである。誰もがこの戦いに勝った方が時の支配者になることは明白であった。



戦局は兵の質が高い明智軍が押していたのである。その上に部隊長している神たちは明智に見つかり次第に殺されていき次第に押され始めていたのである。



もちろんのことスサノオやアーリナがなんとか打開をしようとしたがそれでももう一手が足りずにじりじりと押されていた。そんな状況を見ていた明智が



「戦局は我々に傾きつつある、この勢いで敵軍を潰し我々の勝ちを天下に示せ。」




この喝で明智軍の士気が上がり神々連合軍はピンチを迎えたのであった、その時であった。明智軍の後方から突如に軍勢が出現し明智軍を奇襲したのである。




その軍勢はスサノオが言った言葉で正体がわかるのであった。



「あ、あれはアレス殿の部隊でないか、助けに来てくれたのか。皆の者、援軍が来てくれたぞ。援軍部隊と協力して挟撃をするぞ。」




一方、明智軍は大混乱していた。戦局は押していたがまさかのここで援軍が来るとは思っておらず明智軍は次々と倒されていった。



明智はこのままでは全滅すると考え急いで退却を開始をしたのであった。もちろん、アレスはこの動きを読んでおりいたるところまで追撃して明智軍を半数以上を討ち取るという大戦果を挙げるのである。



だが、神々側の被害も馬鹿にできないほどの被害であった。まず、神々の半数以上が討ち死にしさらに邪神の親衛隊も七割以上が討ち死にしており、正直に言って戦いに勝ったと言えにくい状況である。もし、アレスの援軍がなければ全滅していたかもしれない状況であった。



その後、アレスの援軍部隊と合流した神々軍は追撃に入るのであった。このまま、弱っている明智軍を一気に叩くつもりである。




さらにアレスに邪神は念には念を入れよと言うことでさらに増援を呼んで明智軍が逃げ込んだ山を包囲するのであった。




一方、明智軍は負傷している者が大半を占めており迅速に移動が出来ずに逃げ出すことが出来なかった。



明智はここまでの神々の連合軍に囲まれてここまでかと思っていたその時であった。明智があることに気がついたのである、それは元の世界で言うなら季節の変わり目になる時期で秋から冬になるところだが・・・十年に一度ぐらいであるがとんでもない寒波にあるのである。




どれぐらいひどい寒波と言うと気温がついこの前までは十五度ぐらいあったのに気がついてみたらマイナス三十度になるほどである。




それも大雪を降りながら・・・これをうまく使えば敵を戦わずに壊滅に追い込めるではないかと考え準備をするのであった。



さらに明智にとってうれしいことがあった。それはこの気象現象を詳しく知っている者は敵におらず、自分のみと言うことである。



後は少しばかり苦しい持久戦になるがそれだけで勝てるなら楽なことだと考え山の上で持久戦を展開するのであった。



そして明智は山でも比較的に寒波の影響を受けにくい場所に陣を作り兵士たちにはできる限り暖かいものをまいて寝ることを厳重に命令をするのである。




一方、神々たちは言うと明智軍の行動が読めなかったのである。まるで自ら自滅の道を選んだかのような行動を見て油断をしたのであった。



それもそのはずである、こちらは持久戦をしているだけでいいという簡単なものであったために酒盛りなどが起きて戦いと言うことをほとんどの者が忘れていたのである。



ただ一人、明智の行動を警戒している者がいた、それはアーリナであった。



アーリナは明智はこんな時には無駄な動きをするものではなく・・・むしろ何かを準備をしている様子に見えて不安を隠せないでいた。




アーリナは不安になり同じ陣にいた江里口信常に相談しに向かった。



そこで話し合いが行われたが結局、相手の作戦の意図がつかめずにただ時が過ぎてゆくだけであった。



その間にも明智軍の奇襲は一回もなく完全に神々の軍は油断をしたのである。江里口信常は個人的にここまで油断した時に出てくると思っており今かと今かと待ち受けていたが明智軍はピクリとも動かなかったのであった。



江里口信常は予想が外れて本当に明智は何を考えているのであろうと思ったのである。しかし、答えが見つかるはずもなく考えていた時に江里口信常は外がだいぶ寒くなったと思いながら陣に戻るのであった。



もうすでに明智の魔の手がすぐそこまで迫ってきているのに誰も気がつけないでいた。



その日の夜にアーリナは冷え込んできて暖かいものを持ってくるべきであったなと思いながら外に出てみたら雪まで降り始めてきたのである。




その時であった、昔にソウナが言った言葉を思い出したのである。それは明智はいろんな観察をするのが好きなんだよ、生物とか気象現象とか・・・



もし、明智がこの後の気象や生物などの動きを知っているならそれを利用とするに違いない。そうも考えているうちに雪はさらに強くなるばかりであった。



それを見て明智が前に言っていたことを思い出した。




「この世界はなぜかまだわからないが・・・十年に一度に大きな災害級の寒波が襲うだよ。だからそれには警戒しておかないといけないよ、アーリナ。」



アーリナはここで明智の考えが分かったのである。それはこの自然の大寒波を己の力でさらに増幅させて我々をここで凍死させるつもりであることに気がついたのであった。




しかし、すでに時は遅く大寒波は来てしまったのであった。大自然の大寒波にそれを増幅させて神々連合軍を襲っていたのである。



アーリナはスサノオやアレスに邪神たちだけでも急いでこのことを伝えないと思い動き出したがすでに気温はマイナス五十度以下になっていたのである。




神々連合軍は・・・いや、かつての世界の秩序を支配していた者たちの終焉はまさに迎えようとしていた。








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