第28話、明智、覚悟の決意
土居たちが処刑されたその後から明智は自分の部屋に閉じこもり、ただひたすらに部屋の中で泣き続けているだけであった。
もちろん、アーリナは何とかしようとしたら
「ふ、ふざけるな!お前のせいでこうなっているだぞ。お前の顔なんて見たくない出て行け!」
アーリナはその言葉を聞いてから静かに部屋から出て行ったのである。また、部屋から聞こえる泣き声と部屋の外からも泣き声が聞こえたのであった。
「・・・私は・・・一体・・・どこで間違えたのよ、誰でもいいから教えてよ。」
どうしようもない悲しみを抱えていたのは明智のみではなくそこまで追い込んだ、アーリナも泣きたくて仕方なかったが・・・自分がここまでしたなら責任をとらなければならないと思いただひたすら明智の分の仕事もやりいつ戻ってきてもいいようにしていた。
ソウナも何とかしようとしていたがそれでも明智の心は開くことはなくただ時が過ぎていくのであった。
ついに我慢できなくなったソウナが
「お父さん、いつまで泣いているのよ。いくら泣いても死んだ人は帰って来ないのよ・・・だったら今、何をするべきなのかを考えてよ。お父さんは多くの民たちを守っていかないといけない立場なの。」
ソウナは怒りながら言ったが明智はただ人形のように聞くだけで何も反応は示さなかった。そのまま、ソウナはもう知らないと言って部屋から出て行くのである。
この言葉が後にソウナが後悔することになるとはこの時のソウナは夢にも思ってもいなかった。
明智はただ土居たちがいなくなった悲しみのみが残っており・・・生きている意味が見つからないでいた。好きな人たちとスローライフをしているだけでよかったはずなのに・・・そんな思いだけしか明智の頭にはなかった。
そんな時である、明智の部屋にあった物が落ちてきたのである。それはとある絵であった。
それは生前、土居たちと出かけた時に描いた作品であった。それは大自然を描こうとなり明智、土居、族長にリアーナの四人で描いたものである。
今の明智にとってはつらい思い出以外何者でもないために捨てようとしたが・・この時のことを思い出していたのである。
大自然の中、四人は地図作りも含めていろんな場所を探索をしていたのであった。いろんなことがあったが全員、楽しそうにしていた。
そんな時である、今まで見た中で一番絶景な景色だと思う場所を見つけたのである。これには四人とも感動したのであった。
この時に族長が面白いことを考えたと思わんばかりに
「せっかくですからこの景色を絵に描いてみませんか。それで一番、うまくなかった人は今夜の夕食を採ってくるというのは。」
明智も含めて四人とも賛成して絵を描き始めたのであった。だが、ここで明智はあることに気がついてしまう。
美術の才能がびっくりするほど・・・なかったことに。学校の成績でテストで八十クラスいき、授業も真面目にしているのに3しかもらえないほどの才能が無しであった。
その結果は悲惨なもので比べてみるまでもなくビリは決まっていたのである。
「結局、私が一番下手ですね、わかります。それと土居さん、うますぎでしょう。戦国時代に生まれてこなければ絶対に名が残った芸術家になっているよ。」
「それはうれしい話でござるな・・・だが、褒めても大将が夕食の支度を一人でする罰は消えないでござるが。」
「まあ、流石にすべてやらせるわけじゃないから、頑張ってよね。」
明智はまあ、頑張ろうかなと思っていた時に族長が楽しそうな笑顔をしながら皆に対して
「それでも今回のことはいい思い出になりましたね。また、このような思い出がたくさんできるといいですね。」
「そうだね、母さん・・・でも神々やいろんな場所はまだ安定していないから安心して行けないけどね。」
「それでござったら大将がそのうちに大陸すべてを平和にしてくれるでござるよ。馬鹿な一面はあるでござるがやる時はやる大将でござるから。」
「そうなったら、今度はもっと遠い場所が良いわね。あなたもそう思うでしょう、リアーナ。」
「はい、そう思います。ですので明智には頑張ってほしいです。その時には今よりも大人数で・・・・スローライフが楽しくできる国になっていると良いです。」
三人とも心の底からそうなるといいなと思い、明智に対してお願いをするのであった。
その時の明智はあんまり気にしないでわかりました、わかりましたと軽く答えを返したのであったがこれが三人が同時にお願いした内容は最初で最後のやつになった。
明智はその時に描いた絵で・・・土居たちの思い出が思い出し、それで自分にはまだやることがあったと思いだしてくれた。
三人が望んだ世界にする・・・・・誰もが平和にスローライフができる国を作る。そして平和になった世界を旅をする。
土居たち、三人が最初にして最後にお願いしてきたことを果たしてあげるのがただ唯一の償いになると明智はそう考えたのである。
明智はついに泣くのをやめた。ソウナの言う通りに泣いていても平和にはならない。いつまでも泣いていたら土居たちがあきれるばかりか何のために死んでいったか分からなくなる。
そうならないためにも自分が動いてすべての国を支配して平和にしなければならないと並みならぬ覚悟をしながらそう決めた。
そこには先ほど悲しさのあまりに泣き続けていた者の姿はなく変わって理想の世界のためなら何でもやる・・・・悪党の姿があったのである。
その姿はかつて元の世界で日本の政治を変えたい思いで国会に突っ込んでテロを起こしたあの時の姿になっていたのである。
今、この世界は大きく変わろうとしていた。それが良いことになるか悪いことになるのかは未だ、知る者はいなかった。
ただ、言えることは・・・楽しく平和にスローライフをしていた吸血鬼はいなくなってしまったのみであった。
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