第27話、崩壊する明智軍
ついに処刑台に三人が来てしまった、明智はもうどうすることも出来なくただ見つめているだけであった。
そんな明智の表情を見ていた三人は申し訳ないなと思うばかりであった、そのためにアーリナの話なんて誰も聞いていなかった。
この後に起きる惨劇を明智は見ないといけないと思うだけで気持ち悪くなるがそれでも最後まで土居たちと見ていたいという気持ちが強く残っていた。
それでついに土居たちの処刑を始めるとアーリナがそう発言した時に土居が
「身勝手なことはわかっているでござるが・・・ここは武士らしく死にたいために切腹をさせていただきたいでござる。」
「そんなことが許すはずが・・・・」
「それだったら、この江里口信常がその役割を引き受けるでござる。アーリナ、文句はないな。」
「・・・まあ、いいでしょう。それでは言い出したのですから最初に死んでいただきます。」
土居はもちろんそのつもりだという顔で切腹の準備をしたのである。土居はすでに覚悟を決めておりためらいもなく切腹を始めたのであった。
自らの腹に刀を刺し血があふれ出してきた、明智はその光景を見たくはなかったが土居の最期の生前、姿になるのはわかっていたために目をそらさすに見届けたのであった。
その潔さに江里口信常は土居に対して
「見事なり、まさしく武士であったぞ。」
それを聞いた土居はわずかに笑顔を出しながら首を斬られたのである。その光景を見た明智はもうすでに涙が流していた。
勢力と呼べる時から一緒にいた者が今、亡くなってただ、悲しかったのである。そんなこも考えることが出来ないアーリナは
「それでは次はどちらが先に死にたいですが・・・正直に言ってどちらでも構わないのですが。」
「族長である、私に先に殺しなさい。次に罪が重いのは私なはず。」
アーリナはそれもそうですねと言って次は族長に指名して処刑の準備を始めるのである。明智はもうやめてくれと言う気持ちしかなかったがその思いは誰にも届くことはなかった。
そうして族長が処刑される準備をしていながらこれを見ていたソウナもあることを思うのであった。
(これでは自分が嫌がっていた・・神と同じになってしまうのではないか。)
そんな思いを抱きながら見ていたのであった。しかし、大半は土居の死、これから族長の死にさらにリアーナの死を楽しみにしているかのような感じである、ソウナもこの場所から逃げ出したかった。
だが、明智もいるために留まるのであった。それが良い結果もしくは悪い結果になるかは今、誰も分かっていなかった。
族長は何となくであるがどこかでまた明智に会えるじゃないかと思って不思議と怖くなかったが・・・もし次に会う時があったら・・・
それはよくないことが起きた時だと直感であるがそう感じたのであった。出来ることならそうならないように祈りながら族長は処刑されたのであった。
明智はすでにもう涙が堪えることが出来ずに号泣と言っていいほど泣いていたがアーリナはそれでもやめるわけにはいかないと思い最後に残ったリアーナに近づいていった。
「あなたも最後に言い残すことはありますでしょうか、今なら聞いてあげても構いませんが。」
「そうですね、明智は私の物にできなかったなと悔しい思いと・・・今はこれでよかったのかなと思う気持ちがあると言っておきましょう。さらに言いますと・・・あなたは明智のことが好きでしたらもう少しばかり彼を考えてあげたほうが良いですよ。」
それは一体、どんな意味であろうと考えていたアーリナであったがすぐに答えを言ってくれたのである。
「今のあなたでは明智にずっと好かれない、好きな人だったら彼の様子も見たほうが良いですよ。今の明智の表情は見てもいられないものですが。」
そうしてアーリナは明智の様子を見てみるとすでに号泣している顔が見れたのである。まるで自分が間違いをしているかのような感じであった。
間違いを犯したのは彼女らなのに自分が悪者扱いにされて納得できない表情をしたら
「だからその考えがあなたと明智を切り裂いていることにまだわからないのですが・・・わからないのでしたら明智はあなたを一生・・・・。」
「うるさい、少しは言葉を慎みなさい、罪人が。」
アーリナは怒りのあまりにリアーナを殺してしまったのである。ほとんどの者たちは歓声を上げていたがそれを見ていた明智は
「ごめん、私がもっと力があれば・・ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい。」
一人ぶつぶつ言い始めたのであった。それはアーリナからもソウナにも狂気のように感じられた。人の心が崩壊する瞬間を見ているかのような感じになった。
そんなもろくなっている明智の心にとどめを刺すかのような情報がこの処刑場所に届いたのであった。
「た、大変です、明智様、アーリナ様。」
「一体、そんなに慌てて大変なことでも起きたの、今はこちらの方が大変かもしれないのに・・・。」
「こちらも大変なことです・・・榊原康政様が・・・・殿の恩義を返せずに男として武士として面目が立たなくて誠に申し訳ありませんと言って・・・・自害をいたしました。」
その情報に流石のアーリナも驚きが隠せないでいた。周りの者たちも先ほどの歓声が嘘かのように静かになっていた時に聞いた明智はさらに
「みんな、みんな、死んだ・・・私のせいだ、私のせいでみんなが死んだんだ。私が生きているだけでみんなが死んだんだ・・・はっはっはっはっは。」
とうとう狂いだし笑い、泣きながら叫んだのであった。
その光景を見てアーリナは前に江里口信常が言っていた言葉の意味をここで理解した。正しいことだけが最善ではないと。
それが分かった時にはすでに取り返しがつかないところまで来ていたのであった。
戦いに大勝利したはずの明智軍はまさに崩壊をしようとしていた。
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