第26話、土居たちと最後の日
それから城に帰ってからも明智は何も言えないでいたのであった。自分自身が無力のせいで土居たちは死なせてしまうことになることがとても悔しかったのである。
どうにかしたいの気持ちはあってもどうすることも出来ずにただ土居たちの最期になんて言えばいいのであろうかと思うばかりであった。
重い気持ちをしながら明智は地下にある監獄に向かったのである。そこでは最後の時を迎えてただ待っている土居たちの姿があった。
そこではすべてが絶望しかない表情していた、正直に言って他人なら見ていないふりもしたくなるような感じであったが明智はここで逃げ出すわけにはいかないと思い土居たちと向きあって話すのである。
「どうしたのですか・・・私たちに会いに来て・・・どのような考えで。」
「お前たちと最後の瞬間まで話し合いをしたくてここまで来た。今日はここで寝るつもりだ、暗くてじめじめしていて嫌な場所だが・・・よく考えたら私は吸血鬼だから本来ならこのような場所に住んでいるはずだがな。」
「今更ですが・・大将はいつも、いつも馬鹿でござるな。本当に変わらない者でござるな。」
「もしかしたら不意打ちされるかもしれないのに・・・。」
それでも明智は一緒に暮らしてきた、者たちと一緒にいたくて気にしないでいた。土居たちも何となく明智の行動を理解していたのであった。
それからは明智が今までのことを思い出を思い出すかのように話し始めたのであった。土居たちもこんなこともあったなと思いだしながら聞くのである。
だんだん明智の声が次第に小さくなり聞こえなくなったと思っていたら、今度は泣き声が聞こえ始めたのである。
土居たちはなぜ泣いているのかを明智に聞いてみたら泣きながらも必死に
「お、お前たちと話せるのもこれが最後だと思って泣きたくなったのだ。それでお前たちにどうしても伝いことがある。」
土居たちは一体、どんな内容かと考えていたら明智が土居たちの前で土下座をして
「お前たちを助けることが出来なくて・・・ごめんなさい。無力な私を恨んでください。本当に助けられなくてごめんなさい。」
明智は泣きながら土居たちに対して心から謝罪をしたのである。その心が届いたのか三人とも泣きそうな表情になるのであった。
三人とも裏切った自分たちをここまで思ってくれてた明智に対して初めて心から感動してリアーナに関しては泣き出す始末でほかの二人も泣くのも堪えている状況であった。
三人とも少しばかり考え方は違いはあるがほとんど一緒の気持ちであった。
(ここまで自分たちを思ってくれてた人を裏切ったのだな・・・それでいて必死に生き残ろうとしてこの人に対してだまそうとしていたのか・・・・確かにアーリナの言う通り、明智に対して死んで詫びるぐらいのことはしたな。)
三人ともすでに残っていた恨みは消えておりせめて最後の時間ぐらいこの人と一緒に過ごそうと考えたのであった。
ここで土居が明智に対して少しばかりわがままを言った、普通なら監獄にいる人の願いは聞いてくれないであろうが明智はもちろん聞くのであった。
「大将、己のわがままはわかっておりますが・・・大将の手料理を食べたいでござるな。某、最期のお願いでござる。」
土居は頭を下げてお願いするのであった。もちろん明智はすぐに準備を始めるのであったが明智がここでとんでもないことをするのである。
「こんなところで食べるのもなんか嫌な感じするし・・・外で食べに行かないか。私が一緒なら出ても大丈夫だろうし・・・みんな戦いで疲れて寝ているよ。」
リアーナは流石に危ないし明智に被害が及ぶからそれはしなくてもいいと伝えたが明智はどうしても外が良いと言って無理やり三人とも外に連れ出すのであった。
外は雲一つもない夜空が広がっていたのである。まるで明智たちに対してわずかに哀れに思ってくれたのか夜空はいつも以上にきれいであった。
「ほら、ここなら誰にも見つからないし夜空も見えていい場所でしょう、時々だけどここに来ているからこの辺の地形も分かっているから。」
そうして明智はできる限りの料理を持ってきて食べながら話をするのであった。その光景は明日、処刑される者の姿はなくただ平和な姿に見えた。
「ところで大将はアーリナ殿はどんな印象ですか。明日、我々が処刑されることになった張本人ですが・・・気になりまして教えてほしいでござる。」
「正直に言って・・・・大嫌い。有能な人で周りから慕われていることは分かるけど・・個人的には大嫌いだ、それだけは言える。」
「あらあら・・そうなると明智さん相手はまだ先になるのかしら。見てみたかった気はするけど・・・。」
「??それは一体、どんな意味かな。あんまりわからないけど。」
リアーナはため息をつけながら明智に対して言うのである。それはほとんど聞きたいことを隠さずに
「明智はアーリナに対して女性としても嫌い・・・だろうと思うけど・・・もし、アーリナが明智のことが好きと言ったらどうする。」
「そんなの絶対にありえない、あのアーリナが私のことが好き・・・夢にも思ってもいない。でも、好きじゃない女性に好かれるのは・・・困るかな。」
三人とも正直に言って明智のこの先の未来が心配になってきたのである。万が一、この出来事と加えてほかのことで対立すればとんでもないことになるかもしれない。
国は下手にすれば分かれる上に明智とアーリナのどちらかが死ぬまでの死闘が始まりそうで怖かった。
何が怖くというと明智が自分たちのせいでまた苦労して今度はさらにひどい目にあってしまうのでないか、そう考え真っ先に口に出したのはリアーナであった。
「明智・・・無理のお願いはわかっているけど・・・アーリナのことをもう少しばかり彼女の気持ちを考えてあげてください。私は明日、処刑されますがアーリナさんとはこれからも付き合っていく仲です。彼女とうまくいかないことになると・・・。」
「・・・・そうだな、できる限り頑張ってみる。」
これを聞いた三人ともこれは絶対にうまくいかないパターンだと感じたのである。無駄に明智と一緒にいるおかげで性格が理解しており・・・この返事でうまくいったためしがない。
三人ともこの先の明智の未来が不安があったが自分たちではどうしようもないことぐらいわかっていた。ただ、その不安が当たらないことを祈るばかりであった。
それからも会話を続けて少しずつ夜明けが近づいてきたのであった。流石に朝に戻ると大変なことになるのでもう戻らなければならなかった。
明智はここで三人に対してとんでもないことを言うのであった。それはそれをすれば明智もただでは済まされないほどのことである。
「三人とも今からでも遅くない・・・逃げてくれ。私が外に出してそのまま寝ていたら・・。」
普通なら逃げてしまうかもしれなかったがすでに三人とも覚悟を決めており
「大将、気持ちは大変うれしいでござるが某はもう覚悟を決めたのでござる。こんなに思ってくれてる大将にこれ以上の迷惑をしたら武士の風上にも置けない者になってしまうでござる。」
「私も覚悟を決めてある、それにここで逃げ出したら部下たちに迷惑かかるしね、最後ぐらい部下たちに迷惑はかけたくないの。」
「私も族長の娘として・・・一人の騎士として最後ぐらい恥ずかしくない最期をしたいのでお断りさせていただきます・・・・ですが、明智の気持ちは本当にうれしかった、それだけは言えます。」
こうして三人とも逃げ出すこともなく誰にもばれないうちに監獄に戻り最後の瞬間をただ待つだけであった。
三人はこれから死ぬものとは思えないぐらいにすっきりとした表情であった・・・対してこれからも生きる明智はそこにいる誰よりも暗い表情をしていたのであった。
そしてついに三人の処刑が始まろうとしていたのであった。
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