第22話、未来のために・・・

明智軍は味方の裏切りにあり絶体絶命のピンチのはずだがこの時の明智雅は笑っていた。これは勝てないから頭が可笑しくなったのではなく・・・



「アーリナ、ソウナ並びに榊原まず一千は我と元についてまいれ。それと共に戦っている妖狐族たちには我々の旗を持っていただき、山の中に逃げ込め。この山はかなり森が深く地元の妖狐族たちなら逃げ切れるであろう。」



「ですが、万が一山に火でも放たれたらどうしますか。ほかの一千は全滅してします。」



明智がそれを聞いて空を見上げたのであった。そうしてアーリナと一千の兵士たちに対して



「皆の者、運命は我々に勝利の機会を貰った。これより敵本体に奇襲をかける。狙うのは敵総大将、アポロンの首、ただ一つ。」



この言葉で下がっていた士気が再び上がり始めたのである。その時である、天からこれまで受けたこともない大雨が降り注いだのであった。これを見たソウナがあることを思い出すのである。




夢で起きていたことが今、現実に起ころうとしていた。それも思い出してみると地形など全くと言っていいほどそっくりであったのである。ソウナは急いで明智のもとに向かいこのことを教えようとしていたが



「ソウナ、ありがとな。今回はお前のおかげでこの戦が勝てそうだ。この後に起きる土砂崩れで敵大軍をこの谷間に閉じ込めている間に敵本隊を叩くことが出来そうだ。それに相手はこの後のことはわかっていないであろうから混乱も起きるはず、勝機は十分にある。」



すでに明智は前に聞いていた夢の話を思い出しておりそれをもとに作戦を作っていたのであった。普通なら考えられないことだがこの少女、ソウナが異様な能力を持っていることはすでに明智は気がついておりそれをうまく巧みに使ったのである。



それはこの少女に無理やり与えやれた能力であったがこの与えたやつに復讐するためにも今回ばかりは利用させてもらったのである。そしてこの少女に能力を与えた儀式がある。明智はそれを一刻でも早くなくすためにもここでアポロンだけでも討ち取っていきたかったのであった。




そしてその儀式の内容は・・・・蟲毒である。




蟲毒・・・壺の中にムカデや蛇などの毒を持った生物を中に入れて共食いをさせる。そうして生き残った生物を祀るという儀式である。



その蟲毒を・・・アポロンは・・・人間で起こっなったのである。







・・・・少女は小さい時から一人であった。家族もなくまた友達もいなくただ一人孤独に生きてきた。



ある日にとある神に拾われたのである、少女はどこにも行く当てもないので神について行くのであった。そこで数日、特に不自由もなく暮らしていたがまたほかの同じ年ぐらいであろう少女がこの大きな部屋に入ってきたのである。



少女は最初こそ特に関心もなかったが大きな部屋にほかには誰もいなく暇であったので新しく入ってきた少女に話かかけたのであった。



「あなたは誰?」



「私は、サエちゃん。ここに新しく住むことになったの。」



「・・・そうなんだ、私はソウナ、よろしく。」



誰もいなかった部屋に新しい人も加わって騒ぎ出すこともしばしばあったがそれでもソウナにとって今までない幸福感であふれていたのである。そして同時に信頼できる人ができうれしく思いながら過ごしていた。



それからもどんどん増えて最終的に三十人ぐらいの同じ世代の少女が集まった時に拾ってきた神様が



「君たちはそこでこれからやる儀式をしてもらう。内容は実に簡単だ、ただこの部屋で暮らしていてくれ。それ以外は何もしなくてもいい。」




それを言い残しその部屋から立ち去るのであった。一方、ソウナたちは簡単なことじゃんと思い気にしないで過ごしていくはずであった・・・・しかし、いつもの食事の時間になってもいつもの食事は届かず、さらにいつもは開いているはずのドアも閉まっており完全に外と孤立状態になってしまったのである。




最初はみんな慌てながらも一緒にここから出ようと必死に力を合わせていたが次第に力が無くなっていき。起き上がることすら困難になっていくのであった。



そしてついに死亡者が出始めたのである。ソウナとサエは恐怖におびえるのであった。もしかしたら明日は私たちがこんな風になるじゃないかと恐怖に怯えていたがこんな時にソウナはあることを考え出したのである。




死んだ者たちを食べればいいじゃないかと言うものである。もちろん、これに反対する者はいなかった。それほど少女たちは追い込まれていた。





さらに時は進み生き残った者はソウナとサエの二人だけになった。そんな中でも二人はお互いを助け合いながら生き残ってきたのである。だが、すでに二人は限界を向けていた。



「ソウナ・・・ちゃん、もし出られたらどうしたい・・・私は元気になって・・遊びたい。」



「・・・私は・・・サエちゃんと一緒に遊んでいきたいかな。」



二人はもう叶わないことも考え出して現実から逃げていた、それでも限界にきてサエが提案するのである。



「ソウナちゃん・・・私を殺して食べて・・・。」



「何を・・・言っているの・・・サエちゃん。」



「きつとここから助かるのは・・・・一人だけだと思うから・・・それだったらソウナちゃんに・・・生きてほしい。」



「・・・嫌だ・・・サエちゃんも一緒じゃないと・・・嫌だ。」



サエはすでにソウナのために死を覚悟しており殺してもらうために



「そうやって私の想いを・・・否定する、嫌いだよ・・ソウナちゃん。私、知っているだよ・・・夜、時々・・・ほかの人を殺していたことも・・・私のためと言って・・・本当は・・・・。」



「・・・・うるさい、・・・うるさい、うるさい、うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさい。」




そうやってソウナは残っている力でサエの首を絞め始めたのである。サエは抗えるだけの力は残っておらずただ死を受け入れるだけであった。それでも最後にどうしてもソウナに対して言いたいことがあった。



最期の力を振り絞って出すのであった。



「・・・ソウナ・・・ちゃん・・・・ごめんね・・・・そして・・・ありが・・・とう・・・だから・・・・」




サエからもう涙も出る余裕もないはずなのに最後の最後で涙を流してソウナに謝りながら息を引き取ったのである。



冷静さを取り戻したソウナは急いで友人のサエに呼びかけたが返ってくることはなかった。そう、自分がただ一人の友達を殺したんだ、自分が生きたいために・・・



「私が・・・私が・・私がーーーーーー。ああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁ。私が、私が殺したんだーーー。ただ一人の友達を・・・うああぁぁぁあぁぁぁぁ。」



ソウナはその場で狂いだしながら泣き出したのであった。そんな状況になり今まで開かなかった扉が開き神はこういったのである。



「素晴らしい・・・素晴らしい、まさに描いていた理想と同じではないか。この少女は間違いなく化けることができる。さあ、選ばれた少女よ、喜ぶがいい下等な人間から誇り高い神になる時が来た。」




神はそう言ったがソウナの耳には届いていなくただ狂いだしながら泣き続けていた。




その後、ソウナは神になるための儀式を行い・・・神になったのであるがソウナの目には何も映っておらず、ただ大きな闇が広がっていた。




それでも彼女は自ら死を選ぼうとはしなかった。それは死んでいった者たちのためにそしてただ唯一の友達の最期の言葉、息が引き取る前の瞬間に



「・・・生きて・・・。」



この言葉だけでソウナはただ生き続けていたのである。それは大切な友達が最初で最後のお願いであった。



だからソウナは立ち止まるわけにはいかなかった、そのために多くの修行もした。自分みたいな人をなくすためにも自分が強力な神になって蟲毒をなくす。ただ、それだけのために生き続けて・・・・とある時に明智と出会うのであった。









ソウナはかつてのことが本当に一瞬であったが走馬灯のように思い出していたのである。そしてソウナは今、ここで思うのであった。



蟲毒を行った・・・神、アポロンを必ず打ち倒す。そして明智と共に行動を開始したのである、長年の願いであった蟲毒をなくしかつて友達、サエと描いていた世界を作るためにソウナは今、決戦場所に向かうのであった。















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