現実の世界と空想の中の私

泡沫りら

現実⇔空想

 ―――現実


 私は高校生になり、たくさんの苦難や幸せを乗り越え、もらってきた。

クラスの高校生との差が大きく見える私は、どこか自分に劣等感を覚えていた。それは、中学の課程を人より少なく過ごしてきたからでもあった。クラスには数名、そういう子はいたけれど、私みたいに避けられている。とか、うまく友達が作れない。というわけではなかった。そこが私とは違う大きな点。


 中学時代は一年の後半。小学から仲の良かった子に裏切られ、友達が一番大切だった私は深い傷を負った。そして、それと並行して、たった一人の男子にいじめられたことから不登校になった。今思うと、裏切られたのは仕方なかった。自分にだって非があったから相手方の子も嫌になっていけない行為をした。だけど、男子にいじめられて不登校は、我ながら馬鹿馬鹿しいと思う。たった一人に言われたから不登校?馬鹿みたいだ。けれど、当初の私にとっては傷つく重さが違ったのだと思う。不幸が重なって精神がボロボロだった。それは紛れもなく事実だから。

 まぁ、三年生になって結局は高校に行くために勉強して出席日数のために頑張って学校に行った。これには親しかった友人、先生方のおかげで今、私はこうやって高校生になれている。


 高校三年生になって、思うことはたくさんある。一年生の時は親しい友人がほかの学科に行ったこともあり、クラスで最初は孤立していた。病院に通っていた私は最初は中学のことを引きずり、不登校気味だった。さすがにやばいと思っていた。中学とは違い「単位制」本当にまずかった。けれど、そんなことになっている中、クラスに親しい友人ができたのは一年生の後半からだった。その子に支えられて私は学校に行くようになった。本当に感謝している。学校に行くようになってから同じ趣味を持つ人たちと活発に交流した。友達がたくさんできた。進歩だった。

 だけど、今になって大変な事態になっている。高校三年生になって九月。専門学校に進学予定の私は残すは学費の面接だけ。九月に入り、悲劇は起きた。



「やめて、こんな悪夢を見せないで……!!」



 ―――空想


 夢の中はとても心地が良かった。

夢の中の住人は私をよくしてくれた。楽しかった。嬉しかった。何もかもを分かってくれた。それはまるで、絵にかいたような幸せな物語だった。

私と親しい友人もいた。高校生になって仲のいい子もたくさん。たくさん出演してくれた。嬉しかった。現実なんていらないって思うくらいに。

 この夢は……空想は、中学時代から続いている私の裏舞台。二年生の後半からは全く見なくなったけれど、誰も台無しにしになんてしない。完璧な舞台。人は移り変わるけれど、それ以外は何も変わらない。楽しくて愛おしい舞台で、欠陥なんてないはずだった。でもそれは、現実の世界と並行して悲劇は起きた。最近見なかったはずの舞台は透明な背景とともに舞台化した。数日の話。


「ねぇ、夢美。ここは楽しい?」

「え?……うん!すっごく楽しいに決まってる!!友莉だっているし!何しろ、私を悪く言うクラスの人たちは懲らしめられるしね!」

「それは、本当に?これは、夢なんだよ。ここに閉じこもってていいの?」

「何言ってるの?私は閉じこもってるわけじゃないよ?」

「嘘ばっかり言わないでよ、閉じこもってる。現実世界でやってることと、ここでやってること、言ってることは全くの別物なんだよ!」


 友莉が何を言っているか、私にはわからなかった。

別に、いいでしょ?私の夢なんだから、現実でできない事をたくさんしたって誰も文句なんて言わないはずなのに、なんでそんなことをいうの。おかしい、おかしいよ。絶対におかしい。

 透明だった背景は黒く染まっていく。私の感情が荒れているからだ。けれどそんなの関係ない。だって……"私の舞台"なんだから。


「夢美、あんたさ。ここでやってること、正直に面と向かってほかの人たちに言えるの?言えないでしょ!透かしだけ考えて!あんたのいる場所はここじゃないの!わかる?戻るべき場所があるの!偽りの私じゃなくて、現実にちゃんとした私がいるんだから!正真正銘の私に相談して!ある程度は相談してるのかもしれないけど、あんたは隠し事ばっかで、私、そういうのが一番いやだって、変に気を使われるのがいやだって言ったよね!!私が今ここでいうってことは、あんたは現実で言われたこと、気にしてるってことなんだよ!わかる?!」


「なんで!なんでそうやって私を悩ませるようなことばかり言うの?!私は私なりに頑張ってるの!!先生たちだって認めてくれてるのはわかってる!!周り仲のいい子も心配してくれてるって!わかってる!でも、この心の傷の深さはどうしても治せないの!でも、強がらないと……不安なことだって、泣きたいことだってあるのに。けどそんなところ見せたくない。これ以上、心配かけたくない。強がりな言葉並べてないと……また……また私、おかしくなっちゃうから……」


 本心だった。空想の中の友莉が言ったことは、私に対して怒っている現実の友莉とそっくりだった。夢に縋り付いていた。そうだ、それじゃなきゃこんな世界なんて見ないんだから。友莉は呆れたように私を見て笑っていた。この笑みを私は知っている何度も目にしている笑みだ。ここで変えなきゃ私は一生自分に嘘をつき続けてやがては、消えてしまうかもしれない。そんなのは絶対に嫌だ。


「私は、ちゃんと現実と向き合う。この世界を見なくなったときに決めたはずだったのにね。今回は本当。しっかりと前見て生きなきゃ。約束、だもんね。」


 その言葉にどこからか聞こえてくる拍手喝采。それと同時にバリンッと盛大な音を立てて割れるいつの間にか透明に戻っていた背景は、四角い透明な硝子の箱が割られたようだった。



 ―――現実


 スマホからのアラームが耳元で爆音でなっている。その音で目を覚ます。また朝が来た。これからも幾度となく繰り返す朝が。私はスマホを手に取り下の階に降りる。制服を着て髪をセットしていつも通り、学校に行く。

 窮屈な教室という名の箱。生きづらいクラス。それでも私は夢で決心したことを胸にとどめて今日も一日、学校で過ごす。


「おはよう!」

「おー、夢美。おはよう」

「今日さ、夢で友莉に説教される夢見ちゃったよー」

「なにそれ、どんな夢見てるのさ」

「わかんない、けどね。その夢のおかげで、夢の中の友莉のおかげで。この一件、乗り越えられそうだよ」

「なら、いいじゃん。……学校、休むなよ?」

「わかってるって!絶対に、不登校になんてもうなったりしないから!」

「いい意気込みだこと」

「あったりまえでしょ!」


 悲劇というのは、仲が良かった子に送ったものが原因だった。絶対に他人に見せないという約束で送った動画。その子しか持っていないものがほかの子にも流出していたという事件。馬鹿にされた挙句にそれはエスカレートし、クラス中に出回ったというわけで。先生にも見せようとしたという証言も聞いている。その子もその話の輪に混ざって笑って過ごしている。これはたった三日の出来事。ここまで長く書いといてそのくらいの日数しかたっていないの?と思うかもしれない。今、書いている最中にもその事件は続いている。


 そう、これはリアルタイムで起きていることを私が綴っただけの物語。


 裏切りは決して許されることではない。なんて思わないけど、少なくとも傷つく人がいるっていうことを分かってほしい。もし、あなたが悩んでいたり苦しいことがあるのなら、一人で抱え込まないで信頼できる友人に相談してみるといい。きっとあなたのことを分かってくれるはずだから。アドバイスをしてくれたり支えてくれるはずだから。何も怖がることはない。自分に自信を持って堂々とやりたいことをやって生きるべきだと私は思う。

 青春に限らず、時間はこの一瞬は今しかないのだから。精一杯がむしゃらに走り続ければ悪いこと続きな時期があってもきっと、転機が訪れるはず。

 人は変われる。信じてください。自分に言い聞かせるもよし、人からたくさんの笑顔ややる気をもらうもよし。変わり方はいろいろです。私は、良き友人が数人でも出来て一緒にいるのが楽しい、学校に行けば嫌なことを言われてもその人に会える。少しの楽しみや希望を持つことができたから、今ここに綴ることができている私がいます。

 少しでも楽しいことや、希望が見えたとき、それはあなたの変わる第一歩だと信じてください。悪いことが起きてもきっと乗り越えていけるはず。





―――貴方の人生を、あなただけの今の一瞬を大事に大切に生き抜いてください。



―――それが、私の伝えたいことです。

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現実の世界と空想の中の私 泡沫りら @utakata1423

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