3章
27話Magic/魔法の確認だ
セシリーの護衛任務から2週間ほどが経ち、暑さが和らいで来たある日の事であった。
俺とアンナの2人は、複数の積み木を持って市壁の外に出るとソレを一直線に並べっていき、少し離れた場所に立っていた。
☆封印されていた能力が開放され習得しました。
◯[魔法操作能力]が向上しました。
解放条件は、自分の手で[浄化]を10人行う事。
☆既存の魔法からひらめき習得しました。
◯[アクアバルカン]小さな水の弾を発射します。貫通力が高いのが強みです。可愛らしく[アクアバルカン]と口に出して言って下さい。
☆既存の魔法からひらめき習得しました。
◯[ファイアキュート]猫や犬と言った可愛らしい形をした火の玉を発生させます。可愛らしく[ファイアキュート]と口に出して言って下さい。
☆既存の魔法からひらめき習得しました。
◯[コーンサンダー]ワンドの先から電撃を放ちます。ユニ・サンダーと比べると威力は劣りますが発動までの時間は短いです。可愛らしく[コーンサンダー]と口に出して言って下さい。
これらは先日、解放されアンナからテレパシーを使って送られて来た情報だ。
一々可愛らしく、とつけているのが気になるが、概ね全てプチファイア、アクアバズーカ、ユニサンダーをベースに新たに使用可能となった魔法である。
『よし、アンナ! 早速始めよう』
「はい、変身です!」
彼女は光に包まれると、魔法少女の衣装となりワンドの先を積み木に向けた。
「アクアバルカン!」
小さい水の弾が連続してワンドの先から発射され、幾つかの積み木を貫通していく。
これはアクアバズーカから威力を削ぎ落とし、連射性と貫通力をあげたような感じの魔法だ。だが、命中精度が非常に荒く反動か操作によるものか分からないが玉がバラけあらゆる場所に飛んでいき、半数以上は積み木に当たっていない。一応これでも、大分マシになった方である。
牽制としては非常に優秀で、壁を貫通するのも高評価だが以前として町中では使い辛い難点も抱えている。
『よし、次行ってみようか』
「はーい。ファイアキュート!」
彼女の
えい。という掛け声と共にそれは射出され、積み木に命中と弾きパチパチと燃やし始める。
これはプチファイアの上位互換と言っても差し支えないだろう。だが、威力は低く、ぱっと見は使い所は難しい魔法に見える。だが、最大の利点はこの魔法は"ワンド"を使用しない点に尽きる。
これまでの戦闘ではワンドはアンナの手から離れた事はなかったが、これからの戦闘では奪われたり、破壊される場面があるかもしれない。
変身し直せば治せるが、変身するだけでも魔力は消費するようで更に隙も生まれる。そうなるとこの魔法の出番となるわけだ。更に発射タイミングを任意で調整する事も出来る。という事は、連続攻撃の起点にも出来そうであり、俺はかなり期待している。
水をかけ燃える積み木の火を消し積み木から離れた。
『よしよし、じゃぁ最後頼む』
「はい! コーンサンダー!」
ワンドの先から雷が瞬時に発生し、積み木の1つに当たると弾き飛ばしていた。
ユニサンダーの初動をなくし、ワンドから放出する変わりに攻撃速度に特化した魔法だ。変わりに威力が酷く落ちており、その点では期待はできない。
素早い敵や、緊急を要するような場面で真価を発揮してくれるだろう。更に、ユニサンダー、ファイアキュートと組み合わせ多角的で連続した攻撃も可能となる。問題はアンナが使いこなせるかどうかだが、俺が指示をその都度出したり、連携を予め決めておけば多少はこの点は克服出来る。
と言うか、雷属性の魔法でユニときてコーンと来ている。ならば次はユニコーンか、この野郎。
それから3種の魔法の練習を1時間ほどしていた。
『お疲れ様。いい感じに精度が上がってきてるな』
『えへへ~、多少は強くなれましたかね?』
『そりゃ、使える魔法増えてるし戦闘にも慣れてきてるから強くはなってると思う。ただ、新しい事って無理してでも使おうとして、やろうとして逆に弱くなるってことがあるから、無理には使わない事。魔法増えたのに戦闘が単調になるんじゃ意味ないからなー』
俺は積み木を回収しながら答えた。
対人ゲームではあるが似た事はこれでもか、というぐらいにこの手の事は経験している。此方では命の危険がある可能性があるため更に用心しておいて損はないだろう。
『はーい。分かりましたー』
積み木を全て袋に入れると、持ってアンナの元に飛んで行く。
『まぁ、使いやすい魔法が増えたのは良いことだ。後は連携だけど、エミリアなら即興で合わせて来そうだよなー』
『ですねー。じゃぁ、私とユニーちゃんの連携の特訓ですかね?』
『それもなぁ。連携すんなら変体してる時だろうけど、3分って短さがネックだし練習自体取れないからな。通常時はこれまで通り指示出しが主だし』
『再使用に時間がかかるんでしたね。失念していました。ユニーちゃんも連携する場合は即興になる形ですね』
変身を解いてピクニックシートを広げて待っていたアンナの元に十分に近づき、テレパシーをきって口を動かす。
「おう。多分だけど、多少の攻撃は当てても平気だろうから気楽にやってくれていい」
更に近づくと、彼女はピクニックバスケットから美味しそうな昼食を広げている様子が目に入る。
何時もながら用意がとても良いことで。
「はーい。でも当てないように努力はしますね」
積み木を置き彼女の前に座ると2人で、いただきます。と言って昼食を食べ始める。
「とりあえず、目標としては変体してない俺とアンナの2人でエミリアと渡り合えるぐらいになろう」
「んぐ。了解でーす」
「おぉ、まじで卵焼きがある」
串で卵焼きを刺して持ち上げつつ感動の声をあげる。
実は一ヶ月近く前にアンナに何か故郷の料理のレシピ知っていないか。と聞かれ、教えたのが卵焼きであった。
「やっと形になったんですー。味はちょっと心配ですけど、食べて見て下さい。不味くはないはずです」
火加減が難しいとよく言われるが、この世界ではカセットコンロなどという文明の利器は当然ない。
故に難易度が跳ね上がっており、元々の丸める際の破れやすさも相まって相当難航したであろう事は掛かった期間と彼女の腕を考えれば容易く想像できた。今になって思うと、とんでもないモノを要求していた気がする。
一口食べてみると懐かしい味がし、とても美味しい物であった。
「いや、うまいよこれ」
「良かったです」
嬉しそうに彼女は笑ってみせた。
「でも、味が違ったりしません?」
元の世界では化学調味料を使って作っていた。そのため、違うと言えば違うがこの世界で入手可能かと言われると不可能である。
「いや、問題ないよ」
そう言ってもう1つ卵焼きを食べた。
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