番外編2/男達の賛美歌(後編)
『来ないわねぇ』
行っていない所に行きたい。ということで昨日行ってない所を回り始め、お昼を挟みはや3時間。誰1人として行動に移していなかった。
「にゃ~♪」
セシリーと一緒に猫と戯れるアンナの姿に癒されつつ、周囲を見渡す。
『油断はするなよ』
『分かってます。にゃ~』
魔法少女の姿にしたのは、彼らの要望に答えつつ2人の戦闘能力をあげるためであった。
奴らは事情を知らない。そのためホイホイとやって来る。後は適当に倒してしまえばいい。
名づけて、馬鹿共ホイホイ大作戦!
すると、遠くからケイジが歩いてくるのが視界に入り、2人に一応警戒するようテレパシーを送る。
自然かつ"裏切ってない"風に見せるため、アンナにジュースを買おうと誘い出し、ツバキとエミリアに護衛を任せ2人で店の方に向かう。
『なんか、緊張しますね』
そう言ってスカートを抑える。
『昨日も言ったけど、ケイジは多分大丈夫だ。だから、極力手加減してやって欲しい』
露天の前に到着すると、適当に果物のジュースを頼んでいく。
ケイジが近づき、アンナは少しだけ身構える。と、深呼吸をして彼は頭を下げた。
「ごめんなさいっす」
「……へ?」
「とりあえず、向こうからは頼んでる風には見えるはずっす。適当に断ったふりして倒して欲しいっす。あー、ユニーさん説明を……」
お前、まさか!?
「あ、えっと。とりあえず、めくる気がないのでしたらジュース運ぶの手伝ってもらっていいです? 話はそれからで」
アンナにそう言われ頭をあげた彼は、びっくりした表情をしていた。
「い、いいっすよー」
「あ、おっちゃんもう1つ頼むー」
信じてたぜ、ケイジ!!
◇
「同志ケイジやはり裏切ったぬぁぁぁぁああああああああ!!!」
頭を下げたかと思ったら、スカートをめくらずに仲良くジュースを運んでいる様子を見ながらジェームズは叫んでいた。
「だがこれで、我々の情報は確実に向こうに渡る。そして、同志ユニーは良い仕事をしているおかげで、情報が渡る事により効果を発する2つの策が発揮出来き最高の状態になった。ロイヤルなお方の振り回しっぷりが発揮されては居ないが、予想の
不気味な笑い声が路地に響き、通りすがった夫婦が不審そうな表情を浮かべながらかけて逃げていった。
◇
「なるほど、ユニーさん裏切ってたんっすね」
「ああ、だから準備して待ち受けてる形だなー」
テレパシーでエミリアには事情は話している。残り2人にはたまたま会って手伝って貰った。と言う事にしておいた。
そして、話があるからと俺とケイジは、皆と少し離れた場所で裏切り者による密会をしていた。
「じゃぁ、気をつけた方がいいっすよ。なんかジェームズさん更に悪巧みしてるみたいっすから」
「まじか。分かった。気になったんだがなんで裏切ったんだ?」
「単純っすよ。好きな人がいるんで悪評はより一層避けたいってだけっす。モラル的にもどうなんだって話でもあるっすからね。ユニーさんは?」
「ジェームズぶっ飛ばしたい」
そう言うと彼はお腹を抱えて笑い出した。
「くくく、ぶっ飛ばしたいって。お二方のためじゃなかったんっすね」
そう言われ少し考える。
ぶっ飛ばしたい。という気持ちで取り敢えず裏切ったが、この感情がなかった場合、俺はどう行動していただろうか。
結論はわかりきっていた。
「んー、それもあるな。結局の所、どうあがいても賛同はしてないと思う。こんな体だけど、俺もれっきとした男ではある。が、臆病なうえムッツリ君だからな。性に合わん」
濁しつつ答えた。
言った事も理由1つではあるが、実際の所は単純にあの2人に嫌われたくないだけだ。
「なら安心したっす。さて、男の友情を台無しにした者同士、これからもよろしくっす」
「おう。さて、向こうに」
目線をくつろいでいる彼女ら向けると、背後から接近するアフロ君の姿が眼光に映る。
『エミリア!!』
『大丈夫、分かってる』
テレパシーを送ると、ツバキにジュースを差し出した。
「ごめん、ちょっと持ってて」
振り返り、アタックと呟き指を弾くと彼に向かって低く跳ぶ。
「ナイフクリフト」
ウィンドカッターは彼の足に命中し、体勢を崩して前のめりに倒れ始める。
そして、狂気の笑みを浮かべ接近したエミリアは生成した短剣を振るい、ソレは首を捉え振りぬかれる。
「はい、残念」
アフロ君はそのまま倒れ、気絶した。
『エミリア!』
『ふふーん、ざっとこんなもんよ』
得意気に言うが、そんな場合ではなかった。
『ちげぇ! 向こう見ろ向こう!!』
彼女が目線を送ると、そこには馬に乗り近づく2人の男の姿があった。
『あー、何かうるさいなーって思ったら、向こうも漏れるのっ』
それぞれ体を倒しスカートに向けて手を伸ばすが、彼女は悠々と避けていた。
急停止し向きを変えると再び同じようにエミリアを襲う。
『前提で動いてたみたいね。こいつらはなんとかするわ』
頼む。と送り俺はアンナの方に向かって飛んで行く。
馬使ってスカートめくりというか、スカート奪い去る勢いじゃねぇか!!
昨日の話にはこの計画はなかった。つまりケイジの言う"悪巧み"なのだろう。そして、今だ首謀者の姿は見えていないのも気になる。
『ふえぇ、状況説明どうしましょう~』
と、テレパシーを送ったアンナは状況がいまいち飲み込めていないツバキと、魔法を見た事により興味津々に問いかけ始めるセシリーに挟まれ戸惑っていた。
『待ってろ、俺が説明を──』
ふと、3人の元にローブを着て、フードを被った大柄の男性が近づいているのが見えた。
ぱっと見ではあるが、ジェームズと体格が親しい気がし焦る。
「後ろだー!!!」
俺は叫び、それにツバキが真っ先に反応し送れてアンナが反応する。
「っちぃ!」
男は走り始め、かぶっていたフードがめくれ顔を確認する事が出来た。
あんの野郎だ! ジェームズだ!!!
近づいてきたのが、襲撃者だと考えていたツバキは知り合いの顔が見え、事情も
これで奴の目標は……。
俺の考えとは裏腹に、彼の口元が微かに笑っているのが見える。
何故笑っているんだ? と思いあいつの言動と現在の状況を踏まえて考える。
まさか、ロイヤルな下着を見たい。目標は分けるべきだ。お嬢様を狙う。という旨の発言をしているが、これがもし"セシリーだけ"を狙っているという先入観を持たせるためだとしたら?
だとしたら、まずい!
「アンナ、スカートを──」
奴の魔の手がアンナのスカートに後、数センチという所まで迫った時ツバキの回し蹴りがジェームズの顔面にヒットしめくる直前で蹴り飛ばされてしまう。
同時に彼女が持っていたジュースが地面へと落下していた。
「押さ……ツバキナーイス!」
彼女は俺の方向にピースサインを送った。
「ジェームズさん。よく状況が分からないけど」
立ち上がろうとする彼の元にゆっくりと歩いて近づいていく。
「私の、完璧となった作戦が看破される、とは……!」
「とりあえず、気絶して」
振り下ろされた
その事には、騎兵として襲っていた連中も倒され事態は収束していた。
2人にも事情を説明し、魔法に関する事全てをエミリアに丸投げして後処理に入った。
ツバキには説明した際、水臭いよ。と言われてしまった。
「ユニーちゃん、最後ってなんで私がスカートを?」
俺はゆっくりと説明に入る。
恐らく、ジェームズの作戦はアフロ君を捨て石にし、更に騎兵を使って注意を引き自分はローブを着て背後から接近。誰でもいいからスカートをめくって逃げる。という形だったのだろう。
騎兵隊も成功し、拝めるならば御の字という程度だったと考えられる。
そして、セシリーを狙っているという先入観をもたせている事から、どちらかが護衛につくであろう2人の警戒心が薄れるのを狙ったと推測される。現にこうして薄れる所か対象から外してしまっていた。
これは情報が漏れている前提でないと効果を発揮しないが、ケイジが裏切った際に漏れたと判断し、此方に変えたと思われる。
状況を説明していなかったツバキが騎兵側に行かず、状況説明を求めた事から対応され失敗しており、思わぬ所で歯車が狂ったと言えよう。
「なるほどー。って馬鹿らしい事なのに入念に準備してますね」
「だなー。俺もすごいびっくりしてる」
これが、こういう事やらない奴だったら、すごい頼りがいのある奴だったんだろうけどな。惜しい。
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