11話Beginner/任務だ!
2階の掃除はまだ。と言う事で昨夜は居間で寝て、起きると既に起きてエプロンをつけたアンナが朝食の準備を終えていた。
主婦。と言う言葉が出てくる程度には家事ができるな。
魔法少女にしてよかった。と、しみじみと感じた。
朝食を取り、今日の所は任務は受けず先に各部屋の掃除や周辺の準備をすべき。と話が纏まり3人で部屋の掃除をする事となった。
掃除を適当にしながら、変体を試すがまだ発動する事は出来なかった。
これで2日と半日は出来ないってことか。
予想以上に再使用までの時間が長い。本格的に使い所が重要となってくるが……。
コンコンとノックをする音がし、ドアが開くとアンナが入って来た。
「ユニーちゃん、掃除終わりました~?」
「まだだ……って、もう終わったのか!?」
「はい。2部屋終わらせましたよ」
この体とは言え、俺はまだ1部屋の半分も掃除出来ていない。これ、アンナ1人に任せた方が早かったのでは? と邪心してしまう程に早い。
それからは2人で俺の部屋の掃除をし昼食を取った後、昨日買えなかった家財道具等一式を買い一定の水準を満たす環境にし終えた所で日が落ちていた。
お金はエミリアに全て出してもらっているのと、雇っているという間柄であるため今後は報酬の約6割を彼女に渡す。ということで話が纏まった。
残りの配分は食費や消耗品等の費用があるため約3割がアンナ。残りの1割が俺だ。
この体だし、衣類はほぼ必要ない。娯楽もPCや携帯ゲームと言った物はないし、風俗も行くだけ無駄。あるとしたら外食や非常時に必要な時があるかも程度と考えていた。
そして、翌日。
やっと傭兵としての生活をスタート出来る。
なお、朝変体をしようとしたが不発に終わり最低でも3日と半日は行えない事が分かった。
ギルドに向かい、掲示板を眺める。
張られている任務内容は様々で、活植族の討伐依頼、ひったくりの確保、護衛任務等々。
今回は初回と言う事でエミリアに任せると言う形にしているため、俺達は掲示板をただ眺めて待っているだけであった。
今更だけど、言語も文字も理解出来るのね。
初っ端から色々あり疑問に思う暇もなかったが、見たことのない文字を読め恐らくは日本語ではない言語を聞き取れ理解出来ている。
この体になったおかげなのか、転生による効果なのかは分からないが意思疎通するのに不自由ないのは助かる。
そして、1つ気になる事がある。周囲の視線だ。
俺もだが、2人も可愛いせいか視線を集める事がしばしばある。
コレばっかりは慣れる他ないのだろうが、やはり気になる点だ。
「受けてきたわよー」
エミリアがそう言いながら歩いてくる。
「いいのあったか?」
「最初にうってつけなのはね」
俺達は外に出て、任務の内容を聞く。
受けた任務の数は3つあり、まずは猫探しだ。
最初はこんなもんだろう。と思っていたら問題は次からだ。
2つ目は落し物の捜索。
こんなもの、自分で探すか憲兵とかに頼めよ。
などと心の中で突っ込みを入れていると、最後に至っては今晩のご飯の買い物代行である。
自分でいけよ! 子供のお使いじゃないんだよ!
「……こんなんばっかなのか?」
俺は顔が引きつり、そう質問していた。
「ばっかりって分けじゃないし、内容って町事でも変わるから断言しづらいけど、比較的どこでもあるような内容ね。最後のは流石に珍しいけど」
そう言って彼女は苦笑する。
何はともあれ、受けた任務は仕事だ。あのような内容だろうが、れっきとした仕事だ。完遂するしかない。
流れとしては、まず落し物の捜索をしつつ猫を時間まで探す。時間が来たら買い物に出て、猫や落し物が見つからずともギルドに報告し本日は終了。
また明日に回す。と言う形だ。
落したという場所に向かいながら俺は情報の1つを開く。
★新規の情報が開示されました。
◯初期能力または魔法は2つ、封印された能力または魔法は3つございます。開放には条件がございますが、伏せられておりますのでご自分で探して開放して下さい。開放時に条件が開示されます。
どうやらあと2つ能力か魔法が封印されているらしい。
この2つは使いやすいのであって欲しいが、解放条件が分からない以上何時解放出来るか分からない。故にアテにすることは出来ない。
プロテクトと変体の使い方次第か……。
「ねぇ、魔法使ってみてよ」
エミリアが急にそんな事を言ってきた。
「
「いやね。脱出の現場は見てたんだけどさ。遠目でよく見えてないし、古城でアナタ達の戦闘は見れてないから具体的にどんな感じなのかなって、今更気になってさ」
俺はアンナに目線を送り、考えをまとめ目線を戻し返答する。
「俺のはわかりづらいし、アンナは派手なのは戦闘向きで今此処で見せれるのはしょぼいのだけだぞ」
「いい。しょぼくてもいいからさ」
数瞬の間を置き、俺はテレパシーを送る。
『すまんがアンナ。あぁ言ってるし変身してプチファイアでも適当にみせてあげてくれるか?』
『はい。分かりました』
人気のない路地へと入り周囲に人が居ないことを入念に確認する。
「変身です!」
アンナがそう言うと、光に包まれ服装が青くフリフリの魔法少女の衣装へと変わり手にはワンドが出現していた。
「おー、しょぼいって言ってるけどちゃんと目に見えてわかりやすい魔法あるじゃないの」
「え?」
ただ変身しただけだけど? と、思ったが彼女からしたらコレもれっきとした魔法なのだと認識する。
アンナは無視して、おっほんと咳払いをすると人差し指を立てた。
「プチファイア」
シュボッと言う音と共に、人差し指から例の小さな火が出現する。
それを見たエミリアは納得したようにあー、と声を漏らす。
「確かにこれは地味ね。でも便利でしょ。火打ち石とか使わなくていいし」
小さく頷くと変身を解除する。
「ありがと。じゃ改めて向かうわよ」
5分ほど歩いた所で目的の場所についた。
「この辺りか?」
着いた場所は空き地であり、雑草が生い茂っていた。
「そ。探すわよ」
手分けして草をかき分けながら探すこと10分弱。
依頼の落し物と思しきイヤリングを発見した。
やはり、これ自分で探した方が早かったのでは……?
「まぁ任務完了か」
「後は猫探しね」
エミリアは背伸びをしつつ答える。
「同じ猫として、何処に行くかとか分からないか?」
「もしかしてだけど、喧嘩売ってる?」
笑顔なのに低いトーンで発し首を傾げる。
その様子に俺は恐怖を感じた。
「じょ、冗談デス……」
「そういうの笑えないからやめてね」
彼女の酷くドスの効いた声だった。
それからの猫探し方はというと、難航しタイムリミット間近になっても捕まえる事は疎か、ソレらしき猫すら見つけられなかった。
「明日かなこりゃー」
小川に掛かっている橋の
「普通は数日かかるもんだし仕方ないわよっと」
エミリアはそう答えると、橋の下から跳び上がりアーチ石に手をかけ、体を振り子のようにしならせ更に飛びがり体を捻らせ欄干の上に着地し橋の上に降りる。
想像を超える身軽さに俺は見とれていた。
「すごいな」
「コレぐらい、なんてことないわよ。アンナは?」
よく考えれば古城の1階の窓から2階に跳び上がったのだから、これくらいは出てきて当然なのか。
俺はとある場所を指さし、彼女はその先に目を向ける。
すると、複数の猫をあやしているアンナの姿があった。
「にゃーにゃー。にゃー? にゃー!」
「よくもまぁ、あれだけ集められるものわね」
「一種の才能なんだろうなー。何か俺も近くに居ると落ち着く気がするし」
「思い込みじゃないの?」
エミリアはからかうようにそう言うと何かを見つけ、一瞬動きが止まる。
「思い込みとは失敬な。なんというか、何かがあるんだよ。何かが!」
自分でも一体何を言っているのかわからなくなっていると、1枚の2つに折られた紙を手渡される。
開くと、中には買い物リストが書かれていた。
「おい、これって──」
「確かに一種の才能かもね。ちょっと追っ駆けっこしてくる。ギルドで待って頂戴」
言葉を遮るようにそう言うと、ジャンプし欄干の上に経つと更に跳びアンナがいる岸側に着地し、1匹の猫に目を向ける 。
集まっている集団とは少し遠い位置に、黒く頭にはてなマークのような模様がある猫がいた。遠目で俺は確信は持てなかったが、恐らく依頼の子だ。
アンナの回りに集まっている猫に惹かれて来たのだろう。
彼女が着地した時、猫たちがびっくりし走って周囲に散らばり始め、同時にその猫も走り去ろうとする。
「逃すか!」
が、完全に捉えていたエミリアはその後を追い始め、地面を蹴りジャンプすると塀を経由して民家の屋根に着地し走り去っていく。
「まじかー……」
俺はその光景を見て声を漏らしていた。
次にアンナに目線を向けると、突然逃げられたのがショックだったのかしゃがみ猫を触っているような状態のまま固まっていた。
「アンナー、買い物の任務行こう」
「っは、はーい!」
我に戻り、返事を返すと立ち上がり駆け寄ってきた。
「びっくりしましたよー」
任務と平行して今晩の買い物を手早く済ませ、ギルドに戻ると落し物と一緒に完了報告をする。
落し物の方は本人確認を挟むため少し時間がかかると言われ、エミリアを待つついでにギルドの内で時間を潰す事にした。
と、言ってもやることがなく、アンナはイスに腰掛け俺はテーブルに仰向けで寝そべりボーッとしているだけであった。
「遅いですね」
「だな。エミリア遅いなー」
「いえ、本人確認のほうです」
「あー、そっちも遅いなー」
天井を眺め空返事をしていた。
程なくして、本人確認が終わったと言われ報酬が手渡される。
「どうします? 待ちますか?」
「先帰っててもいいぞ。夕飯の準備もあるし」
「では、先に戻らせてもらいますー」
そう言ってアンナが立ち上がると同時に、ドアが開き泥だらけのエミリアがふてくされている猫を抱えて入って来た。
周囲を見渡し、俺達を見つけると歩いてきて自慢気にこういった。
「流石に手こずった」
「おう、お疲れ様」
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