二日目 後半 復旧は突然に。
昼、周辺住民から不満の声が上がる。
手洗いが流れず、困っているという。
水道業者が来て、かろうじて水は復旧した。
だが、問題は電気だ。
聞けば、隣の団地には、酸素吸入器が必要な老人も住んでいるという。
現状は大丈夫らしいが、長引けば心配だ。
暇を持て余したオレは、電池とポケットラジオ、明日の朝食を買う。
帰宅しても、まだ電力会社は来ていない。
夕方、歯医者に行く。
中学生が、誰かに言われるでもなく、団地の駐輪場を清掃していた。
しっかりしているなぁ、と思った。
駅までの道のりを、再度自転車で駆け抜ける。
先ほどまでゴミの山だった道が、半日もしないうちに清掃されていた。
やはり日本はすごいなと感心する。
図書館から連絡がきたので、まずはそちらへ向かう。
歩道橋の下では、交差点を警備員が誘導していた。
信号が消えている。
歯医者に到着した直後、親から電話が。
「ドライアイスを買ってきて欲しい」
まだなのか。
先ほどの歩道橋を思い出す。
今度こそ、もうダメだと思った。
インフラが麻痺しているのだ。
うちのような新興住宅は、後回しにされるのではないか。
一時間半が経過。
治療を終え、スマホを見ると、親から着信が。
不在着信だったので、かけ直す。
「復旧した」
電力が戻ったのだ。
帰宅したら、団地に灯りがついていた。
ようやく日常が戻ってきたと、確信。
家に帰り、さっそく冷房をかけて、入浴する。
あれだけ寝苦しかった夜が、嘘のようだ。
昨日は、懐中電灯で天井を照らしながら、カレーうどんを口に入れた。
今日は、明るい食卓で白米を噛みしめる。
飯が炊けているだけで、生を実感した。
現在、復活したPCを使って、これを執筆している。
これを書きながら、ふと思う。
うちは大丈夫になったが、まだ復旧していない街もあるだろう。
我々は、まだ幸いな方だ。
近所に限っては、死者もケガ人も、今のところ出ていない。
一刻も早く、日常が戻ることを願う。
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