息子に残せる一つの物は何だ


 その夜、アイオワシティ全体に雨と雷が降り注いでいた。雷が一回落ちるたびにトビーの寝室が真っ白な光に包まれ、雨は容赦無く窓を叩きつけていた。トビーは何度も寝返りをうったりして、雨と雷の音を聞き、天井のシミの一点を見つめていた。


トビーの頭の中では一つの質問が浮かんでいた。


「自分がこの世を去る前に、息子の為に何をするべきか」


切り札だった土地の売り払いに失敗して、トビーは金を手に入れられなかった。金はシモンの今後の教育費などで必要になってくるのに。だから今日の巨人のシルビスの事を考える度に悔しくなり枕をグーで叩き、ベッドのシーツを掴んでもがいていた。勿論シルビスと上手くいかなかったからといって、これでギブアップしたつもりではない。


それに。


一人の子供に残せるのは親の金だけじゃないはずだ。これから長年をかけてその時その時にあったような事を教えていく筈だったのに今のトビーには一年も時間がない。


息子に残せる一つの物は何だ。自分がこの世を去る一年以内に、息子の為に何をするべきなのか。


生きる意味を見つけたい。今こそ、その究極の答えを見つけなければいけないのだ。


トビーは唸り、また寝返りをうった。


雨が降る。この勢いだと朝まで止まらないだろう。

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