第8話 興味が湧いた。

夕食を食べ終えて宿に戻るなりベッドに寝転がる

「あー…腹いっぱい」

ゴロンと仰向けになり天井を見つめているとディベールに覗き込まれ驚き目を見開く

「……な、なに」

何か思うところがあるのかライトが着ている装備を見ると手をかけ脱がしにかかる

「は?え?な、なになに?」

「暴れるな」

襲われる!とライトの中で判断し焦り足や手を使って抵抗するが、胸当てのベルトを外され脱がされてしまう

「やっぱり、仲間のフリして俺を殺す気だったんだな!」

ライトはベッド脇に置いてある剣を手に取り防御するように構えるが、ディベールは胸当ての裏や表を触りながら呟く。

「これはもうダメだな」

その声にライトはキョトンとして瞬きをする。

「やはり安物の大量生産はダメだな。明日、新しいのを買いに行くぞ。装備はこだわった方がいい」

ディベールが顔をあげてライトを見ると剣を構えており首を傾げる

「どうした?」

「え?いや、装備もうダメなのか?」

「所々亀裂が入ってるからな。割れる前に変えた方がいい」

「…わかった」

焦った自分が恥ずかしくなり俯き加減で剣をベッド脇に置き直す。その様子をみてディベールは笑みを浮かべライトのベッドに腰を下ろす

「何だ?襲われると思ったのか?」

「……紛らわしいことするからだろ」

「それはすまない」

素直に謝ってくる魔王からは、魔王っぽい悪のイメージは見受けられず友人と話す人間ぽさが垣間見える。

「……魔王も謝るんだな」

「勇者にだけだ」

くすくす笑うディベールにライトは複雑な表情を浮かべつつ、半分起き上がっていた身体を起こして胡座をかいて座る

「あのさ…質問していい?」

「何だ?」

「魔王って、普段何してるもんなの?」

「普段か?そうだな…」

質問に腕組をして考える魔王をじっと見つつ、ライトは考えていた。

数日だが一緒に過ごす魔王様は、昔話によくでる残虐非道さは見受けられず想像していた魔王像とはかけ離れている。ライトが見てないところで何かをやっている様子もなさそうでライトは少し混乱していた。

「最近は勉強だな」

「え?勉強?」

「魔法の練習とか体術とか戦闘に関係する勉強だ」

ディベールの答えにライトはさらに混乱して両手で顔を覆いため息を吐く

「真面目かよ」

「ただの暇潰しだ」

勇者の目的は魔王を倒すこと。だが、目の前の魔王様は悪い事もとくにせず勉強をしているという。人間に害なす人物には到底思えず王の命令はなんだったのかと疑ってしまう。

「魔王っぽいことしないわけ?」

「魔王っぽいとは何だ?」

「人間を殺したりとか?戦争?」

「興味無い。人がどう死のうが、土地がどうとか私には関係ない」

言い切るディベールの表情は眉に皺を寄せ嫌悪してるかのように見えた。

「魔王っぽくないな…やっぱ偽物か」

「そうかもしれんな」

疑いの目をディベールに向けるが、ククッと小さく笑われてしまい上手くあしらわれてしまう。

やはり、この魔王からは敵意のようなものは感じず疑問しか残らない。

魔王の事をもう少し調べようと決めると、ライトはまたゴロンと寝転がり天井を見上げる。

「勇者はやめないのか?」

「え?何を?」

急に質問され頭の後ろで手を組み頭だけ少し起こしてディベールを見る

「“勇者”をだ。ここでやめても誰にも何も言われないだろう?」

ディベールに言われ強制ではない事を思い出す。魔王様を目の前にしてやめるとも言いにくい状況ではあったが、いつでも切り上げられる状態ではあった。

「んー、最初はやめたかったけどここ数日で興味が湧いたからさ」

「興味?」

「うん、もう少し魔王様と一緒にいたくなったんだよ」

「……そうか」

思いがけないライトの言葉にディベールは嬉しそうに笑うと、ベッドから腰を上げ隣のベッドに寝転がる。

「おやすみ、勇者」

「おやすみ」


純粋に興味が湧いた。このディベールという魔王に。

悪事を働かず、日々勉強に勤しみ勇者以外に興味を持たない変わった魔王。

どうゆう意図で勇者に仲間にしてくれと来たのか、何故弱点を教えるのか。

もう少し知りたいと思ってしまったからには、城に行くしかないと決意を固めたライトだった。

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僕と魔王のRPG ピコ @natume00

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