第6話 その前の勇者達は?

男が言っていた今月の勇者という事実について、隣の魔王様は知っていたのかどうか少し気になり軽く見上げて問いかける

「なぁ、さっきの勇者の話お前は知ってたのか?」

「毎月出るってやつか?あぁ、知っていたぞ」

「じゃあ俺以外にも声をかけたのか?」

「かけたのもいたが…だが、好みじゃなかったから選びはしなかった」

好みって何だよとライトは内心ツッコミを入れる。

「今まで勇者に選ばれた奴はどうなったんだ?」

「さぁな。私が見たわけではないが…先月のはさっきの盗賊に襲われた後すぐに元の生活に戻ったと町で噂になっていた 」

「そう、なんだ…」

「ここ、300年勇者は1度も城には来ていない。今までの勇者が死んでいるのか生きているのかは知らん」

毎月勇者が一人選ばれておきながら誰も魔王城には辿り着けてないのは、ただ単に魔王城がある土地レイヤールが遠いからなのか、それとも他に理由があるからなのかとライトは考える。

勇者に選ばれたけど旅などせずすぐに家に戻ったのか、モンスターにやられてしまったのか、訪れた街で住む事になったのか、いずれにしろ勇者という職業はここら辺では安売りされているということがわかった。

だからと言ってライトの旅が急に終われることもなく、隣には自称魔王様がいるので簡単に勇者をやめるとは言える雰囲気ではなかった。

歩いているうちに先程の戦闘の緊張が解けてきたのか腹の虫が騒ぎ出してくる。

「腹減ったな…」

「勇者、これを使え」

ディベールが服のポケットから小さな巾着袋3つを取り出してライトに渡す

「え?なにこれ?」

「さっきの盗賊から拝借した」

中にはそこそこのお金が入っており、いつ盗んだんだ?と驚きとともに感心してしまう

「迷惑料だと思ってもらっておけ」

「お前ってホント…」

「何だ?」

「いや、有難く使わせて貰おう。あと、助けてくれて有難うな」

先程、トドメを刺されそうになった自分を素早く助けてくれたディベールに少し照れたようにお礼を告げる

「礼などいい。当たり前の事をしたまでだ。早いとこ強くなれ勇者」

ディベールはくすぐったそうに笑うとライトの頭をクシャクシャと撫でる。

魔王様にとって自分を助ける事は当たり前のようで、そこはちょっと違和感がある。たとえ、本物だとしてもこの魔王様はライトがイメージしていた魔王とは違うようだった。

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