第4話 勇者と魔王、盗賊に絡まれる。
港町のレストイアに向かう道中、いきなり数人の男達に道を塞がれて2人の足は止まる。
「金と食料置いていけ」
そう告げたのは体格が大きく鍛え抜かれた筋肉が綺麗に見える皮装備をした男。背中には大きな斧を担いでおり、いかにも力が強そうに見える。
ライトとディベールはキョトンとした顔で男の顔をみていて、まだ状況にピンときてない様子。
「おい、聞いてんのか?金と食料だよ」
「だそうだ。あげられるものはあるのか?」
「え?」
急に隣のディベールから話を振られて
ライトは驚くが、とりあえず持っている財布を確認する。道中現れたモンスターを狩って得た少量の小銭と王様から貰ったお金の残りしか入っていない。今夜の宿代と食事代で全て無くなりそうな額だった。
「んー…今夜の宿代と食事代ぐらいしか入ってないからなぁ…食べ物は持ってないし」
「あげられる物は何もないそうだ。他をあたれ」
腕組みをして男に対してもどこか偉そうな態度で答えるディベール。物怖じしない態度は魔王ゆえか。
そんなディベールの態度に男はイラついたのか背中に担いでいた大きな斧を取り出しライトとディベールに向ける。
「ちげーよ。全部寄越せって言ってんだ。素直に渡さねーなら身ぐるみはぐぞコラ」
「ほう…力ずくか…」
男の言葉に楽しそうな表情を向けるディベールに、ライトは嫌な予感を覚えジャージの裾を引っ張る
「おい、あんまり挑発するなよ」
「先に挑発してきたのは向こうだろう?」
「何事も穏便にすませろって」
「勇者は難しい事を言うな」
二人でコソコソと話す様子に男の怒りはどんどん溜まっていく。痺れを切らし後ろで大人しく待機していた子分二人に攻撃しろと顎で指示をだす。
二人は剣を取り出しディベールとライトに向かってそれぞれ斬り掛かる。
攻撃に気が付いたディベールがライトを片手で突き飛ばし相手の攻撃を避ける。突き飛ばされたライトは驚くがすぐに体勢を立て直し腰についている剣を取り出し構える。
道中モンスターと大量に戦いすぐに剣を抜き構えるというのがやっと体に染み付いてきたのか少し様になってきている
「やはり穏便には無理そうだぞ」
ライトも薄々そんな気はしていたが話し合いで済むなら一番いいなと思っていた。盗賊相手にはやはり通じないようでライトは眉をひそめる。
「殺すなよ」
「何故だ」
「何でも!」
「難しい事を言うな…」
ライトの言葉にため息をつくと面倒くさそうな表情を浮かべ、剣を構える子分の男をじっと見つめる。
持っている剣はそれほど大きくなく重さは平均的に見える。装備は皮だが所々に鉄装備も混じっており防御力は斧を持った男より高そうだが、ライトから殺すなと言われてしまったのでどう加減するか悩んでいた。
「魔法では死んでしまいそうだな…」
子分の男は剣を振りディベールに斬り掛かるが、どう斬っても舞い散る葉のようにひらりひらりとかわしていく。
「雑な剣さばきだ。その武器お前に合ってないのではないか?」
「なんだと!」
ディベールの言葉に腹を立て大きく振りかぶり思い切り振り下ろす。わかりやすい太刀筋は、案の定ディベールには避けられ剣は地面の土を少しえぐる。
ディベールは片足で剣を踏み潰し腰に両手を当てて男を見据える。
「たかだか盗賊ごときが私に傷を付けられると思っていたのか?愚かな…」
「このっ…足っ!」
剣を押したり引いたりしてみるがビクともせず男がもがいているのをみてディベールはほくそ笑む。
「すまない、踏んでいたな」
足を上げると剣を引っ張っていた男の体勢が大きく崩れてよろけてしまう、そこへディベールの重い回し蹴りが男の顎へ直撃。
男はきりもみ回転しながらふっ飛ばされ斧をもった男の横を通り過ぎ地面に顔を擦り付けやっと静止する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます