第14話

【思春期14】


(俺は晴れてロリコンとなった)


普通に考えてここまで仲のいい兄妹、姉妹なんてそうはいないだろう。自分でもそう思う。

暑いからという理由で今は流れるプールとかいうやつでぷかぷか浮かんでスーパーボールみたいに流されてるだけだが、まだまだ遊びはここからよ!

でも、現状これ以上のことは出来ないだろう。人が多すぎる。……だが、この状態を打破しなければならない。具体的になにをしようか?

というか、プールで遊ぶってなんだろ?まず、泳ぐことくらいしかねえよなぁ……いや、男の俺にはまだやることがあるぞ。

「……すまん。お兄ちゃんはちょっと便所や」

我が妹にそう言うと蔑んだような目で見られたが、気にしてはならない。

一旦みんなから離れると一番高いであろうウォータースライダーからは少し離れるが、スタート位置が近くにある高台まで登る。

下を見やるとなんと!水着少女がいっぱい居るではありませんか!

室内プールなので日を気にする事はない。まあ、暑いけどそれは女の子の水着のせいだ!

神様に感謝し、ついでに我が妹に感謝しながらもたゆんたゆんを見たりぺったんたんを見たりして楽しんでいると、知った声が聞こえてきた。

「あれ?はーちゃん?」

その声を聞いた瞬間に、俺はめんどくさい事になることを確信した。

こいつはまずい。綾瀬とプールだってのに、こんなお荷物がやって来てしまったら大変なことになっちまう。

「ミサ?」

振り向くと、かぶりつきたくなるほどの白くプリプリとした白い肌から水が滴り、スラリと伸びた四肢と熟れたオレンジのようなビキニがよく映る。まだ身体は早熟って感じなのに生意気な。似合ってんじゃねえか。畜生!

「うんっ!久しぶりって訳でもないけどね!」

「お前、一人で来たの?」

「いや、友達と来たんだよ!じゃ、私はあれやってくるから!」

そう言ってウォータースライダーを指差して走って去っていった。

水着鑑賞はもう終わったような気がした。ミサの水着反則だぜ……

仕方なく俺は流れるプールに戻ると、何処にも我が妹らの姿は無かった。

「どこいったんだ?」

まあ、トイレと言ってから一時間近くが過ぎ、昼時になってるんだがな!

この時間に居なくなったならば飯だろうと、フードコートまで足を運ぶと空席がちらほらあるくらいに混んでいた。まあまあの客入りってところか。

辺りを見回すと、綾瀬が一人寂しそうにポツンと四人掛けの席に腰掛けていた。普通にしていても目を惹く。

その席まで行こうとすると、丁度綾瀬がチャラチャラした金髪の男三人組に話しかけられた。

見た感じ年上の高校生か大学生くらいだろうけど、誰だろう?知り合いか?

綾瀬はそいつらに愛想笑いを浮かべて何かを話している。でも、なにかおかしい。暫く見守ってるとニヤニヤしながら男の一人が綾瀬の腕を無理矢理に掴んだのだ。

「おい!」

勝手に足と口が動いていた。

「あ?」

「俺の連れになにしてんの?」

「……ちっ。彼氏持ちかよ。行こうぜ」

そう言って三人組は去っていった。まあ、荒事になるのはあちらも望んでいなかったみたいだ。

「……大丈夫か?」

「……え、えぇ。助かったわ。ありがとう」

「ごめんな。お前をもう悲しませないって言ったのに……もう少し早く行くべきだった」

「……え?なんの話?別にいいの……あ、だめ!許さないから!」

綾瀬は思い出したかのように許さない宣言をした。まあ、このくらいで罪が消えるなんて思ってないから別にいいさ。

「どこ行ってたの?一時間近く戻ってこなかったけど」

綾瀬の真正面の席に陣取ると腰を下ろす。

「あー。トイレ行ったあと探したんだけどさ?見つからなくて……」

「へぇ?私や妹組を見つけれなかったと?」

そんなのありえない。だって目立つのだもの。

「……う、うん」

「ふぅん」

綾瀬はそう言って頬杖をつき、ジト目を向けてくる。

「……ごめんなさい。ちょっとウォータースライダーの方に行ってました」

……降参だ。エンジェルに嘘なんてつけない。

「女の子3人を残して?」

「……はい」

「ウォータースライダーなんて子供騙しの小さいヤツよね?本当に乗ったの?」

「……い、いや乗ってはないです。上から鑑賞してたというかなんというか……」

「……はぁ。水着鑑賞?呑気なものね」

「……ごめんなさい」

「だめ。許さないから!」

いつもこうだ。許しては貰えない。まあ、今回に限っては俺悪くないと思うんだけど違いますか?いや、やっぱ俺が悪いのか……

「お姉ちゃんありがと!」

俺の知った声がそんなことを言った。

声のした方を見やると我が妹と綾瀬妹がハンバーガーやらの乗ったプレートを持って来た。

「いえ、いいのよ。じゃ、私も買ってくるから待ってて」

「はーい!あ、お姉ちゃん!ごみいもついでに連れてってあげてください!」

「俺はモノか?」

「いいからさっさといっておいでよ!……こんなチャンスないよ?」

我が妹が耳元でそう囁いた。……我が妹には叶わねえや。

「わーったよ。行くよ」

俺がそう言うと綾瀬はほっと胸を撫で下ろした。

それから綾瀬と一緒にご飯を買いにいく。

すると、下ろしたピンク髪を揺らしながら他の女子数名と楽しそうに話しているのが、俺の並んでいる列の先に見えた。

間違いない。紛れもなく奴だ。

絶対に見つかってはならない。ほぼ、いや、絶対にめんどくさいことになるに決まってる。

「綾瀬、トイレに行ってもいいか?」

「……別にいいわよ」

ここで取る行動は一つだ。俺が逃げれば問題は無い。

……いや。ダメだ。綾瀬にもし万が一の事があったらどうする!例え面倒なことになったとしても、ここを離れてはいけないじゃないか!

「……いや、飯買うまでは我慢するよ」

「……そう」

「綾瀬って……妹居たんだな」

「何よ今更」

「それもそうか……なに食べるの?」

「ハンバーガー」

「へえ……」

会話が弾む気がしない。なんでこうも緊張してしまうのだろう?今だって変な汗を背中に掻いてるし。

綾瀬とはまだ我が妹が居ないとまともに会話すらできない。というか直視すら出来ねえ!

なんだよあの日焼け跡。褐色プラス白い肌って何?属性二つもちとかズルくない?

「いらっしゃいませ!」

会話が全くもって盛り上がらないまま、いつの間にか店員の前に晒されていた。

適当に注文を済ますと、綾瀬の分も出してあげようと財布を出してみたが、最近母さんから貰った五百円しかなかった。

「ここは私が出すよ」

綾瀬はそう言って千円を出した。

「……いいのか?」

「さっきのお礼よ。借りは作りたくないの」

表情一つ崩さず、こちらには目もくれない。

「そっか」

まあ、借りだなんて思ってもないから別に返してもらう義理もないけど、綾瀬がそういうなら言葉に甘えよう。なんせ金が全くないからな!

「その……ありがとな」

そう言うと綾瀬は「別に」と、一言だけ言った。

やっぱり少し距離を感じる。でも、もう退かない。少し前よりはちょっと、ごく僅かだが近くなった気がするし、大丈夫。距離があるなら縮めればいい。簡単だ。……簡単なはずのその距離がなかなか縮まらない。いたちごっこをしてるみたいだ。

そして、注文が終わって出てくるまでの少しの時、ふと、無意識に目で追ってしまってたのかピンク髪の少女と目が合った。

「げっ……」

「どうしたの?」

はぁ。終わった。めんどくさいことになる。

もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ……

……でも、どうだろう?あいつはこっちに来なかった。確かに目が合った気がしたのだが、気のせいだったのか?

「……いや、なんでもない」

「そう?あ、出来たってよ。荷物持ち」

「扱い酷くない!?」


****


それから癒しの我が妹の待つ場所に戻ると、想像を絶する百合百合展開を迎えていた。

「はい。あーん」

「恥ずかしいよぉ……」

「いいじゃん!優衣ちゃん!どうせ誰も見てないよ」

「……で、でも」

「いーからいーから!」

そういうと、我が妹が差し出したポテト。それもむちゃくちゃ短いのを綾瀬妹が一口で食べた。多分、我が妹の指も一緒に舐めてるとは思う。これは……

ごくり。と、生唾を飲み込む。

なんだこのヘブンは……俺は本当にロリコンになっちまったってのか?

いやいや落ち着け。ここで俺のが大きくなれば世間的に終了するし、冷たい目が送られてくるのは目に見えてるだろ?とりあえずどうにか……

そんな時に横に目をやると綾瀬が居る。普通なんだけど、このタイミングで綾瀬を視界に入れたのは間違いだった。だって、目が勝手に下に行ってしまうのだもの。こんな豊満なものを魅せられたら男として興奮しないわけがない。

俺は悪くない。綾瀬のスタイルが悪い。ということで俺は晴れてロリコンではなかったということが証明された。だが、これは隠し通すしかねえ!

早く俺は前屈みになりつつもさっさと席につく。

「やあ、お二人さん。元気だね」

先にご飯を食べていた我が妹には、ばかおにい邪魔すんな。という目を向けられ、綾瀬妹は頬を朱一色に染めていた。

「ばかおにい!邪魔すんなし!」

おっと驚愕。俺は我が妹の言うことならば先読み出来てしまう能力を手に入れたのか。さすおにってやつかな?やっぱ。

「まあまあいいだろ?我が妹よ」

「むー!」

膨れた頬の女の子って可愛いよね。でも、俺はロリコンでもシスコンでもないから俺のはいつの間にか縮こまってくれていた。

「いただきます」

綾瀬も俺の真正面に座って、ハンバーガーを手に取るとそう言ってから喰らった。

僕も食べられたい!だなんて思ったのは秘密。

「きゃ!」

声のするほうを見やると、ソースがするりと肌を伝って谷間と呼ばれる部位に吸い込まれていった。

ギーンと、また俺のがビックになるには十分だった。

そんなのありかよ……エロすぎんだろ。

それをなんでもなさそうに綾瀬は拭き取ろうと、さっき貰ったお手拭きを使うがそう簡単に取れない。

丸まったおしぼりのピストン運動に伴ってずれるビキニから、俺は目が離せなくなり心の中の悪魔がざわめき始めた。ずれろもっとずれろ!と。

「うわぁ……おにいやらしい」

「ばっか!うっせ!」

こっちは戻すのが大変なんだよ。この生理現象をな!

「え?」

綾瀬は全く気がついてなかったみたいだった。こいつもなかなか不用心だな。いつ何時どんな変態が目をつけてるかわからないんだぞ!

「……見た?」

綾瀬が自分で状況を把握したのだろう。胸元を手で覆い、俺に鋭い目線を送ってきた。

「……い、いや?見てないよ?」

「バッチリ見てましたよ!」

「本当?」

そう綾瀬は綾瀬妹に訊くと小さく頷いた。

二対一で俺は有罪に決まってしまった。また俺の罪が増えた。もうそろそろ終身刑くらいまで罪が膨張してるんじゃないだろうか?

まあ、裁判官がぶっきらぼうに「そうなのね」と、しか言わなかったから、よく分からないけど。

それからは我が妹と綾瀬妹に終始癒されて、お昼ご飯タイムが終了した。

「この後どうする?」

「お昼過ぎたらまた人増えちゃったね……」

プールというよりかは、でっかい水風呂に水着着て混浴してるみたいになっていた。

それなら本当に混浴した方が俺はいい!

「……もうプールは無理ね」

「そう……だな」

態度で示せって言われてから、特にやれるような事はやってない。今回も同じように特に何も出来ずに終わるのか?本当にこれでいいのか?

「……なら、俺んちに来るか?」

「え?」

「……別に嫌なら」

「私はもっと遊びたいです!昨日は宿題やって遊んでないんですよ!だから……お姉ちゃんダメですか?」

我が妹が俺の言葉を遮ってピンク色オーラを出した。

「……優衣も遊びたいな」

綾瀬の後ろから我が妹の後ろに隠れるように移動して顔をひょっこりと出すと、可愛らしい声音で言った。

「……仕方ないわね。それなら行きましょうか」

我が妹が可愛らしくこちらに向かってウインクした。

こんなに可愛い幼女がいるならもういいかな?ロリコンいや、シスコンになっても。

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