第4話 出会い(カイト視点)
俺が初めてカナと出会ったのは、中学の時だった。俺はみんなの顔色をうかがって、みんなに合わせて、その時みんなが欲する人材を演じた。2年に進級する頃には、すっかり学年のリーダーという立場が定着していた。そうやって自分を演じているうちに、どれが本当の自分かが分からなくなっていた。だから俺は惹かれたんだ。飾らないありのままの自分でみんなと接するカナに……。
カナ「私、あなた嫌い。」
初めて言われた言葉は、その一言だった。
「えぇと……?どういうこと?」
その時の自分には理解できなかった。誰から見てもよく映るよう演じていた自分を否定されたようで、目の前の人物がその時言ったことが信じられなかった。
カナ「その仮面被ってるようなところの、その仮面が気持ち悪い。」
衝撃的だった。自分の中ですら、もはや偽っているものだと忘れかけていた自分の性格を、出会った瞬間に見破られた。たったそれだけだった。それだけのことがその時の自分にとっては、変わるためのきっかけであり、変わりたい自分にとっての希望に見えた。
カナはその飾らない性格から、反感を買うことが多々あった。カナに対する嫌がらせは、俺と同じクラスになった2年のときにはすでに始まっていて、3年になってさらにエスカレートしていった。そんなある日、ついにカナは屋上から飛び降りた。いじめの主犯格は停学処分となり、カナは一命をとりとめた。
面会のときに俺はカナに伝えることで、自分の中で決意をした。
「俺が、お前が生きる理由になれるようがんばるから。」
俺が生きる理由はカナだと……。
カナ「また別の仮面を被ろうとしてる。」
カナは笑いながらそう言った。最後に、
カナ「でも、その仮面は私好きだな。」
と付け加えて……。
今、目の前で彼女が倒れている。まだ助かると、絶対に大丈夫だと、そう自分に信じ込ませるかのように彼女に呼びかける。
トオル「カイト……、カナはもう……。」
そう言われて、ようやく現実を知った。結局俺は、最後までみんなの前で明るく振る舞う仮面を付けて、好きな人ひとりも守れなかった。カナ……、俺はもう……、疲れたよ……。
(トオル視点)
目が覚めたら呆気なくいつも通りの朝が来ると信じたかった。けれど、現実はまた俺たちに襲いかかる。エミの泣き声で目が覚めた。レンもケントも俺から目を背けているように俯いている。正確には、俺からではなく俺の背後からだった。
ナノ「トオル……。」
ナノが指差す方向に目を向けたとき、エミやケント、レンの行動の意味が全て理解できた。
少し落ち着いてから俺は彼に伝えた。
「今までありがとう……。お前のおかげでここまで来れた。辛かったよな……。ゆっくりおやすみ……、カイト……。」
カイトは、ごめんと書かれた遺書を残して首を吊っていた。間違いない、自殺だ。俺たちが寝ている間に、得体の知れない何かが襲ってくることはなかった。そのはずなのに俺たちはその何かによって、大切な友をまた1人失った。
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