キックオフ! 絆で繋がるサッカー部! ② ~ラヴの選択~

【前回のあらすじ】

 サッカーの惑星の王子でありラヴの兄・ピィスが地球へダイナミック来ジャペァ! その目的はラヴを母星へ連れ戻すこと。果たしてラヴは星へ帰ってしまうのか!?




     ◇◇◇




 ~ぽん大サッカー部 グループSNS~


ラヴ

<みなさん

<お話があるので、グラウンドに集まってもらってもいいですか?

<今まずい状況で、もう地球にいられないかもしれないんです

<詳しいことは直接お話しします


ぷるすけ@わるくないスライム

<ぼくはもうラヴちゃんのところにいるよ🥺

<みんなはやくきて🥺


大空 矢羽

<すぐ行こう。

<十分後に大学に到着する。


ZONE

<何だ何だ?やばいのか?とりま俺も行く

<スカルも来いよ


<りょ😇


Willow...☆

<ええー❗❓❗❓😲よくわかんないけど、ラヴちゃんが大変だ❗❗😱

<待っててね、すぐ行くからね❗❗🏃💨💨💨

<(居眠りして亀に追い越されるウサギのスタンプ)

<あっ❗❗ごめんスタンプ間違えた❗❗てへっ🤭

<(大急ぎで走るウサギのスタンプ)


帯巻赤目

<了解。すぐに行きます。

<スフィンクスも連れていく。


REITAROU

<急いで行か亡くてはなら亡いな👻


がまがえるのガマ

<すぐ行くよ~🐸


おてて㌠@夏コミ7日目南南西ヴァ-99e

<南無阿弥陀仏


Technologics Innovation(テクノ)

<優れた

<まちがい

<すぐに向町

<また誤変換した

<すぐに向かい増していく

<むずかしいな

<すぐに向かいます

<できた!


部外者にも関わらず知ったような口を利いて解説役ぶることが趣味の暇人

<クク……オレもすぐに向かおう……暇だからな……

<ククク……ククハハ……アーッハッハッハッハ!!


-ラヴ が 部外者にも関わらず知ったような口を利いて解説役ぶることが趣味の暇人 をグループから削除しました。-




     ◇◇◇




 ぽんぽこ大学、サッカーグラウンド。

 その中心、センターマークの上で、水色の肌の少年が風を感じていた。


 彼の名は、ピィス・オーオオ。

 オールバックの銀髪が特徴の、オオオ・オーオオ王国の王子である。


 そこへ……

 続々と集まる、人外たちがいた。


「話は聞かせてもらった」

 鳥人間のキャプテン有翼、大空おおぞら矢羽やばねが腕を組む。


「王国のお姫様であるラヴちゃんを母星に連れて帰りたい、と。もっともな理由じゃねーか。けど……!」

 ゾンビのレーゾンデートルが、こぼれ落ちた眼球を嵌め直しながら食いかかる。


「けど。ラヴちゃんが嫌がっているのなら、せめてもうちょっと話し合ってからにするべきだろ」

 スケルトンのスカルフェイスが、骨をカツカツいわせながら眉根をひそめる(スカルに眉はないが)。


 ピィスは、今喋った三人の他にも、ここに集まったメンバーひとりひとりの表情を眺める。石像のスフィンクスのような表情が読み取れない者も含め、全員がピィスに挑戦の意志を向けているようであった。

 だが相対するピィスは、余裕の姿勢を崩さない。


「サッカーは……」


 オールバックの銀髪を撫でつけ、口を開いた。


「サッカーは〝対話〟だ。熟練の技を持つ者は、ボールの奪い合いを通して互いに意思を疎通し合うことができる……」

「いやそんなことはないと思うよ」

「特に、視覚や聴覚などといった五感の他に〝サッカー覚〟を持つ私たちニッポーオーニッポー星の民にとって、サッカーをプレイすることは、言葉による会話以上のコミュニケーションなのだぜ」

「そんなわけが……亡いと……思うが……」

「ゆえに私は、サッカーを通じてラヴと話し合いを」

「ソンナ コト ハ ムリダロ~」

「さっきから話の腰を折ろうとしてくるの何なのだ!?」

「まあまあ……」


 キャプテン有翼が部員たちに声を投げかける。


「話は最後まで聞いてあげよう。せっかく遠路はるばる地球まで来てくれたんだからな」

「話のわかる奴がいてよかった」

「ああ。俺もきみのような想像力豊かな人と接するのは刺激になるぞ」

「あっコイツわかってない。私の言ってること想像だと思っている。本当にサッカーでコミュニケーションできるからな!?」


 ピィスは「ぐぬぬ」と憤慨した様子で、サッカーボールの上にバシッと片足を乗せた。


「こうなれば……サッカーで相手の人となりを識ることができるという、証明をしてやる。来い」

「なに?」

「全員まとめてかかってこいと言っているのだぜ」


 ピィスの不敵な笑み。

 サッカー部の面々は目つきを鋭くする。


「全員で、私からボールを奪ってみせろ。見極めてやろう……ぽんぽこ大学とやらのサッカーチームが、果たして、我が妹・ラヴにふさわしい存在なのかをな」

「屍っ屍っ、いいのかよ? 俺たち全員の力が合わさったら、あんたなんか……」

「愚民ほどよく吠える」

「てめっ……!」

「待て、ゾン」


 怒りに身を乗り出すゾンを制したのは、キャプテン有翼であった。


「……いいんだね。本当に手加減しないぞ」

「もちろんなのだぜ。もし私からボールを奪えたら、ラヴのことは諦めて星に帰ろう。逆に、私から十分以内にボールを奪えなければ、貴様等にはラヴを諦めてもらう。まあ私に勝つことなど、不可能だろうがな……」

「そうか。ならば……」


 キャプテンが、鷹の目でピィスを睨む。


「お帰り、願おうか……!」


 ピィスが『ニィィ』と獰猛に笑う。

 部員たちが臨戦態勢に入る!


 サッカーボール争奪戦が始まった!


 森の妖精ウィローがピィスの足下のボールを妖精魔法〝まじかる☆わーぷ〟で自分のところへ瞬間移動させた!


 ぽん大サッカー部の勝利であった!


 ピィスは約束を守り、UFOに乗ってワープ航法で母星へ帰ったのであった!




     ◇◇◇




 そして地球時間で二十分後くらいに地球に戻ってきたのであった!


「ピィス・オーオオは誇り高きオーオオ王国の王子。約束は破らない。だから一度は諦めて帰った。だがしかし、私は永遠に諦めるとは言っていない」


 据わった両眼でサッカー部を睨みつけるピィス。ガチギレであった。サッカー部たちはさすがに反省していたので、ウィローが代表して「ごめんね、次はサッカーのルールに従うよ」と申し出た。

 しかし。


「いいや。貴様等の全力で来ていい。先程の魔法も使って構わない。次は見切るからな」

「えっ? いいの?」

「試合ならいざ知らず、これはただのボールの奪い合いだ。サッカーのルールは関係ない。私はサッカーの星のプライドがあるから手を使わずにボールを守るが……それを他星の民にまで押しつけたりはしないのだぜ」


 ピィスは淡々と言い、少し乱れていたオールバックの銀髪を優雅に整えた。

 その様子を見て、ラヴは唇を引き結ぶ。

 自分の兄は、こういう人物だ。

 将来的に一国の統治者となる責任を背負い、優先すべきことを理解した上で、それでもプライドを高く持ち、そして寛容さをも併せ持つ。

 憧れてはいた。だからこそ、一緒にいると「兄を目指さなくては」という思いにより窮屈になることもまた事実だった。


「そして今回は約束を変えよう。『もし私からボールを奪えたら、私はラヴのことは永遠に諦めて、星に帰る』」

「……本当にいいのか、ピィスくん」

「ふん……鳥人よ、王族に向かって馴れ馴れしいぞ。だが貴様の胆力は良い。かかってくるがよいのだぜ」


 ピィスが本気の顔になる。

 再びサッカー部たちの臨戦態勢!


「来い! 私に、貴様等の足捌きを見せてみろッ!」


 古くさいロボット・テクノが背中から追尾ミサイルを発射した!


「ウオワァーッ!?」


 巨大ガマガエル・蝦蟇がまがボールを絡め取るべく巨大な舌を伸ばした!


「ウオォオーッ!?」


 足のない幽霊・霊太郎れいたろうが気配を消しつつ背後からボールを手で掴もうとした!


「足を使う奴はいないのか!?」


 骸骨・スカルが自分の股関節を外して足の骨を投擲した!


「そういうことではなく!!」


 ミイラ男・帯巻おびまきが、巨大ロボット・神王獅獣機スフィンクスに搭乗した!


「本気出しすぎだろう!!」

「喰らうがいい! スフィンクス・キック!」

「チィッ!! まるで我が星の辺境に住まう巨人族と試合した時のようだ……!」


 人型のスーパーロボットと相対し、それでも一歩も引かないピィス。

 戦いの巻き添えにならないようにベンチまで逃げ、傍観しながらアイスを食べる体勢に入ったゾンたちは、「へえー」と感心していた。


「ラヴちゃんの兄貴、つえーな。かつて古代エジプトを邪神から救ったといわれる神王獅獣機を相手に負けてねえ」

「ええ……そうですね」


 ラヴは瞳を今も不安げに揺らし、所在なく立っている。

 そんな彼女に、スライムのぷるすけが「ぷるぷる……」と心配そうに寄ってきた。

 彼女は小さく微笑んで、足下のぷるすけをそっと抱き上げ……また兄の姿を見つめる。


「ラヴちゃん」


 キャプテン有翼・大空矢羽が鷹のクチバシじみた口を開いた。


「迷っているのか?」

「大空先輩……」

「俺は器用な有翼人ではない。だから単刀直入に訊く。戻らなくてはならないという思いが、あるんだろう?」

「…………」


 キャプテンはラヴの隣に立つと、鷹の翼のついた腕を胸の前で組んだ。


「俺の話をしよう」

「先輩……?」

「俺は有翼人の住まう空中都市、ドー・バリトに生まれた。幼い頃から得意だったのは、サッカーではなく、キピッ・ヒチチだった」

「……?」

「空の民に伝わる古代語で『キピッ』は『空』、『ヒチチ』は『祭礼のための真球』を意味する。空を飛び、ボールを打ち、相手ゴールに入れれば得点……そういう球技だよ。俺はそれが得意だった。ヒチチのジュニア大会では優勝することもあったし、監督からも『才能がある』と言われていた。……だが。俺はヒチチが別に好きではなかった」


 ラヴは隣のキャプテンを見る。

 キャプテンの遠い目に映る、子供の頃の日々。


「俺が好きなのはサッカーだった。プロサッカー選手の本田ホナに憧れ、家の庭でヒチチ用のボールを蹴りながら走った。スーパーワールドカップの試合をテレビで見るたびに、本田の格好良いドリブルに興奮していたっけ……。だがヒチチには、ドリブルはない。ヒチチの楽しさもわかるが、サッカーほど、格好良くはない」


 いつの間にか他の部員たちも、キャプテンの珍しい昔話に興味津々で聞き入っている。


「しかし俺はヒチチの道を進むことを周囲から望まれていた。俺自身としても期待に応えたかった。有翼人は脚力は強くとも、サッカーのような競技で長時間地上を走るのには向いていない。そういう理由もあって、俺は、自分がヒチチを続けるべきであると思った。続けなくてはならないと思った」

「でも先輩は……サッカーの道を選んだんですよね」

「俺の中の『べき』『ねばならない』が、すべて他人がつくりだした枷だったのだと気づいたからだ」


 それを聞き、ラヴは泣きそうな顔をして、下唇を噛んだ。

 母星に帰って、王女としての責務を果たすべき。果たさねばならない。


(……そんなもの、本当は、ボクは望んでいない。けど……!)


 ラヴ・オーオオは王国の姫君である。

 その責任は、あまりにも重い。

 逃がれてはいけない重責というものもあるはずだ。


「ラヴちゃん」


 キャプテンが穏やかに微笑む。

 力強く、言葉を続けた。


「俺は今も子供たちにヒチチを教えるコーチとして、ヒチチを続けているよ」


 ハッとした。

 ラヴはキャプテンを見る。

 彼の言わんとしていることが、今この瞬間、わかった。

 それはラヴが無意識に思考から排除していた選択肢だった。


「先輩。いえ、キャプテン……」


 才ある者に生まれた責任を果たす道。

 好きになったことに打ちこみ続ける道。

 キャプテンは両方を選んだ。


「ボクにも……」


 震える声で言う。


「ボクにも、できますか。キャプテンのように」

「俺は……俺たちチームは」


 気づけば今ここにいるメンバー全員が、ラヴを見つめていた。


「信じる。ラヴちゃんの、力を」


 ズウゥンッ!


 突如響いた轟音に、サッカー部たちは視線を引き寄せられる。

 帯巻の操縦する神王獅獣機スフィンクスが、尻餅をついていた。

 グラウンドの中心で、ピィスが高笑いする。


「サーッカッカッカ! 他愛なし。巨人族のエース並みの強さではあったがな。まあ……巨人族との試合当時より自分が強くなっていることを再確認できたことには、感謝するのだぜ」

「ぷるぷるる!?」

「南無三!!」

「本気 ノ オビマキセンパイ ガ 負ケタ!?」

「あぁぁ……! 帯巻が負けるなんて……! 故人的に、腰を抜かすほどびっくりしたな……俺には腰の実体が亡いけど」

「ちょ! 霊太郎先輩、オレのスケルトンギャグパクってません!?」


 神王獅獣機のハッチが開き、帯巻が疲れた様子で這い出てくる。

 切り札を使った帯巻さえも負けたとなれば、サッカー部メンバーには、もはやピィスに勝てる者はいない。


 あるひとりを除いて。


「……ん? ラヴ、どうした。こちらへ来て……帰る気になったのか? なら良い、すぐに発とう。このような星に長居する意味はない。早速……」

「お兄様」


 ラヴはゆっくりと顔を上げた。

 ニッポーオーニッポー星人は、〝サッカー覚〟により、サッカーをすることでコミュニケーションができる。


相談があります試合をしましょう

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