エンジョイ! ヒーローズの夏休み! ④ ~永遠の夏休み~
【前回のあらすじ】
一方、ただひとり一億五千万年前の白亜紀に飛ばされていたヒーローズメンバー・
◇◇◇
巨大な城の中を、玉座の間へと急ぐ者たちがいた。
ヒーローズと、ラスボスたちである。
ラスボスのひとり、煉獄の魔王・セカヰによれば、ここはぽんぽこダンジョンのNo.7にあたる〝魔王城ドドンド〟であるそうだった。Ωが勝手にダンジョンを攻略し、乗っ取ったということらしい。
「赤崎先輩。学長は最後に、事件解決にはヒーローズの力が必要になるみたいなこと言ってましたけど、どういう感じに必要とされるんですかね」
緑川隼人が隣を走る赤崎進夢に意見を求める。すると、そのまた隣を滑っているヤマタノオロチが「それなんだけど……」とねっとりした声で口を挟んだ。
「たぶんこういうことだわ……? アタシたちラスボス組が暴走するΩちゃんを押さえようとしたら、力の差がありすぎて、Ωちゃんを傷つけてしまうかもしれないの……。そうならないためにも、アナタたち人間がほどほどに叩きのめすことが必要なのだと思うわ……?」
「せやな。ワイらにとっちゃ、おまえさんらはアリンコや。戦うってなると、アリを踏まんようにタップダンスするみたいになる」
「あははははははははははは!! あたしちゃんもそう思う!! うっかり潰しちゃいそうだよね!!」
「な、なるほどッ。となれば、今こそ我々ヒーローズの正義の心が燃え上がる時だなッ!」
「おれは――正直もう帰りたいっす」
「銀島!? やる気!!」
だるそうに呟く銀島拓馬に、隼人が突っ込む。それでもなおやる気なさげな拓馬の様子を見た桃谷夕乃が、困ったように笑った。彼女はいつも口角を上げているので、困り顔の時も微笑んで見える。
「赤崎先輩も、緑川くんも、銀島くんも平常運転で何より。そうだ、これが終わったらヒーローズのみんなで海にでも行かない? もちろん、各自で友達も誘うの」
「
「もう、
「……別にいらないし」
夕乃と青井麗華が気の抜けた会話をするのを、ラスボスたちは興味深そうに(興味なさそうな者もいたが)眺めている。そんな中、黒宮姫子が「待って」と全員を制止した。
「ブラック? どうしたッ?」
「そこに何かいる」
柱の陰から姿を現したのは、おどろおどろ学部スリジャヤワルダナプラコッテ学科の四天王であった。
〝黒魔道士〟クロモリ。
〝歪転の魔眼〟ガンジマ。
〝クイックルワイパー〟キサラギ。
〝お寿司大好き〟ドドメザカ。
「途中から弱そうじゃない?」
「ここから先は行かせないよ」「泣き叫ぶがいい……さ」「我ら四天王がお相手つかまつる」「貴様らの存在を、否定する」
四天王の啖呵に対し、ヒーローズが跳んだ。
隼人が超高速移動で四天王に打撃を入れた。
進夢が火炎を放射した。
拓馬が隕力のひとつ〝超重力〟を発動した。
麗華が氷の槍を降らせた。
夕乃がバリアを刃に変えて放った。
姫子がポイと爆弾を投げた。
のちに、病院送りになった四天王たちのお見舞いに来たヒーローズは語る。
〝いや、まさかみんなの攻撃のタイミングがバッチリ重なっちゃうとは思ってなくて……〟
大爆発。
四天王は倒された。
魔王城の一角が崩壊していく。
ヒーローズの異能が合わさったことによる爆発は、部屋の壁をぶち抜いた。
煙が晴れていくにつれて、壁の向こうが見えてくる。
そこには玉座の間があった。
『来タカ。ヒーローズ、ソシテ ラスボスドモ。……いや、もうボイチェンはいらないか(・ω・)』
玉座に座るのは、小柄な少女。
中学生ほどに見えるがこれでも大学一年生だ。
しかしてその正体は、スリジャヤワルダナプラコッテ学科を陰で牛耳る存在、
彼女はアロハシャツを着てサングラスをかけ、浮き輪を腰にくぐらせて、ウクレレを鳴らしていた。
「めっちゃ夏満喫してんじゃん」
「ずいぶんと遅かったではないか。おかげで……もう終わってしまったぞ(^ω^)」
「終わった……? どういうことだ?」
隼人の問いに、Ωは、得意げに(=ω=)みたいな顔をして、その力を解放する。
そのエネルギー波は、海風のような突風を起こした。
潮の香りが、ヤシの木の並ぶ海岸へと駆り立てる。
なんとなくブルーハワイのかき氷を食べたり花火大会を見に行きたくなってくる。
ヒーローズは混乱した。
この感覚は、いったい?
「夏休みエネルギーを少し浴びたようだな(-ω-)」
広々とした玉座の間にて、宙に浮かんだΩが口を開く。
「夏休みエネルギー……!?」
「あはっ!! 聞いたことあるよそれ!! 夏休みの希少な体験から得ることのできる、感動や青春の結晶!! それが夏休みエネルギーだったはずだよ!!」
「めっちゃ初耳」
「ハイパー時間泥棒マシーンにより、既に全ぽん大生の夏休みの奪掠は完了した(-ω-)」
厳かに告げ、不敵に笑う。
「そして。奪った夏休みエネルギー……〝ナツヤスミニウム〟をすべて取り込んだ私は、夏休みの神となったのだ!(☆ω☆)」
「夏休みの神」
「今なら全世界を永遠の夏休みに変えることができる。神なので。私はこの力で、みんなで夏休みを無限に楽しむのだ!(>ω<)」
「何――だと?」
拓馬が拳を握り、わなわなと震える。
「最ッ高――じゃねえか。先輩方。Ω様の崇高な理念に――賛同しましょう」
「銀島!?」「銀島くん!?」
「シルバー! 世界中が夏休みになったら、現代社会は回らないぞッ!」
「え~」
「え~じゃあないッ! 正義の味方として、Ωの凶行を止めなくてはッ!」
「やれるものならやってみるがいいーっっ!!(▽ω▽)」
夏休みエネルギーが爆発的に溢れ出す。ヒーローズは近づくことさえできない。徐々に思考を夏休みに浸食されていく。
「や、やばいっ……! 屋台のイカ焼き食いてえ……!」
「射的を――やりたい……!」
「あ……型抜きだ。懐かしい。おじさん、私、これやるわ」
「姫ちゃんが夏祭りの幻覚を!? ま、まずいわ!?」
目をぐるぐる回して幻覚を見る者も現れる始末。そこでラスボスたちが動いた。第十三次元の住人が空間の亀裂から這い出て、ヒーローズをかばうように立ち塞がる。それは〝理〟の外からの干渉。ヒーローズへ叩きつけられていた夏休みエネルギーは全くの無となった。
「あ、危ないところだったッ。感謝します、卒業生の先輩ッ」
「◆◆◆ ◆◆ ◆◆◆◆◆」
第十三次元の住人は、何事かを喋ったが、低次元存在であるヒーローズたちには聞き取ることができない。ラスボスの中にも、彼の言葉を理解できない者はいるようだ。しかし、代わりに天上の神が控えめに進み出る。
「激励してくれてるみたいだね……。神にとっても十三次元くんの言葉はわかりにくいけど、彼とは長い付き合いだから、わかるんだ……」
「あなたは……?」
「あっ……ごめんね。神はマクィナュニャムニャっていうんだ。言いにくい名前だから、みんなは神のことをマキナちゃんって呼んでくれてます……。さっきは引っ込み思案すぎて、自己紹介できなくて、ごめんなさい……。そ、それでね。神、思ったんだけど、あれに対抗するにはこちらもエネルギー波を撃たないとだめ、じゃないかな……」
「こちらもエネルギー波を? どうやってですか……?」
「ああ!!」
ロゼッタが素っ頓狂な声を上げ、蔓で床をピシッと叩いた。
「それなら星喰いちゃんの能力でいけるんじゃないかな!!」
「星喰い?」
「あはははははははははは!! この子のことだよ!!」
透明な球状の保護膜に覆われている地球外生命の幼体が、ロゼッタの蔓に持ち上げられて、ヒーローズの前にズシンと置かれる。幼体はロゼッタに触られたからか、不機嫌そうに単眼を半目にした。
「この子はね、惑星内部に寄生して内側から食い破る系ラスボスなんだけど、星を物理的に食べるだけじゃなくって、生命体の感情エネルギーも食べることができるんだよ!! そんで、食べた感情エネルギーを倍にして吐き出すこともできるの!!」
「つ、つまり……?」
「だーかーらー!!」
「そうか」
何かを閃いたらしい麗華が、あごに指先を添えて思案している。
「夏休みエネルギーに対して相性有利な何らかのエネルギーを、星喰い先輩に食べさせる。そして倍にして吐いてもらって、Ωにぶつけることができれば。そういうこと?」
「そーゆーこと!! いいねキミ、かしこい!! 名前は!?」
「青井麗華です」
「ふーん!! 忘れると思うけど覚えとくね!! あはははははははははははははは!!」
「ブルー! そうは言うが、夏休みエネルギーに対して有利をとれるエネルギーとは一体ッ!?」
「え。そんなの――ひとつしかないじゃないですか」
拓馬が、なぜわからないのかという顔をして、口を開く。
「受験勉強ですよ」
「受験勉強ッ!?」
「受験生の頃――おれの夏休みは受験勉強に消えた。つまり――夏休みは受験勉強に弱い」
方針は決まった。
ヒーローズの全員で受験勉強の苦しみを思い出し、
その感情を星喰いに食べてもらい、
吐き出した〝受験勉強エネルギー〟をΩにぶつけて、
夏休みを中和する。
隼人は進夢からその作戦を聞いて、思った。
(嫌すぎる……)
◇◇◇
白亜紀の大地。
大勢の恐竜たちの見上げる崖の上に、ホァンの姿があった。
大学生らしいシャツやジーンズはボロボロになったので脱ぎ去り、代わりに死した同胞の毛皮でつくった威厳あるローブに身を包んでいる。手には頑丈な樹でできた、背丈ほどもある杖を握っている。無精ひげを生やし、七三分けもワイルドに乱れていた。
さながら野生の王といった風格のホァンは、帝国の臣民に呼びかける。
「数年後、大隕石落下! 諸君、大絶滅? 否! 諸君、電脳空間移住! 永遠生命、獲得!」
「ギャオオオオ!」「ありがとう王様!」「ホァンザウルス帝王、万歳!」
「其、諸君、不断努力御陰。諸君一人一人、明日信頼、一生懸命前進継続、御陰! 諸君大勝利! 我、諸君滅茶敬愛!」
「ギャオッ、ギャオオオオ!」「ホァンザウルス帝王ー!」「グヮオオオオ!」
「其故――――」
右の拳を突き上げていたホァンは、静かに腕を下ろし、自分の胸に持ってくる。
「諸君、我、決別。其、滅茶悲」
「えっ……?」「お別れ、って……?」「ホァンザウルス帝王……?」
恐竜たちが困惑している。彼らは、ホァンもまた自分の魂を電子化し、永遠に生きるのだと思っていたからだ。
事情を知っているのは、ホァンにとある機械をプレゼントした、研究所の職員だけである。
「我、未来人」
ホァンは悲しげな瞳で恐竜たちを見下ろす。
「其故、未来帰還必要。此〝時空超越装置〟利用、我、未来帰還」
「タイムマシンだって……?」「帝王が未来人だっていうのは知ってたけど……」「そんな、じゃあ……」
「諸君」
しかしホァンは、最後は明るい笑顔でと決めていた。
「一億五千万年後、絶対、再会!!」
ホァンの声が白亜紀の空と大地と海に響き渡る。
大恐竜帝国の臣民たちが、一気に沸き上がった。
みなが口々に叫ぶのは、ホァンザウルス帝王への感謝と、再会への誓いの言葉。
そのコーラスを聞いて、ホァンの頬を嬉し涙が伝う。
(有難。滅茶感謝。……諸君等、最高)
数々の尊い思い出に浸りながら、ホァンは、研究所職員からもらい受けたタイムマシンの中に入る。
未来的な乗り物の形をしたタイムマシンは、ふわりと浮き上がると、ものすごいスピードで飛び立つ。
そうしてホァンは、白亜紀を去っていった。
◇◇◇
現代へ帰ってきたホァンが見たのは、受験勉強地獄に苦しめられる隼人たちだった。
「何故!?」
「うわっ!? 何だ!? 乗り物!? ……に乗ってるのは、まさかおまえ、ホァンか!?」
「隼人~! 滅茶久々~!」
「うわ、なんかヒゲ生えてる! くさっ! 獣くさいぞおまえ!!」
「おまえさんら! 再会の喜びに浸ってる場合やないで! 星喰い、受験勉強エネルギー120%充填完了や!」
聖竜田村の吼え声に、ヒーローズの面々はすぐに表情を引き締める。
「何何? 皆、何実行中?」
「お願いします、星喰い先輩! いっけえー!」
星喰いの顎が保護膜を突き破り、砲塔のような形になった。
そこから、極太の、受験勉強ビームを放つ。
「ご ば あ あ あ あ あ あ あ あ」
全世界を夏休み化するため意識を集中していたΩは、はっとしてそのビームを防御した。
しかし必死のガードもむなしく、夏休みエネルギーは受験勉強エネルギーとぶつかり合って消えていく。
「あはははははははははは!! すごいじゃん!! 勉強なんて必要なかったあたしちゃんたちにはできないことだよ!! すごいすごい!!」
「全然嬉しくないです」
「な……! い、いやだ……! 私が、負ける……!?(;ω;)」
「正義は勝つッ! Ωよ、観念するのだッ!」
「そんなの……受け入れない! 私はっ! 永遠に夏休みを謳歌するんだあーっ!!(>ω<;)」
Ωが、背後に無造作に置いてあった機械に手を伸ばす。それは、ぽん大生の夏休みを奪うのに使用した、ハイパー時間泥棒マシーンであった。
「ぽん大生の夏休みだけじゃだめなら、全人類から夏休みを奪ってやるーっ!(>ω<;)」
「本末転倒じゃね!? やめろ!!」
「もう遅いっ!(☆ω☆)」
マシーンが起動した。
轟音を立てて、時間泥棒マシーンは全世界から夏休みを吸い上げていく……
はず、であった。
「……!? 稼働しない!? なんで!?(;ω;)」
Ωがスイッチを何度押しても、マシーンは沈黙したまま。
なぜなのかは、Ωにもわからず、ヒーローズのメンバーにもわからず、ラスボスたちにさえもわからない。
しかし、ただひとり、ホァンにはわかっていた。
「呵……呵呵、呵……」
その瞳から、涙がこぼれる。
「……皆!」
『ギャオオッ! ハイパー時間泥棒マシーンのクラック、成功!』『私たちの電子の力、見せてやるんだから!』『ホァンザウルス帝王神との一億五千万年ぶりの再会を邪魔させるな!』『我々恐竜たちに、ホァンザウルス帝王神の加護ぞある!』
そして。
受験勉強エネルギーが枯渇すると同時に、夏休みエネルギーもまた減衰し、Ωは夏休みの神から夏休みの天使くらいにまで格下げとなったのであった。
◇◇◇
「いーやーだー!(>ω<;)」
「嫌だじゃねえぞ――残りの夏休みエネルギーを使ってぽん大生に夏休みを返せ」
「私は諦めないぞ! この力を元手に、私は再び神へと返り咲くんだー!(>ω<;)」
一段落した、魔王城・玉座の間。
玉座で駄々をこねるΩに対して、拓馬はさっと無表情になり、てくてくとハイパー時間泥棒マシーンのところまで歩いていく。
隕力を発動し、巨大な怪腕でマシーンを引っ掴んだ。
メギャメギャ、と音を立てて握り潰す。
唖然とするΩに、拓馬は言った。
「こうなりたいか?」
「いや怖ァ!? 貴様ホントに正義のヒーローか!?(;ω;)」
「銀島そういうとこあるよな」
「他のヒーローズメンバーも納得してないで止めてよ!(>ω<;) ひぃ!? こ、こっち来んな! 来んなって……来ないで! 来ないでください! 来ないで……うぅ……しゅぃましぇんれした……なちゅ休みをお返しいたしましゅ……(;ω;)」
陥落は早かった。夏休みの天使・Ωは全ぽん大生に夏休みを返還した。
のちにぽん大生の間でも語り継がれる〝夏休み消滅事件〟は、こうして幕を閉じたのである。
◇◇◇
「絵絵~!? 最終親玉先輩達、帰郷!? 早! 名残惜~!」
「俺も名残惜しいです……ラスボスの皆さんの話、もっと聞きたいです!」
ぽんぽこダンジョン・魔王城ドドンド、中庭。
太陽光の差すそこで、ヒーローズとラスボスたちが向かい合い、別れを惜しんでいた。
「あははははははははははははは!! そーは言ってもなー!! まあ、あたしちゃんもキミたちの文明が滅亡していくのを眺めてたいけど、しばらくはそうならなそうだからいいや!! 帰るね!!」
ロゼッタはそれだけ言うと、空間をぐにゃりと歪ませてそこに吸い込まれるようにして去っていった。あっという間の行動に、隼人たちは別れの挨拶をする暇もない。更にはヤマタノオロチと〝星喰い〟と第十三次元の住人もいつの間にか消えている。
「アイツらはフリーダムやなあ……。十三次元先輩も何考えとんのかイマイチわからん……」
「さて。我もここでお別れだ。妻に赤ん坊の娘を任せきりにしてしまっているから、早く帰らねば。後輩たちよ、さらばだ」
「あ……あの、神も天界に帰るね。後輩のみんな、ちょっとの間だけど、神、楽しかったよ……! あ、最後に、もしよければなんだけど、LINE交換しよ……!」
煉獄の魔王・セカヰと、機械の体を持つ天上の神・マクィナュニャムニャは、こういった挨拶を大切にするタイプなようであった。セカヰは空間に闇のゲートを生成してそこから去っていき、マクィナュニャムニャとはSNSの連絡先を交換する。
「きゃー、わたし神様とLINEで繋がるの初めて! ありがとうございます、神様先輩っ」
「マキナでいいよ。あなたはユウノさんっていうんだね……よろしくね。あっ……あなたのアイコン、くまのぬいぐるみなんだ……。可愛い……」
「わかりますか? 可愛いんですよ~! バッグにもつけてて~」
「あ……ほんとだね……!」
さっそく意気投合している夕乃とマクィナュニャムニャ。その輪に入りたくてそわそわしている麗華。
一方、他のヒーローズメンバーは聖竜田村にある提案をされていた。
「ワイの背に乗って空を飛んでみいひん? ワイも後輩のためになんかしてやりたいんよ」
「え! いいんですか!?」
「乗乗~! 飛飛~!」
「願ってもない提案ですッ! 一応私も異能で飛ぶことはできるがそれはそれッ」
「ドラゴンの背中に乗るって、ラノベみたいな体験ね。是非お願いします」
「わぁ、素敵! ほら麗ちゃん、一緒に乗せてもらいましょ?」
「そうね」
「おれは帰ります――眠いんで。あっ、ちょっ! 桃谷先輩――腕引っ張らないでください、乗りませんよおれは! ちょっと!」
「乗った? ほな、飛ぶで~」
「おれは高所恐怖症なんだが――!?」
最後まで残っていたマクィナュニャムニャに見送られ、ヒーローズは空を旅する。
聖竜田村の羽ばたきは、小金ゐ市に新しい夏の風を吹かせた。
ぽん大生たちの夏休みが始まる。
ある者は家でだらだらし、ある者は海水浴へ行き、ある者はヒィヒィ言いながら夏期集中講義を受ける。これを機にアメィリカァン国やアトランティスなど海外へ旅行する者もいれば、屋内で友達とチューハイ飲みながらひたすらスマブラやってる者もいるだろう。
怪しげなアルバイトで一攫千金を目指す者もいるだろう。
ジャペァン国の平和を守るため奔走する者もいるだろう。
宇宙の真理のその先へ思索を深め続ける者もいるだろう。
部外者にもかかわらず知ったような口を利いて解説役ぶる者もいるだろう。
そしてこれらに当てはまらない、奇妙奇天烈な体験をする者も、いるのだろう。
これから語られるのは、多様なぽん大生たちが過ごす夏休みの、ほんの一部分にすぎない。
だが、全てのぽん大生について、確実にいえることがある。
奴らの過ごす夏休みは……
きっと、めちゃくちゃ楽しいのだ。
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PONPOKO University
DONDOKO Faculty
DU-DAN-TUK-DU-DUN Department
108th year of the Heisei period,
〝SUMMER VACATION EDITION〟opening.
Enjoy!!!!!!!!!!!!!!!!
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