第十七章 迷宮という封印
第63話 迷宮の前にお茶会を(1)
「リア、迷宮巡りしないか?」
起きたら、なぜかジルの城だった。様子を見に来たパウリーネに着飾らされたため、しっかり青紫のドレスを着ている。琥珀色の首飾りと耳飾りをつけ、ジェンを入れた青水晶はブレスレットに加工されていた。
普段つけて歩くには、ペンダントよりブレスレットが楽だ。素直に腕に通すと、まるでサイズを測ったように、地金が肌に吸い付く。なにやら魔法陣が刻まれているので、後で調べようと考えながら椅子に腰掛けたところに、このセリフだった。
「突然どうした?」
「以前に『力あるモノが封じられた場所』が迷宮だって説明したら、興味示してただろ? テラレス王宮と魔の森、幻妖の森を除いた場所にもあるんだけど、ツアーみたいに回ったら楽しそうじゃないか」
「意外と数が沢山あるのですよ」
「人族には伝わってないけど、ほら……アスターレンとジュリの間の火山、あそこも迷宮なの」
リオネルとライラがダメ押ししてくる。珍しくリシュアがお茶の用意をはじめ、軽食を含めた豪華な皿が並んだ。王族のお茶会より豪華かも知れない。お茶だけでも数種類用意したらしく、リシュアが優雅に最初のお茶を淹れた。
「寝起きですし、まずは薄めの柔らかなお茶にしましょう」
緑茶とも違う、不思議な緑のお茶を差し出される。香りは緑茶に似ていて、口をつけるとすっと喉に沁みる気がした。柔らかなお茶という表現が確かに似合う。
「美味しい」
ほっと息をついて、ルリアージェが表情を和らげる。肘をついたジルが行儀悪く、指先でお菓子を浮かせて自分の前まで運んだ。魔性ばかりのお茶会なら違和感がない光景だが、これを人族のお茶会で披露したら大騒ぎになりそうだ。呪文も魔法陣もなく、お菓子はジルの指に納まった。
ぱくりと口に運び、思ったより甘かったのか顔をしかめる。分かりやすいジルの反応に、ルリアージェがくすくす笑い出した。
「それで迷宮を見て歩くのか?」
「そうよ。私はほとんど知ってるけど、他の4人は封じられてた間にできた迷宮は知らないし。リアはほとんど初めてでしょう?」
ライラがお茶を飲みながら説明し、続きをリシュアが口にした。
「どうも魔性に絡まれるようなので、人族が少ない場所にしようと考えたのです。リア様は人族を巻き込むのがお嫌いですから」
大きな蒼い目が見開かれ、驚きを露にする。すぐに和らいで穏やかな表情になった。
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