第62話 次の行き先は
地底の湖に水滴が落ちる。波紋はゆっくり広がり、遮るものがないまま、やがて新しい波紋にかき消された。繰り返される動き、しかし波紋を起こす水滴が生まれる場所は存在しない。
ジルは自城の広間で溜め息をついた。隣の部屋に寝かせたルリアージェが目覚めるまで、まだ時間がある。円卓を囲む他の魔性達も複雑そうな顔で、中央に置かれた地図を見つめていた。
「次はどうする?」
「リアが関わっていない国はツガシエとジュリくらいかしら」
「いっそサークレラに戻るという手は」
ジルの呟きに、ライラとリシュアが口を開く。だがどちらも余り好ましくないと考えているのか、声色は暗い。そう、9カ国のうちリュジアンが消えて8か国になったこの大陸で、ルリアージェを連れて行ける場所の選定を行っていたのだ。
テラレス、ウガリス、シグラは指名手配されている。アスターレンは国が崩壊寸前まで追い込まれたせいで、彼女を受付けない可能性が高かった。タイカにこのまま残るか、他国へ移動するか。彼らは本気で悩んでいた。
彼と彼女らの思考の中心は『いかにルリアージェに快適に過ごしてもらうか』であって、各国の思惑や事情など考慮しない。ただルリアージェに危害を加える可能性がある国や、彼女が不快な思いをしそうな国を外した結果……ほぼ選択肢が残されなかっただけ。
「いっそここに留まるというのは……」
「安全だけど、それじゃリアが退屈だろう」
他人と関わることが好きなルリアージェの性格を考えると、この城に閉じ込めるのは気が引ける。きっと彼女は我慢して頷くだろうと想像できるから、余計に選びたくなかった。
基本的に魔性の思考は自分と主人、以外は排除される。どうでもいいのだ。
「リアが好きなものか〜。先日の水晶は評判良かったな」
「でも、宝飾品は興味示さないわよ?」
「魔法陣はお好きでしたね」
思い思いにリアの好きそうなものを探っていく。魔方陣や魔術に関する知識には貪欲だが、自分を着飾る物にあまり興味を示さないのだ。
「いっそ、迷宮巡りはいかがでしょう?」
リオネルの提案に、一斉に反応した。
「「「「それだ(わ)」」」」
迷宮は大きな魔物や魔性の痕跡が残る地だ。テラレス王宮も魔の森や幻妖の森も含まれる。これらの場所は人族に伝承しか残っていないから、彼女の好奇心も満たせるだろう。
「リアが起きたら聞いてみましょうね」
相談事が一段落し、魔性たちはのんびりと主人の目覚めを待った。
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