第42話 国宝級の戦利品がごろごろ(1)
白い薔薇がふんだんに飾られた大広間の円卓を囲んで、彼らは戦利品を見せ合っていた。ルリアージェの両隣にライラとジルが、残った場所をパウリーネを中心にしてリシュアとリオネルが座る。
机の上は、封じ玉やら大きな封印石が無造作に置かれた。封じ玉ひとつで、国家予算を圧迫する価格の品だ。
優雅な手つきでお茶を用意したリオネルが差し出すカップには、ミントの葉が浮いていた。透明のカップやポットは、お茶の色を楽しむ為のグッズだろう。彼が使うのだから、ただのガラス製品ではなさそうだ。
「このカップは玻璃なのね。扱いが難しそうだわ」
素材が水晶だと言い当てたのは、彼女が地の精霊に近しいからだろう。くるりと手の上でグラスを持ち替え、驚いたように目を瞠った。
「すごいわ、1つの原石から削りだしてるなんて」
言外にこんな大きな原石がよく見つかったと感心するライラへ、リオネルが苦笑いしながら種明かしをした。
「実は以前に拳ほどの水晶を見つけまして、封印前に加熱して成長を促したのです。幸い誰も発見しなかったらしく、レンさんを追いかけている途中で思い出して回収しました」
作ったばかりらしい。こういった加工は白炎を自在に操り温度操作に長けたリオネルの得意分野だった。言われて気付いたルリアージェも、カップを持ち上げて透き通った素材の美しさに目を輝かせる。
「確かに綺麗だ。リオネルは凄いな」
「ありがとうございます」
大きな原石の周辺にあった小ぶりな水晶をカップ用に使ったが、確かに贅沢な一品だ。大陸のどの国にあっても国宝級だろう。それを普段使いするリオネルの感覚は、やはり人間とは違っていた。ルリアージェの素直な賞賛に、彼はお茶菓子を用意したあと一礼する。
そんなやり取りを見ていたパウリーネが立ち上がり、円卓を半分回ってルリアージェの前に立った。ジルが平然とお茶を飲んでいるので、ルリアージェに緊張感はない。すこし首をかしげると、髪飾りがしゃらんと綺麗な音を立てた。
「ルリアージェ様、氷静のパウリーネと申します。ジフィール様の配下として、今後ルリアージェ様のお役に立てるよう頑張りますわ」
すっと膝をついて、両手でルリアージェのドレスの裾を掲げて額に押し当てる。忠誠を誓う儀式は散々見てきたが、彼女の動きは洗練されていて美しい。
「ああ、未熟な存在だがよろしく頼む。呼び名はリアでいい」
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