第34話 それぞれの思惑(3)
リオネルは『鎖の封印』がなされていたテラレスの上空で眉を顰めた。歪んだ封印の痕跡がまだ残っている王宮の地下へ転移する。金剛石が保管されていた宝物庫だ。侵入防止用の結界や攻撃魔法陣が刻まれているが、すべてを己の魔力でねじ伏せた。
「おかしいですね」
金剛石が1000年に渡り保管されたのなら、もっと色濃く魔力が残る。霊力によって清められた形跡がない部屋の状況に首を傾げた。
主である死神ジフィールの、二つ名の
なぜ封印した金剛石を保管できたのか。1000年に渡り封印を維持するなら、何かしらの魔法陣や結界が必要だったはず。ジルの魔力を完全に封じられなかったから、この場所は迷宮として機能していた。逆に考えるなら、最初から
主が復活したあと、リオネルが不思議に感じたのは『テラレス迷宮』の強度の低さだった。綻びた封印状態である金剛石が、どうして1000年も
そもそもレンは何故ジフィールに仕掛けたのか。レンを追いかけて飛び回る際、彼は
最初の敵対行為のあと、一切反撃しなかったレン。もし創造主である闇帝の予定調和だとしたら、主であるジフィールの封印が解けた
見えないクモの糸に絡まった蝶のような、不自由さと違和感が残る。ほつれた封印、機能しない迷宮、浄化されない聖域、
封印を解いた『ルリアージェ様』が触れる行為そのものが、予定調和の鍵だとしたら?! 彼女は何も知らずに予定調和に組み込まれ、ジフィールを操るためだけに生まれ存在させられる可能性もある。
今更、主がルリアージェ様を手放す選択はない。己の存在を消す結果になるとしても、世界を滅ぼすことになろうと、決して離れないだろう。
気付いてはいけない。警鐘が頭の中に響く。忘れなくてはならない。身体を切り刻む恐怖の中、リオネルは艶やかな金の髪を乱暴に握りしめた。
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