第23話 魔の森のお茶会(3)
「ああ」
温かいので素直に頷けば、嬉しそうにジルが笑う。整った顔で全開の笑顔は心臓に悪いが、その後の言葉はもっと心臓に悪かった。
「良かった! 次はもっと大きな熊を獲るからな」
「……獲らなくていい」
魔性の感覚はよく分からない。理解の外で生きる彼らに振り回されるのは、諦めた方が良さそうだ。都度止めれば聞いてくれるのだから、人族の為にコントロールを頑張るしかない。
「あたくしも毛皮は持っていてよ」
張り合うライラが魔法陣を頭上に展開する。逆さまに天へ向かって描かれた魔法陣から、次々と毛皮が落ちてきた。
「……」
なんだろう、魔性って戦利品として毛皮を集める習性でもあるのか? そんな話聞いたことなかったが、もしかしたら上級魔性の間では
遠い目をしたルリアージェの前に、色取り取りの毛皮や羽が降って来た。
「この羽なんか、綺麗でしょ! ルリアージェの髪飾りにどうかしら」
「白孔雀か、
「あら、意外といいわね」
大人しく雪の中に立っている間に、孔雀のように飾り付けられてしまった。虹色のグラデーションが美しい羽と白い孔雀の羽が数本束ねられた銀細工の飾りを乗せられ、銀髪に絡めるように留められた。
「素敵よ、リア」
「確かに良く似合う」
絶賛されても、ここは国境付近の魔の森の中だ。鏡もない現状、自分がどう飾られたのかわからなかった。ほかに見せる人もいない場所で、ルリアージェは割り切って礼をいう。
「ありがとう、二人とも。とても助かる」
嬉しそうなジルとライラを見れば、どちらも人間の子供と同じだ。我が侭で自分勝手、褒めてもらいたくて手柄を競うあたりも、本当に精神が幼いのだろう。
彼らの扱い方がわかってきた。
5~6歳の子供か、賢い犬として扱えばいいのだ。褒めて伸ばし、いけないことをしたら叱る。言うことを聞く間はこの手で行こう。
――アティン帝国を滅ぼした『大災厄』と、その大災厄を封じた『大地の魔女』を飼うなんて……予想外だが、捨てても追ってくる確信があった。
「サークレラにいくぞ」
千切れんばかりに尻尾を振る姿が容易に浮かぶ魔性たちを引き連れ、ルリアージェは雪の中を歩き出した。
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