第22話 知らずに増える配下たち(4)

「勝手に増えた…」


「押し掛け臣下ですね」


 ぼやいたルリアージェに、リオネルはさらりと止めを差した。


「いいじゃない。配下って便利よ? あたくしは少ない方なのだけれど……下に10名ほどよ」


「オレはもっと少ないか。リオネルを入れても3人だ」


 ライラとジルの配下は自動的にルリアージェの配下となる。そう告げられても、人間である身では納得しづらい。知る限りの例えを並べた結果、一番近い表現を選んだ。征服した国の臣民が己の臣民になるようなものか? 少し違う気もする。


「少ない、のか?」


「そうね、水の魔王トルカーネが一番多いと思うけれど、8000人くらいまでは数えたわ」


「いや、もっといただろ」


「私が把握しているのは1000年前の人数ですが、2万574人でしたよ」


 大雑把なライラ、さらに大雑把なジル、几帳面な性格のリオネル。3人の話を聞きながら、ルリアージェは肩を落とした。


 彼らの人数が少なくて良かった。下に2万人とか魔性や魔物がいても、きっと顔も覚えられない。2万人といえば中規模の都市の人口に匹敵するのだから。


「ただ、数だけが強さではないの。リオネルなんて魔王の候補だったから、魔王とほぼ変わらない魔力があるでしょ。あたくしの配下はリオネルには劣るけれど、側近クラスの上位魔性しかいないわ」


 少数精鋭という意味らしい。水の魔王の配下が多かったのが気になるのか、ライラは身振り手振りで配下の有能さを訴える。多少物騒な例えが入っているが、やはり人間とは感覚が違うのだろう。ルリアージェはあえて指摘しなかった。


「アティン統一直後に、東の大きな都市を壊滅させたのはあたくしの配下だわ。たしか大地震を起こしたの。下にある遺跡が彼のお気に入りだったから、人間に取られたと思ったのね」


「なんで都市が出来てから壊したんだ?」


 もっと早く奪えばよかったのに……レンがルリアージェの代わりに突っ込んだ。肩肘をついて行儀の悪い彼は、残っていたタルトを頬張りながら答えを待つ。


「あたくしが聞いた時、しばらく離れて帰ってきたら都市が出来てたって言ってたわ」


「……しばらく?」


 人族の都市、それも大都市が発展するには数十年単位の時間がかかった筈だ。それをちょっと外出して戻ってきたらと表現されても、人間相手に通用しない理屈だった。


「遺跡の中にあった、何だったかしら……えっと、忘れてしまったわ。その何かがお気に入りだったのよ」


 興味がないので覚えなかったライラの言葉に、ジルは肩をすくめた。リオネルは苦笑している。すでに話に興味を失ったらしいレンは、残った菓子の中から次に食べる物を選んでいた。まったくもって自分勝手で纏まりのない連中だ。


「それで……」

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