第22話 知らずに増える配下たち(3)
人間ごときに膝をついて構わないのか? 尋ねるルリアージェが椅子から立ち上がり、膝をついたライラを助け起こした。軽い精霊の少女を抱き上げ、疑問のままに首を傾げる。さらさら流れる銀髪に、ライラの手が触れた。
パシン! その手を払ったジルが、強引にライラを奪い取ると放り出した。無造作な所作で黒い床に放られた少女は、重力を感じさせない動きで着地する。
「ジル!」
叱る口調に、ジルは子供のように口を尖らせた。
「ルリアージェの
「はぁ……」
大きく溜め息をついてしまう。先ほどまで過去の話をしていたジルは大人びて、永き時を生きた人外の貫禄があった。少なくとも子供を連想させる仕草や口調はなかったのに。今の彼は、お気に入りの玩具を取られそうな子供そのもの。
ぎゅっと腕の中に抱き込まれ、整った顔が不安そうに近づく。頬と額にキスを落として、必死に抱きつく姿は幼子だった。魔性は突然生まれて一人で大きくなるため、基本的に性格が子供なのだ。嫉妬も幼くて、大好きな母に近づく兄弟を追い払う程度の感覚だった。分かっていても、美形が顔を寄せると心臓に悪い。
「まったく乱暴ね。男はいつでも自分勝手なんだから」
苦笑いするライラは平然としている。彼女のけろりとした態度にほっとしながら、ルリアージェは続いて立ち上がったリオネルに目を向けた。
長身の彼は『死神』の眷属である証なのか、ジルと同じ黒衣を身に纏う。その裾を裁いて一礼し、膝をついた。嫌な予感がして声をかけようとしたルリアージェは一足遅い。
「ま……っ」
「改めてご挨拶を。死神ジフィールの配下、『白炎のリオネル』と申します。ジル様と共に、ルリアージェ様にお仕えいたします」
すでに誓いですらなかった。決定事項として淡々と告げられ、困惑してジルを振り返る。まだ腕の中にルリーアジェを抱いたまま、ジルが満足げに頷いた。
「オレの主はルリアージェだから、オレの配下はルリアージェの配下ってわけ」
今度は嫉妬しないらしい。基準がよく分からないジルの感情を推し量ることを諦め、ルリアージェは肩を落とした。最後に残ったレンが面白そうに足を組んでこちらを見ている。
まさか……嫌な予感にルリアージェが首を横に振った。
「残念ながら、おれは傍観者だから主をもてないんだよな。でも全面協力しますよ、ルリアージェ様」
にこにこ笑いながら告げられ、からかわれた気分になる。
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