2016年 2年 近藤誠
7月。次期会長を真剣に考えなければならない時期がやってきた。9月には会長選挙を行わなければならない。立候補者はそれまでに執行部候補者を固めておく必要があった。いうほど時間に余裕はない。
僕と角田くんは加美先輩から生徒会室に呼び出された。
「教頭の寛田先生からは私が誰か推薦しないのかって聞かれたけど、意思のある人を推薦したいからってはぐらかしている。第1候補は君たち二人だと期待しているけど、出馬の意思はある?」
「出たいと思ってます」
そう角田くんが告げた。そして加美先輩が僕の方を見たが何も言われなかった。自分自身でも思った以上に意外だったけど諦めがついた。そして素直にいう事が出来た。
「角田くんが出るなら僕は応援しますよ」
僕には出る意思はなかった。正確には違うな。直前まではあったけど加美先輩が僕を推すと言ってくれるとどこかで期待していた。それが裏切られたからその気にならなかったのだ。一瞬の決意だった。
加美先輩は淡々と答えた。
「近藤くんがどう角田くんの出馬支えるかはまた二人で話し合って欲しい。私は角田くんの出馬は歓迎だし応援もする」
こうして次期生徒会の行方を決めた三人の会話は終わった。
後日、加美先輩と二人だけで話をする時間を取ってもらった。どうしても納得したかったのだ。他人の目も気になったので日曜日、あまり客の入りの良くないカフェを指定して来てもらった。
待ち合わせの30分前に行ったら加美先輩はもう来ていてブレンドコーヒーを飲んでいた。僕はアイスコーヒーを頼み単刀直入に要件を告げた。
「先輩は僕が出馬すると思ってませんでしたか?」
先輩は僕をじっと見ていた。言葉を選んでくれているのだと感じた。
「そう思っていた事もあったよ。角田くんと君は私にとって貴重な味方だったし、君が私の後継をやりたいという事まで考えてくれているのは感じてはいた。でなきゃトランペットのパートリーダーぐらいは君は狙っていただろうとも思ったし」
「じゃあ、何故、角田くんと僕の意思を同時に聞くような形を取ったんですか。先輩なら個別に確認してどちらを応援するか決めることだって出来たのでは?」
加美先輩の眼は暗かった。
「悪いとは思っている。でも彼は私に学校側からの接触があった事をすぐ教えてくれたから。彼にあったという事は君にもあったと思ったけど違う?」
違わなかった。生活指導の
「私は風紀規則の廃止による生徒会規則への統合を諦めていない。でも学校側はそれを恐れている。あの会議で規則統合の話を持ち出して秘密だと言った事はわざとだよ。
加美先輩はため息をついた。
「わからなかったのは君の意思。角田くんはすぐ私に報告してくれた。君はしてくれず黙っていた。だから信じていいか分からなかった。
加美先輩は哀しげな表情になった。
「君が学校側と組もうとか考えている訳じゃない事は思っている。でも学校側との駆け引きの最中に次期会長選に出てくれる可能性のある二人で報告のあり、なしが発生したら私が組める相手は自ずと決まる。そういう事が判断の違いになった」
僕は加美先輩を甘く見ていた。よっぽど先まで読んで布石をしている。多分角田くんは僕よりその布石が見えているのだろう。そして僕には見えてなかった。
僕は許山先生の側に付こうと思った事はない。ただ
角田くんは違う。彼は加美先輩の考えを想像して言わないとまずいと思った。そして加美さんの作戦に一枚噛んで
僕は加美先輩に時間を取って貰えた事へのお礼を言うと勘定書きを持って行こうとした。彼女が勘定書きを取ろうとしたけど僕は首を横に振って断ると自分と彼女の分を支払って店を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます