第3話 『しょったれ半蔵』 谷津矢車

 有名な服部半蔵を主人公に据えた、戦国エンターテイメント小説。

 服部半蔵と言えば、もう完全に忍者のイメージですが、彼自身は忍者ではなく、実際は武将だったそうです。忍び働きをしていたのは、彼の父親の代までだったとか。

 この小説で描かれる半蔵は、忍びの一族である自分のお家を飛び出して武将になります。しかし、ひょんなことから服部家の二代目を継ぐ羽目になってしまうのです。武将でありたいと思う半蔵の思いとは裏腹に、数々の試練を越えていく中で、次第に半蔵は忍びとして目覚めていきます。


 この本はとてもエンターテイメントに富んだ作品でした。三河の一向一揆や三方ヶ原の戦い、本能寺の変など、実際に起こった事件、戦いを交えながら、”忍び”という武士とはまた異なった存在を、半蔵の視点、彼自身の体験から描き出しています。と言っても硬派な歴史小説というよりかは、忍び同士のトリッキーなバトル要素や、梟の仮面をつけた謎の忍びとの戦いなど、少年漫画的な要素も盛りだくさんなエンターテイメント小説です。

 忍びの家を継いだものの、長い間武士として働いてきた半蔵が、家康から忍びの仕事を与えられるたびに「それがしは忍びではございませぬ」とお約束のように言っているのもまた面白いです。そもそも半蔵がじゃっかんヘタレなのも、これまでの服部半蔵のイメージを覆してくれているようで楽しいです。



 あと表紙のイラストにとても惹かれました。実は、この本ほとんど表紙買いしちゃったんですよね……。もちろんあらすじも把握した上で買ったんですけど。

 表紙を飾る半蔵の力強いイラストが、王道少年漫画の主人公感満載で、思わず手に取って買ってしまいました。表紙のデザインの力ってすごいものです!!

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