第3話 やっとこうやってね。

 かつて、私はいろんな人とつきあってみたわ。あの人と、この人と、その人と、それからそれから、数えてもキリがないけれどね。でも、みんなダメだったわ。えぇ、それはそれはとても滑稽で哀れで、とても「美しさ」からなんてほど遠いわ。自分の欲望のためにわたしのところにすり寄ってきて、うんうん。なるほどねぇ、あなたたちって他人のことをまるでゴミ箱のように扱うのね。でも残念ね。私は人だから、意志だって理想だって美意識だって自尊心だってあるわ。なかなかどうして、誰も「美しさ」で世界を染め上げたいなんて考えていないってよくわかったわ。


 つきあってみて、別れて、その度にこんな現実を突きつけられてね、それでも「美しさ」を大事にしている人がいるってちょっと期待しちゃったりするの。たまに少しそんな気配を見せてくれた人はいたけれども、結局は同じだったわ。どうしてかな。どうして誰も「美しさ」を大事にしてくれないんだろう。最近わたしはこれがわからなくて、少しイライラしているな。うん?私は…そっか。


 それを自覚した時、私の中で何か痞えていたものが解消された気がしたんだ。

 「あぁ、そうだ、そうだよね。そりゃそうだよね。わたし、美しさを求めるばかりで、そのことばかりに気を取られていて、今までつきあった誰のことも愛してはいなかったもん。」

人を愛する暖かな心も持たない人間が、どうして世界を「美しさ」で満たせるなんて思っていたんだろうね。不思議だね。つまるところ、私も私のことを欲望のゴミ箱のように扱った彼らと同じだったってことだ。ははは…皮肉な話だなぁ。


 「美しさ」は「愛」によって築き上げられるんだとしたら、世界を美しさに染め上げるために私一人が先に綺麗になって世界を…なんて、荒唐無稽な話だったよ。だいじなのは量じゃなくて質だと思ったの。とっかえひっかえしていろんな人と付き合うんじゃなくて、誰か一人に対する強い強い想いが大事だってようやく最近気づけたんだ。そして今に至って強く抱いている想い。


 「たった一人に対する愛を見つけたい。」

 「世界は綺麗で、美しく輝いていなくてはならない。」


 そして、やっと。見つけたんだ。今一番愛しているのは「○×△※☆くん」。

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