エピローグ
その後。
カスピエルとひとしきりいがみ合った後、僕達は一緒にアルクから帰還した。
道中、がめついカスピエルが第一階層に自生する希少な植物や鉱石類をを大量に採集し、地上に持って帰ってきた。その足で換金所へと出向き、とりあえず一週間分の宿代と食費を確保した。何やらとても貴重な突然変異の植物個体を持ち帰ったらしく、追加の報酬も入ってホクホクである。
カスピエルの裂傷はもとより僕の傷も全て治っていたようで、後でお医者さんに診てもらったけど、何も問題がないと伝えられた。逆に、『力』の箇所をうまく省いて説明したところ、怪訝な顔をされてしまい……。曰く、全快魔法なんて、この世には存在しないらしい。
子供達にも色々と省いて、お金を稼げたことや食べ物が食べられることなどを説明した。ミーシャとゲイブの純粋無垢な笑顔は、アルクの戦いで精神的に摩耗した僕とカスピエルを大いに癒してくれた。
……いやもう、天使でした。違う意味で。
『
問題の異様な
一方の
「『亜種』……?」
カスピエルと共にユニオン連合に出向いていたんだけど……。
その単語を聞いた時、正直言って震えが止まらなかった。
いわゆる『亜種』と呼ばれる特異個体は、記録が残る限り二体しか確認されていない、と伝えられた。彼らは通常個体と一線を画す身体能力と知能を持ち、いずれも血走った眼をしていたそうで。
もしやとは思ったけど、今般の
そんなわけで、僕達一行はエルディアでの活動資金にめどがつき、ホッとしたのであった。
ちなみに全く関係ないんだけど、カスピエルがあの時以来目を合わせなくなったて……。僕、何か悪いことでもしちゃったのだろうか。後で、謝った方がいいのかな?
と、そんなことを考えた。
時期は春。まだまだ、暖かくなりそうだ。
♠
リョウがアルクから帰還する頃。
アルクと真反対に位置する、エルディア東側の地区ユーミルに居を構える酒場『小人の寝床』に、二人の人物が来店していた。
一人は、燃え盛る炎のような髪を持った
もう一人は、黒いローブに身を包んだ種族不明の人物。衣擦れの度に微かに覗かせる滑らかな肌と薄紅色の唇は、辛うじて女性だとわかるほどのもの。
どちらも音を発さず、席に座って淡々と酒をあおっていた。周囲の客は不気味がって、彼らの席に近付かない。
「……」
「……で?」
先に言葉を発したのは、
「お前の方にも、来たのか?」
「……来ました」
所々がこぼれ落ちている彼らの会話を赤の他人が理解するのは、到底不可能だった。
「じゃあ、闘技大会のことも、協力してくれるか?」
「……私の仕事は、これで最後です」
「……俺も、だ」
長い間が空いた後、女性が大きな溜息を吐く。
「分かり、ました……」
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