プロローグ

「お前の……父は……だ……」


 ん? 何だろう……何か聴こえる……。


「それは……使っては……暴走……ぶ……」


 これ……は……?


「見ろ……が……死んでいく……」


 誰かが……喋っている……?


「キミは本当に……だから……ついていく」


 声が……変わった……。


「どこまでも……目指しなさい」


 その声が、電流となって身体を駆け巡る。


「うがあああああぁぁぁぁっ!」


 耳鳴りだろうか。どこか遠くで、誰かが吼えている。




 いや、違う。


 これを知っている。知っているはずだ。


 誰が吼えているのか。


 誰が喋っているのか。


 そう、遠い記憶の中で、確かに巡り会った。




 大切な仲間。




 忘れてはいけない。


 忘れたくない。


 忘れるな。


 身体が、記憶が、そう呼びかけている。


 哭いている。


 意識が覚醒する。


 五感が急激に回復していくのが分かる。


 だが、眼が開かない。


 口が、開かない。


 身体が、動かない。


 ほどけない鎖に束縛されたかのように。


 離せない過去に束縛されたかのように。


 動かない運命に束縛されたかのように。




 でも、進む。


 阻まれても。


 壊されても。


 奪われても。


 


 やっと思い出した、


 その約束を果たすために。

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