二次元とは人生の休憩所
「へー彼女が欲しいんだ」
「う、うん…」
しばらく直也と伊藤は話していた。
直也の隣で携帯を弄りつつ聞いていたが、大した進展はなさそうだ。
「彼女作るにしても、好きな人もいないんじゃなぁ…」
だから困るだけ、って言ったのになぁ。なんで無駄なとこで頑固なんだか…
「ま、まぁそうだけど…」
直也も伊藤も話しづらそうだ。
もうこれ以上2人で話すことも無いだろうし、暇つぶしに俺の好奇心で知りたいことを聞いてみることにした。
「まずこの部活って何するの?」
「え。恋愛相談に決まってるじゃん」
当然のように答えられた。それはもちろん分かっている。
「それで創部許可なんて降りるの?」
「校長に、『恋愛相談を通じて学生としてあるべき姿を探すためです』って言ったらOKだったよ」
ちょっと得意げに胸を張る。何となく可愛い。
それっぽいことを言ってるが結局自分のために作ってるな。
しかも絶対狙いは違う。本当の狙いがなにかはまだわからないが。
「顧問はいるの?」
「塚原先生だよ。アニ研の顧問もしてる人!」
たしか女性の先生だった。初めの授業でいきなり深夜アニメの話を始めるオタッキーな先生だ。まぁあの人ならこんな変な部活の顧問を承ったというのに納得できる。
「へー。ほかの部員は?」
「いないよ。私一人。結構寂しいんだ〜」
一人だけで部活と言えるのかよ…と少し呆れた。
「今入れば私と二人っきりだよ?」
「あー、えっと、そうだね」
俺を指さしてにやにやと笑う。
困った態度をとったがその条件はちょっと魅力的だ。
ちらっと直也の様子を見ると、携帯をいじっている。
どうやら直也もある程度落ち着いたようだ。
この辺が潮時か。
「じゃあ僕達もう帰るね。これ以上邪魔しても悪いし」
「あ、そうだな」
俺が立つと、直也も立ち上がった。
「えー。行っちゃうの?」
座ったまま上目遣いで見つつ、猫なで声で言ってきた。
多分だが、こいつはこうすれば多少可愛く見えるのが分かってやっている。
そう思うと少し腹立つ。
「うん。時間も時間だし」
と言ってもまだ午後4時半だが。
「もー。そっか。また明日ね!」
「またねー」
そう言って、ドアを開け俺らは教室を出た。
そして、外で直也に向き直った。
「まぁ、直也君」
「ん?」
「君は恋愛に向いてないから、二次元に恋してなよ」
「ぐ…」
変な声を出して、直也は顔をしかめた。
「お前…ほんと、絶妙なこと言ってくるよな…」
はぁ、と直也はため息をついた。
まぁ、否定もしないってことは本人も恋愛に向いてないってことが分かっていたのだろう。分かってることをいちいち言う必要もなかったかも知れない。
傷心した時二次元に逃げるのはいい手段だ。どっぷりハマりこんで厨二病にでもならなければ、だが。
「お褒めいただき何よりです。ほら行こー」
「そこまで褒めてねーよ!」
噛み付くように突っかかってくる直也を背に、俺は夕日に照らされる階段を降りた。
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