白昼夢

学校、それは子供達が様々な事を学び、様々な出会いと別れを体験する場所だ。

利用者がいなくなった今では、その名残りだけを感じ、静かでどこか寂しさが残る。

しかしその日のその廃校舎は、少しだけ騒がしかった。

廊下に響くのはモーター音。

音の正体は少し変わったデザインのドローンだ。

ドローンは何やら学校中を飛び回ってわ、そこらじゅうを引っ掻き回している。

本棚にある本を全て取り除いたり、教室にある机の中身をぶちまけたりと荒らし放題だ。


「どうしたんだ?」


街の探索中に急に姿を消したドローンを探しこの場に訪れた人間の少年は、その光景を物陰から見て驚愕する。

結構長い付き合いではあるが、あんなに荒れているドローンを見た事が無かったからだ。

少年は頭を抱え座り込むとどうしてあのような行動をしているのか考える。

そして5分ほどそうしていて行き着いた答えが。


「まさか、ストレスか。」


ソレだった。

ストレス

詰まる所が自分との旅にずっと不満を感じていて、それが遂に今爆発したのではないか?

ソレが少年の導き出した答えだった。


「まさかーそんな......いや、でも。」


否定ができなかった。

と言うか思い当たるふししか無かった。


「ごめんよぉぉぉぉぉ!いつもの君に戻っておく、グボァ!」


ガンと言う鈍い衝撃を頭に受ける。


「何をしているのでしょうか?」


とても冷たい対応だと思った。

ただでさえ無機質な声が、少年はいつもより冷たく感じた。

当然気のせいなのだが。


「私は探し物をしなければいけませんので失礼します。」


やれやれと言った反応をし、飛びさろうとするドローン。

少年はそんな彼女を呼び止める。


「探し物って?何かなくしたの?」


「私の物ではなく、こちらの方の物を探しているんですよ。」


そう言ってドローンは何も無い所に指を指す。


「へ?どの人?と言うか人?」


自分以外の人がまだ存在したのかと少年は嬉しそうに辺りを見回す。

そんな少年を見てドローンは機体を傾ける。


「あの、ここにいるのですが、ふざけています?」


そう言ってドローンはまた何も無い所を指さす。

一向に噛み合わないやり取りに少年も首を傾げる。


「......そこにいるの?」


「はい。」


ふざけたり、冗談を言っているようには見えないドローン。

それで少年は理解する。

その人はドローンにしか見えていないのだと。

人である自分には見えず、機械である彼女には見える者、そんなの普通に考えている筈は無い。

しかし彼女は真面目に人が見えているようだ。

定期的に点検もしているから故障していると言うか事も無いはずだ。

となると思い当たるのはもうアレしかないだろう。

死者の魂、つまりは幽霊と言うやつだ。

正直オカルトはそんなに信じない方だが、ソレが1番納得がいく答えだった。


「うーん、俺は力になれそうもないから待ってるね。」


手伝っても良かったのだが、なんとなく邪魔してしまうのも悪いと無意識にそう思った。

だから探し物は彼女に任せる事にした。


「わかりました。」


それで会話を終わらせると、ドローンは再び校舎を忙しなく飛び回り始める。

それを見送ると少年もドローンとは別に廃校舎を歩き始めた。

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