温もりを探す

「貴方は無口なんですね。」


少年と一旦別れ、“ひとりぼっち”になったドローンは十にも満たない容姿の儚げな少女に話しかける。

少女は何も答えずに、そこに佇むだけである。

それにドローンは少しだけ困ったように機体を傾ける。


「さっきの方を見習えとは言いませんが、せめてあの方の半分、いえ、四......十分の一くらい喋って頂ければ、貴方が何を探しているのかわかるのですけれど」


少女は口をパクパクとさせる、しかしそこから言葉が発せられる事は無かった。

それでドローンは更に困ってしまう。

そしてまた探し物を探し始める。

机の中、ロッカーの中、ゴミ箱の中、探し物がありそうな場所を一通り散策する。

そしてその都度少女の反応を伺うが少女に反応はない。

ただドローンの後ろに付いている。


「もう探せる場所は探しましたが、やはりわかりませんね。何か手がかりはありませんか?」


その問いに少女は少し困ったような顔になりゆっくりと指をさした。

そこは大破し、ただの瓦礫の山になってしまった教室。


「なるほど、私では瓦礫撤去が出来なさそうだから教えてくれなかったのですか?」


申し訳なさそうに頷く少女にドローンは「確かにこれは難しそうですね。」と頭をかく真似をする。


「ですが私でなければどうにかなるかもしれません。」


と言うわけで急遽呼ばれた少年は


「うーん、これは難しい。」


瓦礫の前で腕を組み唸っている。


「使えませんね。」


「酷い!でもまあ、うん、なんとかしてみよう。」


「出来るのですか?」


「少し準備がいるけどね。」


そして次の日、再び崩れた教室の前に来た少年は爪先から頭まで、何やらゴツいスーツに身を包んでいる。


「何ですか?それ?」


「これは工事用のパワードスーツ、近くに工事現場があったから、拝借しました。」


「なんと言うか、ゴリラみたいですね?」


「うん俺も思った。」


表情は伺えないが笑っている少年は「それじゃやるね。」とゴツゴツしたパワードスーツを動かす。

ドスンドスンと音を立てながら少年は瓦礫撤去の作業を始める。

淡々と、ただコンクリートの塊をどかすだけの作業。

何も見つからないまま数時間が経過して、ようやくソレを見つけた。


「あった!たぶんこれだよね?」


そこには人のものと思われる骨があった。

所々部位が足りていないがサイズから、幼い子供の物である事がわかる。

パワードスーツを脱ぎ、その骨に近づく少年は頭部と思われる骨を拾い上げ優しく抱きしめた。


「寒かったね、寂しかったろう?」


呟き少年はその頭を優しく撫でる。

ドローンは少女の方を見る。

少し気恥ずかしそうに頬を染め、嬉しそうに自分の頭を、まるで温もり確かめているように触っている少女を

彼女がもうこの世の者ではない事をこの時初めてドローンは理解した。


「さて、行こうか。」


「おや?少女との戯れはもう良いのですか?」


「言い方に悪意を感じる......ちゃんと眠らせてあげないといけないから。」


「そうですね。ここは寝づらそうです。」


「うん。」


形の残っている骨を出来るだけ集め、墓標を作る。

大きめな石を少し加工した不恰好な物だけど、しかし日の当たる暖かい場所だ。


「こんなもんかな。」


「こんなもんでしょうね。」


「気に入ってくれてれば良いけど。」


少し自信なさげに笑う少年に


「大丈夫ですよ。」


とドローンは確かな確信を持って答える。

なぜなら、ドローンの視線の先にいる少女が透明になり消えてしまう直前に確かに言ったから。


__ありがとう。と


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