そして白に染まった
静かな昼下がり。
無人の都市の真ん中にカチン、カチンと何かの音がなり響く。
音の原因は一人の少年と不思議なデザインのドローンだ。
一人と一機は倒れた郵便ポストを机の代わりにして、正方形の板に両サイドから少年は白く丸い石を、ドローンは黒く丸い石をお互いに置いていく。
音の正体はソレだった。
「フーム。」
少年が険しい表情で唸る。
ドローンはソレを静かに見ている。
「あの。」
「ダメです。」
少年がおずおずと手を挙げて、発言をしようとするがドローンは少年の手を無理矢理下げさせ却下する。
「お話だけでも。」
「断ります。」
「そう仰らずに!」
「断固拒否します。」
「もう3回勝負しません。」
「嫌です。」
9割を黒い石で埋め尽くされた盤面を見て、少年はガックリと肩を落とし、降参とばかりに手を挙げた。
「君、本当にオセロ初めてなの?」
「はい、名前を聞いた事がある程度です。」
「ソレでこの結果?」
「そうですね、十二戦十二勝、まさか全勝出来てしまうとは思いませんでした。私も少し驚いてます。」
純粋に不思議に思ってのドローンの発言は、少年の心に的確に刺さり、苦笑いした。
「まあ、私は機械なのでこの手の遊びが貴方様よりも強いのは当然の事ですかね。」
本来ならばその言葉は自慢に聞こえる筈なのに、何故だか少年は少し悲しくなった。
「ねえ、もう1回だけ勝負しない?」
「ですからお断りしますと......」
「今度は賭けをしよう。」
断ろうとしたドローンだったがその言葉は少年の提案を聞いて止まった。
そして少し考える用な仕草をして。
「続けてください。」
そう言った。
その言葉を聞いて、自然と少年の口角が上がる。
「うん、さっきまでの12戦は普通に遊んでただけでしょ?だから次は賭けよう。」
「何を賭けるのですか?」
「うーん、そうだな、勝った方が負けた方のお願いをひとつ聞く......とか?」
「了解しました。ではもう一戦だけ付き合いましょう。」
先程の遊びと違い空気がピリピリとしているのをお互いに感じていた。
たまたま拾ったオセロで遊んでいただけだった。
12戦もして全敗した。
別にソレは良かった。
悔しかったけど楽しかったから
でも、勝った彼女はどことなく悲しそうで、ソレがとても嫌だと思った。
だからこの一戦は勝ちに行こうと少年は思った。
別に勝ったからと言って何かがある訳では無いけれど。
少し驚かせるくらいの事は出来るだろう。
「それじゃ、始めよう。」
「はい、ゲームスタートです。」
再び、無人の都市にカチン、カチンと言う音が鳴り響く。
勝利を掴んだのは果たしてどちらなのか
それはまだわからない。
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