青い鳥の日記群

人が世界からいなくなっても機械達は動き続ける。

そのため電気が未だに通っている街は少なくない。

しかしその街は既に死んでいた。

そんな街を訪れたのは人間の少年が一人と変わったデザインのドローンが一機。


「散らかっていますね。」


率直な感想を無機質な女性の声で言うのはドローンの方だ。

電子レンジくらいのサイズの黒い箱に、4つプロペラの用なパーツが付けられたデザインのそのドローンは、少し高めに飛び、街中を見渡す。


「何か面白い物でもあった?」


頭上に向けて、そう訪ねるのは人間の少年だ。

全体的に黒い服の上に薄手の灰色のパーカーを着た少年は、頭上を飛ぶドローンへ向けて「おーい!」と手を振る。


「見た限り変わった物は、おや?」


言葉を区切ると、ドローンは高度を下げていき、地面から何かを拾い少年の元へ帰ってきた。


「これ、まだ動きますよ。」


そう言ってドローンが差し出したのは黒い色のスマートフォンだった。


「おー、スマホか。」


「はい、人が四六時中弄り回している端末です。」


「何か悪意を感じる言い回しだね。」


どことなくドローンの機嫌が悪そうに感じて、少年は気まずそうに頬をかいた。


「だって人間はこの端末をずっと弄ってますよね?」


「うーん、まあ、個人差はあると思うけどね。」


「不思議ですね、何をしていたのでしょう?」


今度は純粋な好奇心でドローン発言した。


「それは、ちょっと貸して。」


少年がドローンからスマートフォンを受け取ると電源を入れた。

するとドローンが言った通りに正常に動いた。

久しぶりだったので少しぎこち無い手付きでソレを操作すると、1つのアプリを起動してドローンへ見せた。


「これは、記録ですか?」


たくさんの文字や、写真、映像なんかが表示されるその画面を一人と一機はしばらく眺める。


「記録か......うん、そうだね。記録だ。」


たくさんの人の生きていた記録、なんて事のない日常の1部がそこにはたくさん書かれていた。

いつか立ち寄った大きな図書館。

そこに並ぶ本達に比べれば物語性も無く面白くも何ともない内容が殆どを閉めている。

しかし不思議と目で追ってしまう自分がいて、何とも不思議な中毒性をドローンは感じた。


「なるほど、人はこうして常に日々を記録していたのですね。少し考えを改めなくてはいけません。」


少し感心した用に言うドローン。


「うーん、まあいいか。」


ソレを見て少し複雑そうに少年は笑った。

その後も、ドローンはしばらくその端末を眺めていた。

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